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蛇になりて  作者: 毛布巻男
第一部 蛇の腕輪

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第一話 遺物漁りたち

「おやっさん! 村が見えたぞ!」


 長い森を抜けた先に、ようやく探していた廃村の入り口を見つけた。


「先走るなよ、ホープ。噂を聞きつけた盗賊やら魔物やらがいるかもしれねぇんだから」


「平気だよ。この辺りで魔物の噂なんか聞いたことないよ」


 そう言いながら、高台の木に登り遠くを見渡す。木々が茂って見通しは良くないが、隙間から人や魔物の気配を探す。

 村の入口に建てられた門の柱は崩れていた。倒れた門には深く苔が生《む》しており、最近誰かが通った跡は見えない。


「ホープ。お前ももうチビじゃ無いんだから荷物を引けよ」


 木の下を見ると、3つ年上のウェッジが不満そうにこちらを見上げていた。


「嫌だね。荷物引きは16からって決まってるだろ」


 そう言いながら木から飛び降り、ウェッジが引く台車の上に飛び乗った。


「おい! ふざけてるなら手伝えっての。いつまでガキのつもりなんだよ」


 そんな光景を見ていた、おやっさんが口を挟む。


「ウェッジ、こいつはまだ十分ガキだ。ちゃんと子供扱いしてやれ」


 自分で言ったものの、子供扱いされるのは釈然としない。


「おやっさん。俺だって、もう半年もしたら16なんだぜ。子供扱いすんなよな」


「じゃあ今日からお前も台車を引け」


 おやっさんは間髪入れなかった。してやられた。ウェッジはニヤニヤと笑いながら、後ろから押すように指示をする。

 仕方なく全員分の荷物が載った台車を後ろから押した。重たかったが、なんだか認められた気がして少し嬉しかった。




 廃村は入口だけでなく内部も荒れ果てていた。建物は倒壊し、井戸や彫像も苔に覆われている。落ちているガラクタも錆びて穴の空いた鍋など、値打ちのないものだらけだ。

 先日の聖堂からの情報が無ければ、俺たちの様な末端の"遺物漁り"でさえ、こんな場所に来たりはしない。

 ビックスが得た情報によると伝説のウワバミが残した価値のある遺物を探すために王宮隊が派遣される事になったらしい。そいつらが来る前に俺たちが、その獲物を掻っ攫おうって魂胆だ。正式な発表の後、隊が動くまでまだ日数がかかるはず。首尾よくいけば簡単に大儲け出来る仕事だった。




「よし! 装備を準備しろ! ここからは手分けして探索する。いつも通り価値のありそうな物を片っ端から拾ってこい」


 おやっさんの合図でみんな散らばった。




 一通り見て回ったが、見つけたのは古い斧と鍬《くわ》の様な道具くらいで目ぼしい物は何もない。ウェッジはもう3回も調べた家の中をまた調べるらしい。

 聖堂の調べも外れることだってあるだろう。一通りの探索を終えた俺は、村の隅に座りダガーを手の上で回転させていた。

 ふと村の中心部に建っている彫像が目に付く。戦士のようだが爬虫類の顔をしている巨大な像だ。彫像の前では、1番大柄な男、ダンがじっと像を見上げていた。


「ダンも諦めてサボってんのか?」


「ん? ホープか。これ見てみろ。この像変じゃないか」


「石像ってのは大体変なもんだろ」


「まあ、そうだな。だが形もさることながらこれは石でもなさそうなんだ」


 ダンは真剣な眼差しで、3メートル近くある大きな彫像を見つめている。


「ふーん、これって蛇?」


「そうかも知れないが、ここに足の様なものが生えている。ナーガ神の形でもない。見たことのない形だ」


 そう言われ彫像を注視する。ボロボロに崩れており、元の形が何かははっきりわからない。だが芸術はさっぱりわからない自分でも、今にも動き出しそうなこの像には、どこか引き込まれる魅力のようなものがあると感じた。

 そっと、像の体に触れてみた。固く冷たい感触が、手に伝わる。




 ドスっと鈍い音が隣から聞こえた。

 何の音かわからず、辺りをぼんやり見渡す。

 その瞬間、ダンが強く肩を掴んできた。


「ホープ、隠れろ…」


 ダンを見ると、その大きな体を背中から胸にかけて矢が貫いていた。

 驚きのあまり、声を失う。どこから矢が。

 その時、後方から風切り音が聞こえる。振り返る前に、ダンは俺のことを突き飛ばした。

 転びながら一瞬見えた光景は、無数の矢が突き刺さるダンの姿だった。

 強い衝撃と共に足元の地面が抜け落ちる。視界が失われ、瓦礫《がれき》が崩れる音だけが聞こえた。どこかに吸い込まれるような感覚と共に、俺はそのまま意識を失った。

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