第十四話 北の神殿
「驚いたな。もう剣を振るっているのか」
声の方を見ると、ソリの様なもので大荷物を運んできたファリスだった。
「話は聞いている。世話になったな。物資も…凄い量だ」
「上からの指示って事にしてるから誰にも引き止められなかったぜ」
一通り手当てをして食事を摂った。乾いたカチカチのパンのような見たこともない食べ物であまり味はしない。それでも久しぶりに十分な食糧にありつけた。
「師匠が休んでいる間に北の神殿を探索しようと思います」
師匠は自分の体の傷口に手を当て、ため息をつく。
「どんな罠があるかわからんぞ」
「はい。でもこうしている間にもラシュバルが向かって来ているかもしれません」
食べ物を頬張りながら話を聞いていたファリスが口を挟む。
「俺も共に行こう。この辺りの地下は多少詳しくなっている」
「元兵隊だろう。戦いの腕はどうだ?」
「町では2番目だったぜ」
ファリスは立ち上がり剣を素早く突いて見せた。
師匠は諦めた様に黙って頷き、食事を続けた。
地中キャンプから進み、複雑な地下のダンジョンを抜けた先に、小さな空間が広がっていた。石畳の広場で天井には細長い窓のような穴があり、外の光が射し込んでいる。
「ここが神殿かもしれないですね」
柱の裏や上部へ登る階段など、複雑に入り組んでおり今までの神殿の中で一番広く感じる。
2人で警戒しながら全ての扉を開き見て回るが、台座のような物は見当たらなかった。
「本当にそんな台座があるのか?」
ファリスの集中が切れ始めた時、ふと柱に刻まれている模様に目が留まる。さっきまでは気が付かなかったが、天井から射し込む光の角度が変わりたまたま見える様になっていた。
「これって師匠の腕輪の…」
柱の模様は積み上げられたいくつかの石にだけ刻まれている。
他の柱も見て回る。12本ある柱はそれぞれどこかに刻印は刻まれていた。だが暗くて見えない箇所もある。ランタンで照らしながら様子を確認する。
「こっちは光が当たっててよく見えるぞ」
正午を迎えたのだろうか。ファリスの近くの柱には丁度きれいに光が射し込み、柱を明るく照らしていた。
ふと天井を見上げる。光の射し込む天窓は4つ不規則な位置に配置されている。そして射し込む光はどれも柱に当たっていた。
もしやと思いファリスの近く、光が当たる柱の模様が刻まれた石に手を当てる。石が少し動いた気がした。
そのまま力を込めて押し込む。石はガリガリと言いながら肘が入るくらいの位置まで押し込まれた。
急いで光の当たる他の柱に駆け寄る。同じように全ての石を押し込んだ。
ゴゴゴゴと重たいものが動くような地響きが聞こえる。
「おい、あれを見ろ!」
ファリスの指差す先にある1本の柱が回転していた。そしてその柱に、下へと続く螺旋階段の入り口が顔を出した。
「レックス。お前やるなぁ」
ランタンを構えながら長い螺旋階段を下りてゆく。下り切った先は小さな小部屋の様だった。部屋にはただ一つ、台座と球体だけが置かれていた。
ファリスに注意を促しながらも球体に触れる。他の神殿と同様に、触れた瞬間、球体は強烈に光りだした。
その時、球体の光が何かと繋がるのを感じる。
目で見てもわからない。だが確実にどこかと繋がっている。遥か遠くの位置だ。そして覚えがある。これは南の神殿だ。
入るのに苦労したが、出るのは容易かった。神殿を離れても球体を感じる感覚は変わらない。地中を通る一本の光の筋をずっと感じている。まるで地面の下を巨大な川が流れている様な感覚だった。
師匠の待つキャンプへ戻り報告した。
「師匠、北の神殿の台座を見つけました。地中にずっと光を感じます」
「無事に戻ったか。良くやった」
師匠が考え込む。
神殿に描かれていた言葉を繰り返していた。
「"4つの神殿が交わる場所"。レックスが感じている感覚が、南北の神殿を繋ぐ光だとすると、その導線上に"彷徨える回廊"が存在するということか」
東の神殿が陥落している今、東西の神殿を繋ぐ光は辿ることは出来ない。南北を繋ぐ光の筋を辿るしかない。
「どういうことだ。説明してくれよ」
ファリスの疑問に答えようとした時、地上へ繋がる道から、足音が聞こえた。
目を向けると、複数の兵士が姿を現した。




