第三話 仲間との別れ
盗賊のボスらしき男の太刀筋は悪くなかった。
狭い小屋の中で、ショートソードを器用に振るっている。以前までの俺なら勝てなかっただろう。そんなことを思いながら、剣を躱しダガーで剣を持つ盗賊の手を切り裂く。空中に舞い上がった相手のショートソードを掴み、盗賊に向かって押し込む。剣は相手の肩に深く突き刺さり、そのまま小屋の壁に串刺しになった。
止めを刺そうとした時に、男が呟いた。
「お前…そうか…。その腕輪か――」
男の話を気にすることなくダガーを向ける。
「本物だったんだな。蛇の――」
男が言い切らないうちに下から顎に深くダガーを突き刺した。男はぐったりと息絶える。
ものの数分であらかたの盗賊は片付いた。何人かは事前に村を離れていたかもしれないし、戦いの中で逃げた奴もいたかもしれない。だが探し回ったり深追いしようとは思えなかった。
そのまま村の中心の像の元へ向かうと、逃げ遅れたのか、怯えた男がこちらを見ていた。
「…なんなんだ、このガキ!」
男は恐怖で混乱しながら逃げていく。
この男が最後の一人だろう。
男に向かいダガーを投げつけると見たこともない速度で飛んでいき、後頭部に突き刺さった。
投げた右腕を見る。腕に食い込むバングルは錆びついていたが、その奥に気味の悪い光沢を見せている。反対の手でそっと触ると、自分の骨に直接触れたようなグロテスクな感覚を覚えた。
「これの影響なのか」
そう呟いた時、聞き覚えのある小さな声が聞こえた。
「ホープ…。無事なのか…」
少し離れた瓦礫の近くにおやっさんが横たわっていた。ゆっくりと歩み寄り、傍に立つ。
「おやっさん」
大きな木片が腹を貫き、大量の血が流れている。もう助からないことは一目瞭然だった。
「お前が、生き残ってくれて、よかった…」
親同然に自分を育ててくれた男が死のうとしているのに何も感情が動かない。あまりにショックが大きすぎる反動だろうか。あるいはこれも――。
おやっさんは満足気な表情を見せて、そのまま息絶えた。
彫像の下に開いた狭い穴に再び入り込む。自分の着ていた服や装備に、皮のような物がまとわりついている。それをちぎり捨て、装備を身に着けた。布やベルトの金属の感触が、ひどく煩わしく感じる。
外に出て、亡骸となったおやっさんや仲間を見渡す。
俺には目標も夢も何もない。ただ"遺物漁り"として仲間達とずっと過ごしていくと思っていた。そんな日常は今日で失われてしまった。
「これからどこに行けば良いんだよ」
フラフラと歩み、倒れた盗賊の頭から、投げつけたダガーを引き抜いた。悪い夢を見ているようなそんな感覚がする。
何もわからない。湧き上がる力とは裏腹に、誰かに助けて欲しいと強く感じながら、村をあとにした。




