そう言うことか!?♪
シャワーを浴び、お風呂に浸かり油とクリームの臭いを徹底的に洗い流した。
着替えてからミルクティーを3杯、黒くて甘い炭酸水を5杯がぶ飲みし、ようやく人心地ついた。
「(飲んでしまった)……これで少し、頭が働くわね」
アタイ(妾)はベッドに腰を下ろし、シルヴィアの記憶と歴史教科書を照らし合わせた。
そして——。
【聖なる20周年記念】
——先帝イザベラ様は、愛する者のために自ら玉座を降り、隠遁生活を選ばれました。
純潔の女神ミヤビ様が代理統治を始めて以来、帝国はより美しく、清らかになりました——
「……は?」
教科書を持つ手が、かすかに震えた。
「アタイが……恋に狂って引退した、だと……?」
(……ふざけるな)
アタイの目が鋭く細まる。
「ミヤビ……お前が一番怪しいのは確かだ。
だが、決めつけるのはまだ早いわね。
禁忌の魔道具コスメ『虚飾の涙』の利権を握る貴族連中、
マナ・ヴァイラス対策のワクチンポーション計画を潰したがっていた勢力……
他にもいくつか、心当たりはある」
彼女は教科書をベッドに叩きつけ、低く笑った。
「いずれにせよ、歴史を『愛の美談』に塗り替えたことだけは事実。
妾を哀れな女に仕立て上げ、自分たちの好き勝手をするための方便にした……その愚かさは、絶対に許さない」
魔力がわずかに漏れ出す。
『ピーッ! 加害欲アラート発令! 15秒以内にアンガーコントロールを!』
「うるさいわね……!」
アタイは深く息を吐き、苛立ちを抑え込んだ。
「いいでしょう。
犯人が誰であれ、この捏造された歴史を、この九十八キロの豊満なる肉体が這い出て、根底からぶち壊してやる。
表舞台に姿を現した時、連中がどんな顔をするか……今から楽しみだわ」
彼女は自らのたっぷりとした腹に手を当て、苦笑した。
「……まずは腹筋1回から、ね。
この食欲もどうにかしないと。炭酸水を飲んだばかりなのに、まだ甘いものが欲しくなるなんて……本当に厄介な体だわ」
アタイは床に寝転がり、歯を食いしばって腹筋に挑んだ。
「くっ……! 1回も……上がらん……!
ははっ……笑えるわね。帝国を支配した女帝が、腹筋一回すらできないとは……」
それでも彼女は諦めず、もう一度体を起こそうと力を込めた。
「妾が……アタイが、こんなところで止まるわけにはいかない。
この体を磨き上げ、武器に変えて……必ず這い上がってやる」
炭酸水の空き缶を横目に、アタイは静かに、しかし燃えるような目で天井を見つめた。
「誰が黒幕であれ……待っていなさい。
二十年ぶりに、妾は戻ってきたんだから」
最底辺からの反逆は、まだ始まったばかりだった。




