第48話.「告白③」
「息子がそれなりに大事な話をしたんだけど、父親がそれよりも恋愛話に興味を持つのはないだろ」
堪らず呆れた顔を晒してしまう。
前までなら父さんにこんな顔は見せなかった。どうやら雪奈さんに影響されたのは女性に対してだけじゃないみたいだ。
「いやいや、もちろんそっちも大切だ。でも考えてみろ。いや、2人を見てみろ」
そう言われたので2人を見る。
「見たけど?」
「それで、どう思った?」
「別に……何も」
「ダウト!」
父さんは声を抑えたまま強調して言ってくる。
声量ではうるさくないんだけど、気持ちが伝わってきて心がうるさい。
「何がダウトなの?」
「裕翔、お前のことだ。『自分には勿体無い』と思っているだろ」
「それは思うだろ。実際、俺には勿体無いよ」
「甘ーいっ!!」
またうるさい。
てか、えっ待って。この人ってこんなキャラだったのか? 息子として衝撃的というか……えっ???
いつもの父さんとあまりにも違い過ぎて普通に困るんだが。
「お前はどんな気持ちで2人が告白したのか分かっていないのか!?」
父さんは肩を揺らしてくる。
「ただならない気持ちってのは分かるよ」
「そんなんじゃ済まないぞ。あれは……あれは……、あれは実質プロポーズだ!! どうする裕翔よ!!」
「あぁあぁあぁあー」
出す声がままならないくらい肩を揺らす力を増してグワングワンしてくる。
揺れる視界で俺は父さんの素がこういう風なのか、それとも息子のあんな場面を見て馬鹿になっているのかを考える。
どっちも困るけど、まだ前者の方が良いかな。
とか考えていると父さんの手が止まる。
「どうしたんだ冬美さん?」
「いやね、何を話しているのか気になって。辰哉さんったらいきなり裕翔君の肩を揺らし始めるんだもの」
父さんの後ろから近付いてきた冬美さんが父さんの横に並ぶ。
「仕方がないさ。あんな可愛い子達に息子が好かれているんだから」
冬美さんは「確かに〜」と声を漏らす。
「ま、待って。2人ともどうして何も言わないの? 鈴香はともかく雪奈さんは……」
「あーうん、そうだな」
「そうね」
分かっているなら尚更おかしいだろ。何故こんなに反応が軽い。
疑問に思っていると冬美さんが「辰哉さん言ってなかっの?」と尋ねる。
「あ……あぁぁタイミングが無くて……」
「いやいや、絶対あっただろ」
「いやいやいやいや、何を言うか。無かったぞ。無かったと言ったら無かった」
……なんこの人……。
堪らずそう思ってしまう
そして、何故か俺が恐る恐る冬美さんを見るとちょうど目が合う。
「何かな?」
「いえ、俺はこんな父さんを初めて見たので冬美さんは大丈夫かなと」
「ふふっ、心配ありがとう。私は大丈夫。慣れてるから」
慣れてるの!?
声には出さない代わりに飛び出るくらい目を広げる。それくらい衝撃的だ。だから、その顔を見て冬美さんは更に笑ってくる。
「ふふふっ、驚くのは分かるわ。でも、受け入れてあげてね。それと私、裕翔君の心配は分かるよ。でも、大丈夫」
「どうしてですか?」
「私達だって勝手に恋愛してたんだもの。それより先に恋してた雪奈ちゃんに『家族なんだからやめろ』なんて言えない。だから、気にしないで。ちゃんと考えて決めてあげて。あの子達だって早急に答えが欲しいわけじゃないんだから。言ってたでしょ、『返事はいつか聞かせてくれればいい』って」
父さんの惨状を見てからだとすっごい大人な話をしてくれている。流石、冬美さん。
父さんもちょっとは見習って欲しいところだけど……
「どうする裕翔? どうする???」
なんでこの人はこうなんだ……。
「念の為にフォローをしておいてあげると、辰哉さん心配で全然寝て無かったからちょっとテンションがおかしくなってる。慣れてるってのはそういうこと。夜勤終わりの姿を見たことはない?」
「何回かは見たことはありますが……ここまで酷いのは初めてです。なので衝撃が……」
「あぁ、それはそれは」
少し同情した目で俺を見てくる。
冬美さんにも思うところはあるみたいだ。でも、これを知ってても再婚しようと思ったのだから冬美さんは聖人なのかもしれない。
そして--だ。
「気になったのですが、寝てないってのはやっぱり近くにいてくれてたんですか?」
「いつか知るだろうから言っちゃうとそうだね。駐車場でみんなでいたよ。辰哉さんの車が大きくて助っちゃった」
どうりで……。
薄々気付いてはいたけど、個室でもないのにみんないる理由がこれで分かった。
なら尚更って思いたいけど、事情はどうであれそこまでしてくれたんだ。仕方ないからこれ以上は勘弁してあげよう。
ただまぁ……こうはならないようにしたいなとは思った。




