第五話 親子
マントの男はフードを被ったまま、自分の身の丈もある大きな剣を構える。首を切られた翼のトカゲはその場で崩れ落ち、上に乗っていた兵士も手前に振り落とされた。マントの男は転がり落ちた兵士を剣で叩き潰す。
「こいつ、まさかリザードヘッドか!?」
後ろの兵士が怯んだのを見て、マントの男は駆け寄る。トカゲは、翼と一体化した鉤爪をマントの男に振り下ろすが、大きな剣で翼ごと切り裂かれ前方に倒れ込む。跨っていた兵士を剣で薙ぎ払い、そのまま流れるように2匹目のトカゲの首を刎ねた。
最後の兵士はその光景を目の当たりにして逃げ出した。トカゲは方向転換し村の外へ向かう。
マントの男は懐から取り出したダガーを投げつけた。ダガーは後ろから兵士の首に刺さり、飛び立つトカゲから兵士は滑り落ちた。
あっという間の出来事に呆気に取られていた。
マントの男が落ちた兵士からダガーを抜き取り、こちらへ向かってくる。ようやく見えた顔は、リザードヘッドと呼ぶには相応しくない若い男の姿だった。だがその顔には鱗の様に模様が入っている。何かの呪いか病気の様に見えた。
男が話し始める。
「勇敢なことと無謀なことは違う。ワイバーン3匹相手に1人で挑もうとするとは」
「だけど結果として成功でした」
男が鼻で笑う。
「無茶をしたいなら実力をつけることだな」
そう言って、歩き始めた。
「待ってください」
空き家にいるお父の元へ向かう。
丁度、厠から抜け出すところだった。
「ごめん、お父」
「ごめんじゃない。ふざけるな!」
お父は僕の姿を見て泣いた。お父の泣くところを初めて見た僕は、胸が締め付けられる。
「無事で良かった…」
そう言ってお父は僕を強く抱きしめた。
マントの男は死んだ兵士を漁っていた。マントの男にお父が歩み寄る。
「約束通り、息子さんを借りていく。済まないな」
お父は黙っていた。
マントの男は、麻袋をお父に渡した。
「険しい道のりだ。どのくらいの時間がかかるかはわからない。それまで無事でいてくれ」
袋にはいくらかのお金が入っている様だったが、お父はそれを突き返した。
「レックスを売るわけじゃねぇんだ。金は受け取れねぇよ」
お父はハリドの元へ向かう事になった。村の入り口で別れを告げる。
「無茶をするなよ。待ってるからな」
「わかった。ありがとう。お父」
お父は隣にいたマントの男へも声をかけた。
「今更だが、妻と息子の事をありがとう。それから――」
「息子との。レックスとの時間をくれてありがとう。息子を頼む」
お父の目には涙が浮かんでいた。その姿を見て僕も涙を流す。
「必ず連れて帰る」
そう約束し、マントの男は歩き出した。僕はお父へ手を振り男へついていく。
砂丘に沈む夕日は世界を美しく照らしているように見えた。




