ユルマズとフルカン(2)
「退院したの?」すっかり元気そうなウムトの陽気な表情が羨ましかった。
「うん、元気になったよ。ブシュラさんはいる?」
「いるけど、何しに来たの?」
ウムトに昨日のことを伝えないと、と思いながらも今がそのタイミングではない気がした。
「お見舞いに来てくれたから。そのお礼だよ」と得意げに紙袋を持ち上げた。
なかなか戻ってこないヌルが気になってブシュラも様子を伺いに席を立ち、玄関で話す元気そうなウムトの姿が目に入った。
「元気になったみたいね」
「お見舞いのお礼です」とウムトは手を伸ばし、紙袋をブシュラに渡した。
「それじゃあ、中で話しましょうか。私たちも休憩にしましょう」
ヌルは、ブシュラから紙袋を受け取り、お湯を沸かしにキッチンに向かいながらも、昨日の二人が来るかもしれないと思うと息が詰まりそうになっていた。チャイがいつも置いてあるはずのバケットに入っておらず、探していると、そのことを察したかのようにブシュラがキッチンに来た。
「新しいのを買ったの。いつものところに置くの忘れてて、今思い出した。私が淹れるから二人で待ってて」
ウムトの待つテーブルに座ると、まずはあの女性について話を切り出した。「メルべって誰?」
「メルべ?」
「知らないわけないでしょ、とぼけないで」
それから、昨日の出来事について簡単にウムトに説明した。
「同僚のメルべだと思う。隣にいたのは恐らく、ユルマズ」ウムトとメルべが同じ場所で働いているのを想像できなかった。それから、二人のテーブルを通り過ぎた時に聞こえたことも説明した。
ウムトもヌルの話すことを聞きながら、段々と顔色が変わり、メルべとユルマズがこの一連のことについて調べていることは明らかでも、二人の目的は何なのか知らなかった。
「とりあえず、二人がここに来たとしても何も話さないで欲しい。特にボイスレコーダーについて」そう言うしかなかったし、他にできることが思い浮かばなかった。
「同じことを調べているの?でも、どうして?」
「それは分からない」
「そのユルマズって人も記事を書こうとしているの?もしくはメルべ?」
ヌルの質問の答えをウムトだって知りたかった。黙りこむウムトに急にむかついて肩を掴んだ。
「何か言ったら?」
「僕だって知らないんだよ」
そこにブシュラがチャイとチョコレートを持ってきたが、二人の雰囲気から何かを感じ取ったのか、表情は決して明るくなかった。
「よかったら食べて」と二人の前にチャイとチョコレートを置いた。
「ヌル、昨日思い出せなかった香水の香りを教えてくれる?」カウンターに座っていた常連らしき白髪の男性の香水だった。
ヌルはその香りについて、できる限り詳細に覚えていることを、それに香りの印象を説明した。ブシュラはいくつかの香水の名前を挙げたが、どれも違った。確かにブシュラが名前を挙げた香水と香りが似ていたものの、それらの名前をヌルは覚えていた。
突然、ウムトが香水の名前を口にした。古く、珍しい香水で、ブシュラとヌルは驚きを隠せなかった。




