第十五話 三人の戦い
兵士は5人いた。その中で一人だけ兵装の違う大柄な男がいた。恐らく彼が隊長格の兵士だろう。
「ファリスか、そいつらは誰だ」
兵士たちは近づきながらファリスに尋ねた。
師匠が重たそうに体を起こし、大剣を手に取る。
「あぁ、この人たちは命の恩人みたいなもので、その…」
ファリスの言い訳の様な話を聞いたからか、兵士たちはすぐさま剣を抜く。
それに合わせて、僕も剣を抜き構える。左手を曲げ伸ばしし、動くことを確認した。本調子ではないが師匠の怪我と比べれば随分とマシなはずだ。
2人の兵士は弓を構える。それに合わせて師匠が体を捻り剣を構えた。
「ファリス。構えてください」
「はぁ、何で説得出来ないかなぁ」
そう言いながらファリスも腰の剣を抜き構えた。
直後、兵士の矢が放たれる。師匠の大剣ひと振りで矢は弾かれる様に左右に逸れた。
「なるほど。只者ではないな。躊躇うな、殺せ」
兵隊長の指示で2人の兵士が接近してくる。師匠の剣の間合いに入らないように迂回しながら、僕は後方の弓兵に駆け寄る。だが、その前に立ちふさがる兵隊長に行く手を阻まれた。
その兵隊長の顔のすぐ横を通過したダガーが、1人の弓兵の頭に突き刺さる。
剣兵を相手にしながら師匠が投げたダガーだった。手負いの状態とは思えない正確さに、改めて師匠の強さを実感する。
ファリスは体術を駆使しながら、剣兵に対して有利を取っていた。
「チッ。化け物め。お前はあいつを狙え」
弓兵に師匠を狙う様に指示を出し、兵隊長が僕の方へ接近する。ロングソードを大きく振りかぶる。攻撃に合わせて後ろへ飛び退き、相手のロングソードは地面を強打する。石床の一部が叩き割れた。
力は強力だが速くはない。半身に構えショートソードを真っ直ぐ相手の方向へ向ける。切っ先を左右に揺らしながら、すり足とステップを交えて少しずつ相手に近づく。
兵隊長が肩の上まで剣を振り上げ、大きく一歩踏み込んで来る。相手の肩、肘、腕、手、切っ先と力が伝わるのがわかる。力一杯振り下ろされた剣はまるでスローのように感じられた。自分の剣の先を合わせる。滑らせる様に受け流し、ショートソードを回転させた。
相手の手首を巻き込みながら回転させた剣は、そのまま相手のロングソードを弾き飛ばす。
兵隊長は空を舞うロングソードを目で追う。流れる様にショートソードの剣先を相手の喉元へ運ぶ。僕のショートソードの軌道はきれいな円を描き、その剣先は力を込めずとも相手の喉を深くまで貫いた。
ガタンと大きな音を立てて兵隊長がその場に倒れる。
剣を引き抜き、すぐさま奥にいた弓兵に駆け寄り斬り伏せた。
振り返ると師匠もファリスも同じく敵を倒したところだった。
「やるな、レックス。こいつはこの辺りを統括する将兵だ」
師匠も小さく頷く。
「剣を落とした動き。良い動きだった」
さらなる敵兵の追撃を避けるために僕たちは早々にここを離れた。
道のりは長いが進むべき先は明確になった。引き寄せられるような光の感覚に従い、砂漠の道なき道を進む。
延々と続く砂漠に時間の感覚がなくなっていた。日が昇り、日が沈み、そして日がまた昇る。その繰り返しだった。大量にあった物資も底をつき始め、誰も何も喋らなくなった頃、それは訪れた。
地中に感じていた川の様な光の感覚が無くなり、代わりに別の力を感じる。強く惹き込まれる様な、同時に畏怖の対象でもある様な、得も言えぬ感覚が体中を駆け巡る。
「神殿はあっちです」
僕の声に驚きつつも、2人は理解し従う。
一歩進むごとに強くなるその感覚に不安を感じながら、神殿へ向けて歩みを進めた。




