第十九話 再会
街は酷い有り様だった。露天のテントは破壊され、道には商品が散乱している。道は倒れている人や怪我をして叫んでいる人で溢れかえり、街というよりはまるで戦場の様だった。
僕とファリスはその様子を見ながらナディアの父の服屋へ向かった。
服屋は建物こそは残っているものの、棚が崩れ落ち商品もそこかしこに散らばっている。
声をかけるが誰もいなかった。
「念の為、2階を見てくるので待っていてください」
僕は一人2階へ向かう。ナディアの部屋へ向かうところ、手前の部屋でうずくまる男がいた。
「あなたは、ナディアのお父さん?」
「誰だ!」
ナディアの父は怯えた様子でこちらを見た。
「あ、お前は。確か、ナディアの知り合いの…。ハリドか」
自分でも忘れていた名前だったが、敢えて訂正する必要はないと思った。
「…あぁ、えぇ、そうです。ナディアはどこですか?」
「砂嵐の前に出ていったよ。魔物たちに遭遇してないといいが…」
ナディアの父は落ち着きなくオロオロとしていた。
「それと"鱗の騎士"は見ませんでしたか?」
その瞬間、ナディアの父の表情は一変した。
「見たさ。あの男のせいで、街がこんな目に遭ってるんだ。魔物を引き連れて俺たちの街を襲撃しに来た、忌まわしいリザードヘッドめ」
「…。そのリザードヘッドは今はどこに?」
「さあな。ラシュバル将軍のワイバーン軍に今頃捕まってるんじゃないか」
部屋を出てナディアの部屋の扉を開く。相変わらず、何かわからない物がたくさん並んでいた。
机の上には折りたたんだ紙が幾つも並べられ、それぞれの紙の上には動物のイラストが描かれたカードが置かれていた。
「なんだろうこれ」
鳥が描かれたものを拾い上げる。折りたたまれた紙には『南の神殿跡地』と記されていた。
これは、僕に対するメッセージだ。
イラストを眺める。その中に蛇のイラストのカードがあった。ナディアは師匠の腕輪のことを詳しく知っているはずだ。その力が蛇であることも。紙を拾い上げる。
そこには『宮殿の東、三日月湖のオアシス』と記されていた。これに違いない!
ファリスの元へ駆け戻り、ナディアと師匠のことを共有した。
「ラシュバルの軍が追跡? それに師匠が犯人にでっち上げられているのか。急がないとまずいかもな」
「師匠ならきっと大丈夫です。それより今はまずナディアとの合流を目指しましょう。宮殿東のオアシスに向かいます」
ファリスは誰もいない武器屋から剣をタダで購入した。船の底を修理し、三日月湖のオアシスへ向かう。
道中、軍を度々見かけたが、僕らはまだお尋ね者になっているわけではないらしく、素通りした。
付近に船を置きオアシスに着いた。町が荒らされている様子は無いが、あまり人の気配もない。2人でナディアの痕跡を探す。
「住民は避難したんですかね」
「かもな。水でも補充しておこう」
小さな酒場を見つけたので、中を覗くがやはり人はいない。開かれた扉からファリスが店内に入る。その時、気配を感じた。
「ファリス、危ない!」
声は間に合わず、入り口の横に隠れていた人がファリスに飛びかかり、ファリスはその場に倒れた。馬乗りの状態で、ダガーを突き付けられる。
「やめてください。水を買いに来ただけです」
そう言うと、馬乗りになっていた人は顔に巻いていた布をずらした。
「あらレックス。久しぶりじゃない」
「ナディア!?」
「また物資を巻き上げる馬鹿な軍の奴らかと勘違いしちゃったわ」
「おい、早く降りろよ」
「これは失礼」
ナディアは小さく舌を出しファリスから退いた。ファリスは起き上がりイライラしながらぶっきらぼうに聞く。
「で、こいつが探してたナディアか」
「そうよ。兵隊さん。よろしく。あんたも魔物で町をめちゃくちゃにしに来たのかしら」
「おい、そんなわけ――」
喧嘩になりそうだったので割って入った。
「ナディア。一体何が起こってるの。歓楽の街もめちゃくちゃだった」
ナディアは酒場の外に目をやる。誰もいないことを確認し、僕らを招き入れた。
「話してあげるわ。こっちよ」




