第47話.「告白②」
聞かれていた鈴香、雪奈さんが赤面するなら分かる。でも、なんで2人がしているんだ。
「いやー盗み聞くつもりは無かったんだ。ただ、ちょうど良い場面が来ちゃったから気になってさぁ」
父さんが頬を掻きながら説明してくる。
「今の若い子ってこんな感じなのね〜」
冬美さんは頬に手を置いて呟く。
「ん? どうした裕翔、何か言いたいことでもあるのか?」
「……いや、おじさんの照れ顔に食らっただけ」
「なにを!? まさか裕翔がそんなことを言うなんて」
「今までに機会が無かっただけで俺だって思うよ」
思い返したら雪奈さん達との顔合わせの時も赤面はしてたか。それが照れ顔じゃ無かっただけで。
そもそもあの時の俺の心境はそんなこと気にする余裕もないくらいだったからしてても気付かないか。
それよりも、しなきゃいけない話があるよな……色々と。
「裕翔は盗み聞きしてたこと怒ってないのか?」
俺が話を切り出すよりも先に父さんが聞いてくる。
「俺が怒るのは変じゃない? 鈴香や雪奈さんが怒るなら分かるけど、俺は聞いてただけだし」
「まぁそうか。……じゃあ、2人から先にある程度聞いてたことは?」
鈴香が『自責の念で……』って言ってたところから薄々気付いてたけど、先に聞いていたか。
きっと2人の事だ。あらかた全部話してしまっているんだろう。
「それこそ俺が怒る話かな。むしろ、俺の方が怒られると思ってたんだけど」
「どうしてだ?」
「だって、ずっと黙ってきたんだよ。こんな大切なこと。父さんが何処まで聞いたか知らないけど……」
「昔の事も、昨日の事も、これまでの事も知ってることは全部聞いたよ。言ってもらえなかったことを悲しみこそすれ、怒れるはずがない。強いて言うなら偽装彼女くらいか。でも、今話すべきはそれじゃないな」
「……だね」
父さんは改めて俺の口から聞きたいんだと思う。
なら、言うしかない。
ずっと黙っていたことを言うしかない。
「父さん、俺の話聞いてくれる? でも、全部は言えない。聞かせたくない。それでも良いなら聞いて欲しい」
「もちろん」
その返事が来ると分かっていた。だって、父さんだもん。
ひと息吸ってから俺は話し始めた。
○○○
言える話は全部した。
身体にされた事は流石に言えなかったけど、それ以外はした。
再婚の話をされた時とか同居生活が始まってからとか、都度自分で自分を絞め落としていたとか全部した。
どうして昨日倒れたのかもした。
全部話した。
した結果、父さんが1番最初にしたのは俺を抱きしめることだった。
「馬鹿野郎だなお前は」
「他にも文句を言っていいんだよ。俺は2人の再婚を心から祝ってたわけじゃないんだから」
「馬鹿野郎だお前は。これは……そういうんじゃないだろ」
「じゃあ、どういうのだよ」
とかなんとか言うが、たぶん理由はない。無いけど、とにかくしたくてしているだけなんだ。
聞いたわけではないけど、分かるのは俺がこの人の息子だからかな。だから、俺は受け入れている。
もし別の感情が混ざっていたらすぐに気付いて、拒んでいた。
「元から祝ってもらってるとは思ってなかった」
「でしょうね。だからみんなで風呂に行った時に聞いてきたんでしょ。あの時に言った言葉はまかせでもあるし本心でもあるよ」
『俺が今日ここにいる。これが答えだよ』
たしかそう言ったんだった。
実際、嫌なら適当な理由を作って無理にでも断っていた。しなかったのは単に俺が身体の疲れを取りたかったのもあるけど、深層心理でその考えがあったからだろうな。
「父さんが冬美さんと籍を入れて一緒に生活して幸せになれるなら俺はそれが1番だし、そう思ったから一緒に行った」
「でも、無理はしてたんだろ?」
「2人には悪いけど、してたよ。冬美さんは大人だったからそれほどじゃなかったけど、雪奈さんは正直厳しかった」
でも、俺はその人に心を、過去のトラウマごと溶かされたんだよな。
ってか本人を前に言うことではないか。知られていたから良いとは思うけど。
……って、考える余裕があるって事が凄いな。
念の為にちらっと雪奈さんを見てみると、微笑ましそうな笑顔を向けている。やっぱり分かっていたことだから気にしてないみたいだ。
「父さん、ありがとう。冬美さんと再婚してくれて。雪奈さんと会わせてくれて。そうじゃなかったら今頃はどうなってたか分からないや。もちろん、鈴香と幼馴染になれたのも今の家を買ってくれた父さんのおかげだ。だから、ありがとう。今なら心の底から2人を祝えるよ」
仮にも不倫され離婚した人に伝える言葉じゃないかもしれないと思ったけど、伝えずにはいられなかった。
「裕翔……ありがとう」
そう言って父さんは俺の身体から離れると次は肩を掴んでくる。
「じゃあ、もう一つ話すべきことを話さないとな」
父さんは言ってくる。
「……えっ? 今話した内容じゃなくて?」
「もちろんそっちも話すべきことだ。けど、こっちも話さないとだろ?」
俺は父さんの話を聞いて頭の上に?マークを浮かべる。
(なんだ、『こっち』って……???)
父さんが何を言いたいのか分からないままいると、凄く小声で真剣な表情をして聞いてくる。
「それで、お前はいったいどっちを選ぶんだ?」
…………は?
「だって、2人から告白されたんだろ?」
……まぁ確かに。されたはされた。でもあれは--
「気になるだろ。息子がどっちを選ぶか」
…………。
あー、うん、なるほど。そういうこと。
俺は父さんと同じように肩に手を置く。
そして、ありのまま思ったことを伝える。
「父さん……」
「ん? なんだ?」
「ないないない。今のはない。割とガチでない」
「えっ!?」
何故にそんなに驚く。それとも"ない"と感じた俺がおかしいのか?
そう感じる程に父さんのリアクションは大きかった。
いやでも、どう考えても今のタイミングはないわ。




