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蛇になりて  作者: 毛布巻男
第二部 砂漠を渡る風

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第五話 親子

 マントの男はフードを被ったまま、自分の身の丈もある大きな剣を構える。首を切られた翼のトカゲはその場で崩れ落ち、上に乗っていた兵士も手前に振り落とされた。マントの男は転がり落ちた兵士を剣で叩き潰す。


「こいつ、まさかリザードヘッドか!?」


 後ろの兵士が怯んだのを見て、マントの男は駆け寄る。トカゲは、翼と一体化した鉤爪をマントの男に振り下ろすが、大きな剣で翼ごと切り裂かれ前方に倒れ込む。跨っていた兵士を剣で薙ぎ払い、そのまま流れるように2匹目のトカゲの首を刎《は》ねた。


 最後の兵士はその光景を目の当たりにして逃げ出した。トカゲは方向転換し村の外へ向かう。

 マントの男は懐から取り出したダガーを投げつけた。ダガーは後ろから兵士の首に刺さり、飛び立つトカゲから兵士は滑り落ちた。




 あっという間の出来事に呆気《あっけ》に取られていた。

 マントの男が落ちた兵士からダガーを抜き取り、こちらへ向かってくる。ようやく見えた顔は、リザードヘッドと呼ぶには相応《ふさわ》しくない若い男の姿だった。だがその顔には鱗の様に模様が入っている。何かの呪いか病気の様に見えた。


 男が話し始める。


「勇敢なことと無謀なことは違う。ワイバーン3匹相手に1人で挑もうとするとは」


「だけど結果として成功でした」


 男が鼻で笑う。


「無茶をしたいなら実力をつけることだな」


 そう言って、歩き始めた。


「待ってください」


 空き家にいるお父の元へ向かう。

 丁度、厠から抜け出すところだった。


「ごめん、お父」


「ごめんじゃない。ふざけるな!」


 お父は僕の姿を見て泣いた。お父の泣くところを初めて見た僕は、胸が締め付けられる。


「無事で良かった…」


 そう言ってお父は僕を強く抱きしめた。




 マントの男は死んだ兵士を漁っていた。マントの男にお父が歩み寄る。


「約束通り、息子さんを借りていく。済まないな」


 お父は黙っていた。

 マントの男は、麻袋をお父に渡した。


「険しい道のりだ。どのくらいの時間がかかるかはわからない。それまで無事でいてくれ」


 袋にはいくらかのお金が入っている様だったが、お父はそれを突き返した。


「レックスを売るわけじゃねぇんだ。金は受け取れねぇよ」





 お父はハリドの元へ向かう事になった。村の入り口で別れを告げる。


「無茶をするなよ。待ってるからな」


「わかった。ありがとう。お父」


 お父は隣にいたマントの男へも声をかけた。


「今更だが、妻と息子の事をありがとう。それから――」


「息子との。レックスとの時間をくれてありがとう。息子を頼む」


 お父の目には涙が浮かんでいた。その姿を見て僕も涙を流す。


「必ず連れて帰る」


 そう約束し、マントの男は歩き出した。僕はお父へ手を振り男へついていく。


 砂丘に沈む夕日は世界を美しく照らしているように見えた。

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