↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
50/50

第50話(最終話).「女性恐怖症だった俺の新たな始まり」

「それで……大切な話って何かな?」


 ひと盛り上がりした後、鈴香に尋ねられる。


 テンションと勢いでゴリ押ししようとしていた節があったので、待っている間に冷静にさせられたから改めて話を振られると恥ずかしさが湧いてくる。


「分かってるやつに言うのもなんだかなぁって感じがしてきた」

「それは僕だけで、雪奈さんはなんの事かさっぱり分からないんだよ。それにいくら分かったとしてもやっぱり直接裕翔の口から聞きたいものだよ」

「前までならそんなこと言わなかった」

「ふふっ、それは僕の台詞だよ。なんか新しい裕翔を見てるみたいだ。ずっと一緒にいたのに変だよね」

「分かる。俺もずっと変な感じしてるもん」


 ほぼ同時のタイミングで雪奈さんの方を見る。


「えっ!? 何!?」


 いきなり2人から見られたんだ。雪奈さんは驚いた表情をする。


「それもこれも雪奈さんのおかげだね」

「私? 私が何かしたの? いやしたんだけどさ」

「ほらほら雪奈さん、裕翔が何か言ってくれるから聞こう」


 最終的に鈴香が機会を作ってくれる。でも、俺はまた恥ずかしくなる。


 けれど、そんな機会を無碍にしてまで恥ずかしがるのは男じゃないよな。


「と言っても大した内容じゃないからあまり期待しないで欲しいな。2人から貰ったものを考えれば足りないくらいなんだから」


 それに俺に寄せてくれてる気持ちは本来、俺なんかが貰っていいものじゃない。


 これまでの時間だってそうだ。俺じゃない人に使っていれば、もっと有意義なものになってただろうに。


 って考えるのは2人に失礼かな。……うん、失礼だな。どう考えても失礼だな。


 なら、その考えは捨てなきゃない。何故なら、もっと伝えなきゃいけない気持ちがあるから。


「俺には異性を好きになるってのがどういうことなのか分からないからまずはそこからになる。当然、時間はかかる。でも、必ず返事をするからそれまで待ってて欲しい」


 2人は静かに頷く。


「--だから、今は代わりに伝えさせて」

「何を?」


 雪奈さんが尋ねてくる。


「"ありがとう"。俺を好きだと言ってくれてありがとう。俺のことをずっと想ってくれてありがとう。俺と出会ってくれてありがとう」


 俺の恩人でいつか好きになる2人に……ありがとう。


○○○


「へ〜そんなことがあったのね。大変だったね」


 医師の診察を終えて、何事もないと分かった俺はすぐに退院した。


 そして、翌日の今日、俺は雪奈さんと一緒に鈴香の家に来ている。


「春香さん、先週はいきなり帰ってすみませんでした。それに次の日の約束も……」

「いいよ。事情が事情だしね。それよりも、その再会した3人ってのには謝らせたの?」

「いえ、させてません。金曜日に関してだけ言えば直接の関係はないですし、今更謝られてもしょうがないことなので。まぁ、俺が倒れたのを見てどう感じたのか、あるいは何も感じなかったのは気になるところですができればもう会いたくないですよ」

「ふーん。……相変わらず優しいのね」


 隣でケーキのお供の紅茶を淹れながら俺に言ってくる。


「優しさじゃないです。何も変わってなかったあの人達へのただの諦めです。それに、優しさを向けるなら俺の幼少期の写真を見ながら話に花を咲かせてるそこの2人に向けたいです」

「良いわね〜。まさに"青春"って感じで。義理の姉か幼馴染か。どこのラブコメディーよ! って感じね」


 デコレーションが終わり、春香さんと一緒に雪奈さんと鈴香の待つテーブルにケーキを持って行く。


「わぁっ!! なにこれ!?」

「ビスキュイロールケーキって言うらしいです」

「普通のロールケーキと何が違うの?」


 先に切り分けていると一度キッチンに戻った春香さんがもう1本持ってくる。


「そう聞かれると思って普通のも準備してあるわよ」

「『あるわよ』じゃないよ。雪奈さんと僕を太らせる気?」

「このくらいじゃ太らないわよ。それに、裕翔君は一々そんなこと気にしないわよ。ね〜」


 ここで俺に話を振ってくるのずるい。


 実際、気にしないから問題じゃないけど。


「そうですね。2人なら気にしないです」

「ほら〜」

「お母さんが言わせたでしょ。裕翔、素直に言いなよ」

「素直に言った結果だよ」


 春香さんが持って来た普通のロールケーキも切り分けて皿に乗せると鈴香に手渡す。


 鈴香は受け取るとジトーッと俺を見てくる。「本当……か?」とでも言いたいのだろう。


「はぁ、分かった。信じてあげる」

「さんきゅー」


 そして次に雪奈さんに2種類のケーキを乗っけた皿を渡す。


「ありがとう。そうだ、裕翔君。そろそろ聞いていい?」

「……駄目です」

「どうして髪の毛を切ったの?」


 雪奈さんは俺の外見的変化を指摘してくる。それまで鈴香や春香さんですら言ってくることは無かったのにだ。


 2人が聞いて来なかった理由は定かじゃない。けど、たぶんこの為だろうな。


 じゃあ、雪奈さんはどうして今かって話だけど、たぶん鈴香も春香さんも普通に会話を始めたからだろう。


「せっかくの機会ですし、心機一転しようかと思って。それとも俺に短髪は似合ってないですか?」

「そんなことないよ。似合ってるし、かっこいい。ただ、せっかく伸ばしてた長髪が勿体無いなって思っただけ」


 雪奈さんは耳の横の髪の毛に触れてくる。


「正しい乾かし方も教えてもらったのにすみません。いちおうずっと続けてたんですよ」

「知ってる。だって最近はさらふわっとしてたもん。小テストの件もだけど、ほんと真面目だよね。あっ、でも、だからって悪くなっちゃ駄目だよ。私はそのままの裕翔君が好きだから」

