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第40話.「新高1交流会③」

 会場内には丸テーブルが6脚とそれぞれに5脚の椅子が並んでいる。1脚を除き全ての椅子が埋まっている。

俺が入るとその1脚に案内される。


「お揃いになられましたね。では、説明を--っと、その前に私の名前を言わないとですね」


 そう言って自己紹介を始めたのは市教育委員会の人だった。


 そうして始まる交流会。まずは今のテーブルで話せと言われる。いきなり話せと言われても無理な話だ。それは流石に分かっているようで話す内容を指示される。


「自己紹介と在籍してる高校名、あとはそうですね……卒業した中学生か小学校なんかも言いましょうか。全員が言い終わったら入学してから感じた高校の印象とか話してみましょうか」


 素直に担任から聞いてた話と違うと思った。


 確かにお茶も菓子も置いてあるけど、全然緩い雰囲気を感じない。むしろ結構ガチな会じゃないか。どこが緩いんだよ、どこが。


 なんて考えていたらそれぞれのテーブルで自己紹介を始める声が聞こえてくる。つまりはここでも始まるということ。


「えっと……じゃあ私からで」


 最初に話し始めたのは偶々一緒になった杏菜さんだった。


「佐倉杏菜です。在籍しているのは田上たがみ高校で、卒業した小学校は山辺小学校です」


 ん? 今なんて? 聞き間違えじゃなければ山辺って言ったような----。


 久しぶりに聞いた小学校の名前に困惑している中、杏菜さんは言ってくる。


「どうしましょう。時計回りでも良いですか? ……じゃあ次は硯君に。お願いします」

「えっ……⁉︎ えっ、は、……はい。分かりました」


 なんて言うが頭の中は小学校の時にを"佐倉杏菜"なんて人がいたか思い出すことで必死だ。


 ……いや、思い出したところでだから何だよって話なんだけどさ。


「えっと、第6中学出身です」


 だから何だよだから小学校ではなく中学校を言う。

 

 どうせ山辺小学校の卒業生である事を言っても俺と同じで向こうも俺の事なんか覚えてないだろうから問題はないだろう。


 そして自己紹介は順調に進んで行く。


 ありがたいことにこのテーブルには男子が俺以外にも2人いる。眼鏡をかけたいかにも真面目な見た目の人と逆に凄いチャラそうな見た目の人だ。つまりは3:2で男子が多く、女子が少なくて助かった。


 とは言え、いることはいるのでいつもみたく震えが起こる。


(ここに来る前に発散してきたのにもう既にとは……)


 なんとか時間が過ぎていくのを待っていたいが早い事でもう2週目の番が来る。


「学校の……印象ですか。……学費の安さと家からの距離で選んだのでなんとも……あっ、こんな髪でも何も言われないことぐらいですね」


 ヘアゴムで縛った髪を見せながら話す。


 学校の先生には申し訳ないけど、本当にそれくらいしか印象がない。


 唯一話せる事と言えば校則が緩い事くらいなのでこうして自虐してみたわけだ。


 まあ、でも、「確かに」と頷かれているのだから皆んな思ってる事なんだなぁ。


 そんなこんなで2週目が終わる。周りの他のテーブルに耳を傾けるとまだ話している様子だ。だから、残りの時間はフリータイムになる。


 そうはなっても話題が無ければ話なんて弾まないだろう。


 そう思っていたら杏菜さんにもう2人のうちのチャラそうな見た目の男子生徒が尋ねる。


「佐倉さんとエントランスで話していた人って同じ中学だった人とかですか?」

「いいえ、違いますよ。でも、小学校の途中までは一緒でした」

「へぇー、そうなんですね。ありがとうございます」

「いえ……?」


 杏菜さんは不思議そうな顔をしているが、ナンパする気満々なのを気付いてなさそうだ。


(と言うか--えっ? 同じ小学校だったって言ったのか? つまり山辺小にいたのか……? って事は元同級生……)


 瞬間、嫌な予感が走る。


 もしかしたら、俺と白糸には何か因縁みたいなものがあるのかもと思う。だが、杏菜さんの時と同様、白糸という名前を思い出そうとするが思い出せない。


(確か、「後で時間をちょうだい」って言ってたよな。てっきり鈴香の事かと思ったけど違うのか……? 駄目だ、どうにも思い出せない。それに今はこっちに集中しないと)


 既に話題は別のものへと変わっていて、全く聞いていなかった俺は話に置いていかれていた。


 なんとか思考を切り替えて話に集中しようとする。だが、白糸の事が頭をよぎって集中できない。


 結果、このテーブルでの時間は最後まで白糸の事でいっぱいいっぱいになった。

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