第二十四話 鱗の花
伝説の凱旋があってから数十年が経ち、王都は一層賑わっていた。先代王の亡き後、就任した新王は"始祖の御子"の協力を仰ぎ、国の発展に大きく貢献した。
敵対的だった近隣諸国も、ラーク率いる新生王宮隊の前に敵う国は無く、王都が事実上この地域全域を治める国となった。
王都による管理が行われてからは諸国も安定した生活を送れる環境が整っていった。これには、ある農村地域の魔物による被害が減ったことで、食糧が安定して供給出来るようになったことも理由の一つである。
王都管理下では"鱗の騎士"の噂が絶えなかった。激しい戦いを求めて戦場を渡り歩く傭兵とも、魔物に恨みを持ち魔物探しの旅をしているとも噂されていた。
彼が本当に戦いを求めていたのかどうかはわからない。だが彼に会った人たちは、魔物から人を守り、秩序を望んでいる戦士だと口を揃えて語っていた。
更に数十年先、"始祖の御子"も老いたころ、一度だけ、王都に鱗の騎士が現れたという話が出回った。この頃、鱗の騎士は、もはや伝説に近い存在で実在するとは信じられていなかったのだ。
噂には"始祖の御子"に恨みがあって止めを刺しに来たなどと言われていた。生前、彼女が鱗の騎士をからかうような発言を度々していたことはよく知られている。実際にその少しあとに彼女の死が報じられたことも理由として大きい。
その実、彼らの真実を知るものは多くない。
春の暖かな風が、聖堂裏の墓の間をすり抜ける。"始祖の御子"と刻まれた大きな石に添えられた小さな鱗は、風と共に空を舞った。
『第1部 蛇の腕輪』 完