「っ…………わかりました。なるべく努力します」

「うん。お願いねっ」


 それぞれ席に着くと食べ始める。


 とは言っても男1人と女性3人だからほぼ女子会だ。なら、当然と言っていいほど恋バナになり…………俺のことが話の中心になる。


「ほんと小っちゃい裕翔君かわいい〜」

「だよね。この頃の裕翔は本当に可愛かったなぁ」

「でも今は〜……??」

「「かっこいい〜」」


 も、もうやめてっ!!


○○○


 精神的にまいる女子会があったのは昨日の話になり、月曜日になった。また1週間が始まる。


 昨日一昨日と変わったことはいくつかあるが決して中身や外見だけじゃない。


 具体的に言えば、今までは俺1人の朝だったけれど今日からは1人じゃない。


「もしかして冬美さん達が来てから平日の朝に裕翔がいる朝食って初めてか?」

「そうだよ父さん。でも、もう早く行く必要がなくなったからね」

「でも、食事や弁当を作ってくれるのは変わらないんだな」

「早起きが習慣になってるのからね。いきなりは変わらないし、変わるつもりはないよ」


 土曜日、家に帰ってきた俺は改めて父さんと話したのちにちゃんと怒られた。

 

 冬美さんの言ってた通り、テンションがバカになっていたんだなと思えるくらいにはそれはもうちゃんと。あんな父さんは久しぶりに見た。


 それに教訓にもなった。これからは余程のことじゃない限りちゃんと話していこうと思ってる。


「そうか、ありがとう。でも無理なくやってくれ」

「分かってる。じゃあ、そろそろ行くから。後の片付けはよろしく」

「はいよ。いってらっしゃい」

「行ってきます」


 カバンを持って、靴を履き、外に出ると家の中からバタバタと忙しない音が聞こえてくる。


 そしてすぐに玄関のドアが開かれる。

 

「良かった間に合った」

「雪奈さん? どうかしましたか?」

「せっかくだから一緒に行こうと思って。だからもう少し待っててくれる?」

「分かりました。良いですよ」

「ありがとう!」


 ドアを閉めて雪奈さんは中へと戻って行く。


 そして、数分してから準備を終わらせた雪奈さんが出てくる。


「ごめんね。待たせちゃって」

「全然大丈夫です」

「それじゃあ行こっか」


 俺達は揃って家の敷地から出ると高校に向かって歩き出す。


 これまで鈴香以外の人と一緒に登校するなんてしたことがなかった。だから、隣に雪奈さんがいるのが不思議な感覚がするし、どこか痒い気持ちになる。


 でもそれが段々と当たり前になって行くんだろうなと直感する。


 前までなら嫌だったし何がなんでも避けていたけど、今なら受け入れられるし案外悪いもんじゃないとも思える。


 それもこれも俺の心をこんなにもトロトロにしてくれた雪奈さんのおかげだ。


「あっ……」

「えっ!? 何、忘れ物?」


 だから、ちょっとだけだけどサービスをしようかなと思う。


「なんでもないです。……行こ、()()

「…………」


 雪奈さんは唖然とした顔で俺を見てくる。


 急な恥ずかしさに襲われて、俺はすぐに顔を背ける。柄じゃないことだってのは分かっていたんだからやめとけば良かった。


 手で顔を隠しながら雪奈さんの方を見ると耳の先まで赤くなってるのが分かる。


「……ずるいよ」

「全然ずるくないです」

「急に呼び捨てしてくるなんてずるいに決まってる。……朝からどんな顔すれば良いのか分からないよ」


 そう言って同じように顔を手で隠す。


(あれっ? もしかして雪奈さんってめちゃくちゃ可愛いのか?)


 今までとは違い、雪奈さん相手だと心に余裕の生まれるようになった俺は遅過ぎる気付きをする。それに、これからもっと色々なことに気付いていくんだろうなと思う。


 恥ずかしさが落ち着き、自然と顔から離れた手を身体の横に運ぶ。すると、雪奈さんが急にその手を握ってくる。


「いきなりしてきた仕返しだから……。ほら行こっ!」


 雪奈さんは俺の手を引っ張りながら先を歩いて行く。


 この光景も少し前までなら想像できなかった。けど、これからはこれが当たり前になっていく。そんな確信がある。


 --と、ここまでが女性恐怖症だった俺が義理の姉になった雪奈さんに心をトロトロにされた物語。


 そして、これからは俺が雪奈さんに恋をする物語が始まっていく……のかもしれない。


 とにかく、今はこの人を知るところが始めようと思います!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。