ユルマズとフルカン(4)
それじゃ、きみはユルマズと何をこそこそと調べてるのさ?」ウムトの質問に動揺や感情の揺らぎを見せることなくメルべはすぐに答えた。
「別にそんなつもりはないけど、私だってフルカンに手を貸したくないから答えないわよ。あなたみたいに嘘をつくつもりはないから、何も知らないとは言わないけど」
「僕は本当にフルカンが何をしているのか知らないんだ、嘘ついてないよ」
「信用されてないのね」吐き捨てるようなメルべの言い方がウムトの気に障っても、いちいち気にしていられなかった。
「怒らないでよ、そんなつもりはなかったんだから。二人の間にアフメド医師とマルコがいるのは分かってるんでしょ?どんな記事を書くつもりかは知らないけど、その記事だって全く関係がないとは言えないんじゃない?昔、ユルマズとフルカンが何の記事を書いて犬猿の仲になったか知らないでしょ?」
「どういうこと?」
メルべは意味もなく天井を見上げて首を回し、その横顔に目を奪われていたウムトを嘲笑うようにわざとらしく目を合わせた。はっきりとした動揺がウムトの顔を覆い、ウムトがすぐに目を逸らしても、メルべはウムトのことを見続けた。
「アフメド医師について私が何も知らないと思ってるの?二人が書いた記事はアフメド医師の祖国での出来事よ。アフメド医師もその記事を読んだかもしれない。その原稿は今でもあなたが殴られた資料室を探せば読めるけど?採用されたフルカンの原稿だけでなく、ユルマズのボツになった原稿も残されてる。はっきり言うなら、私だけがその場所を知ってるんだけどね」
「それで?僕から何が聞きたい?」呼吸をするたびに鼻に入るメルべの香りがウムトの自制心を狂わせ、何でも答えてしまいそうになっていた。
「サラについて何か知ってたら聞きたいんだけど?」
フルカンのことで知りたいことがあると思い込んでいたばかりに、誰のことだか一瞬見失いかけたが、すぐにアフメド医師の妻の名前だと思い出した。
「もしそのことについて僕が話せば、記事の原稿の場所を教えてくれるってこと?」「そうね、そうしましょう」
「サラは・・・」
メルべに本当に話してしまっていいのだろうか?言い淀んでいるとメルべは呆れた様子でため息をつき「また今度ゆっくり話しましょう」と言いながら、そのまま腰を上げて自分のデスクに戻っていった。
香りはメルべが去っても、しばらく影のように残り続けた。それよりも、メルべが話したことは本当だろうか?嘘ではなく資料室にそのフルカンとユルマズの原稿が隠されていたとしても、メルべが言った通り、在り処を知らずに見つけることはほとんど不可能だった。
そこには信じられない量のファイルと資料で埋め尽くされ、ゴミ同然でも捨てられない資料が投げ込まれていると言っても過言ではないだろう。
メルべの香りが消えると、ヌルとの約束を思い出し、机の上を片付けて、すぐに会社を出た。腕時計がまたヌルを怒らせてしまいそうなくらい遅い時間を指していても、急ぐ以外ウムトにできることはなかった。




