第49話.「終わりと始まり」
もちろん、一晩中近くの駐車場にいてくれたのは嬉しいし、当たり前に感謝だってしてる。
だけど……それを差し引いても父さんの今の様子を受け入れるにはちょっと準備がいりそうだ。
--正直こんな状況でこんな感想が出てくるなんて思ってなかった。それは単に父さんとはずっと一緒にいたけれど、俺が遠慮して素でいれてなかっただけだ。異性が怖いとか関係ない。
雪奈さんとの対話を経て、俺の心は溶かされた。雪奈さんや鈴香と普通に話せるようになったり、父さんの様子に若干引くくらにはもうトロトロに。
本人に言わなきゃいけないのはもちろんそうだ。だけど、この人にも伝えないと。
俺は冬美さんの方を向き直して頭を深く下げる。
「冬美さん……父さんと出会ってくれてありがとうございます。それとすみません。父さんと話しているのが聞こえていたと思いますが、俺は2人の再婚を望んでいなかったです。雪奈さんの存在とか関係なく望んでなかったです。でも今は祝えます。それは雪奈さんのおかげです。だから、冬美さんと雪奈さんがうちに来てくれたことを嬉しく思えます。これまではすみませんでした。これからまた、家族としてよろしくお願いします」
「裕翔君……私の方こそありがとう。小学校の時は娘を助けてくれて。本当ならもっと早く知ってお礼を言わなきゃいけなかったのに今になっちゃった。2人とも上手く隠し過ぎよ。何かあるんだろうなってのは分かってもそれ以上は分からなかった」
前に雪奈さんは言っていた。
「……すみません」
「ううん。それは聞けなかった、聞きだせなかった私達も悪いね。だから、これからはなるべくでいいから話してね。家族なんだし、義理だけど裕翔君の母親になりたいって思ってるから」
「ありがおうございます。冬美さん……いえ、か--」
そこまで言いかけて突如冬美さんに口を塞がれる。
「気持ちは嬉しいけど急がなくていいよ。まだ母親らしいことなんて何もできてないから。だから……ね?」
冬美さんはそう言ってからゆっくり口から手を放す。
俺からしてみれば十分なくらい母親らしいことをしてもらったんだけど、冬美さん自身が言うのだからその通りにしようと思う。
「分かりました」
「うん。そしたらそろそろ行きな。雪奈と鈴香ちゃん待ってるから」
冬美さんが顔を向けるのに釣られて俺も向けると2人で楽しそうに話しているのが目に入る。
「待ってますかね……?」
「待ってるよ。さっ、行って行って。私は辰哉さんと一緒に先に戻ってるから」
俺は冬美さんと父さんが見えなくなるまで見送り、それから2人に近寄る。
それに気付いた雪奈さんが聞いてくる。
「もういいの?」
「はい。冬美さんとも父さんともしっかり話ができたので。待ってもらってすみません」
「ううん、いいのいいの。たっつんとちゃんと話してこれたなら良かった」
「はい。でも、されたことだけは話さなかったです。それは父さんだけじゃなくて冬美さんも2人も同じです」
「私達に遠慮してるから?」
雪奈さんが尋ねてくる。
遠慮しているかと聞かれたら、遠慮はしている。でも、1番の理由は違う。
「されたことは忘れないし思い出すこともあると思うけど、今さっき昇華された思い出になったからです」
悪夢として見たり、トラウマの根源になっていた。けど、それがあったからこの瞬間があると考えられる。
これからの俺にはもういらない思い出だ。だから、言う必要がない。
「私は裕翔君が決めたことには何も言わないよ。けど、鈴香さんはどう?」
「僕はやっぱり知りたい気持ちが強い。今じゃなくても、いつかでいいから知りたい。でも、裕翔が言うつもりないってのは改めて分かった。だから我慢する」
「……鈴香、ありがとう。そうしてくれると助かる。それで、今から2人に大切な話をします」
2人は俺に『返事はいつか聞かせてくれればいい』と言った。だから、2人は待ってくれるんだろう。
だけど、言っておくべきことはあるよな。それがこれまでの終わりと、始まりになるから。
「えっいきなり何? いったい何を話すの?」
「まぁ裕翔ならするよね」
「鈴香さんは分かるの?」
「裕翔が言いそうなことだもん」
…………えっと…………。
「さすが幼馴染だ!」
「まぁね」
……あの…………。
ま、まぁ元々は2人で盛り上がってるところに入って行ったからさ、俺が全面的に悪いわな。
でもなんでかな。凄く出鼻をくじかれた気がするのは!!




