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第4話.「ギャルの襲来と反動」

 次の日、土曜日という事もあり父さんは朝から白糸冬美さんと2人で出掛けるために家を空けた。


 この状況になって考えると、今までは俺に本当の理由を隠してこうして出掛けていたんだろうなと思う。ただそれは決して悪い事じゃない。父さんなりの配慮だったんだと思えるし、俺のついている嘘とは訳が違う。


(俺が母親って存在にコンプレックスを持っているかもとか考えたんだろうな。実際は全然違うんだけどなぁ)


 再婚をして良いかと聞いてきた時の涙の理由をようやく理解する。そして、俺はやっぱり嘘をつき続けなきゃいけないんだと余計に思わされただけだった。そして、今日はそのための大切な準備をする日だ。


 朝、父さんが家を出て行く前に言われた。


『色々と落ち着いたらさ、次は裕翔の彼女と会わせてくれよな』


 俺はその言葉に「嫌」とも「無理」とも返せずに「分かった」と言ってしまった。……言ってしまったんだよな。


 元々いざって時のために偽の彼女役を頼もうとしてたから良いっちゃ良いんだけど、、、まぁやっちまったよな。


 幸いなことにその相手と今日時間を取って話せるになった。


「準備するべきは貢ぎ物だよな。とりあえず、新作のアイスでも買って持って行けばいいか」


 好みは何年も関わっているから分かっているつもりだし、ちょうど食べたいと言っていたのを聞いたしであいつに取っても良い機会になったと言う訳だ。


 そういう訳で買いに行くために俺も出掛ける準備をする。と言っても近くのコンビニに行くだけなのでジャージで良いだろう。あいつに頼む時にはちゃんとした服に着替えれば良いだけだし。


 そう思い、すぐに準備を終らせて玄関のドアを開ける。


「あっ……えっと、おはよ?」


 と思ったけど、前言撤回だ。


 俺はすぐにドアを閉める。そして、乱れそうな呼吸をなんとか抑えつつ家の前にいた人物について考える。


(な、なんで白糸雪奈がこんな所にいるんだ!? いやそれよりも今はまずい。俺しか家にいないってことは俺が対応しなきゃいけってことだろ。ただでさえ白糸とは昨日の朝の件と夜の件があるっていうのになんて事だ)


 とりあえず、用件を聞いた上で用事があるからと帰ってもらおうともう1度ドアを開ける。当たり前だけど、白糸はまだいた。


「あっ、おはよう。いきなりごめんね」

「いえ大丈夫です何か用ですか?」

「うん。たっつん……あっ、辰哉さんから聞いてるかもしれないけど来週から一緒に住むことになったの。それで先に家の中を見させてもらえたらなぁ〜って思って。裕翔君が家にいるから色々と聞いてって言われたんだけど、聞いてない?」

「えっ……?」


 そんな話、俺は聞いてない。なので首を横に振る。

 

(これで2回目だぞ、父さん)


 白糸は手の平を額に当てながら「まじかー」と呟く。


「あっ……ごめんね、お出掛けするところだったよね」

「…はい…」

「やっぱり彼女さん?」

「そう…ですね」

「そっか! それなら頼む訳にいかないから私帰るね〜」


 そうして白糸は手を振って帰って行く。俺はその姿が見えなくなるまで見送るとそっとドアを閉める。


 未だ実感はない。けど、今の会話で嫌でも意識さられた。白糸は本当に俺の家族になるんだと。それはもうどうしようもない事だ。それに俺だって受け入れた。だから、どうこう言える立場にない。だけど、これだけは言いたい。


 ………聞いてない。

 

 聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない。


 白糸が来るなんて聞いてない。


「うガァぁぁああぁああぁぁぁぁぁ」


 昨日からの積み重ねがあるとは言え、今この一瞬でさえ俺はこれから先の事を考えると身体が震える。一つ屋根の下、父さんの再婚相手だけでなく、よりにもよって同級生が住むことになるんて。


「ムリムリムリムリムリムリムリィギィィィィ」


 靴の裏から落ちた砂で汚れた土間の上に身体を丸くし、蓄積した感情を出鱈目に発散する。そのおかげで涙まで出てくる。……本当にこんな事をしなきゃやってられない自分が嫌になる。

 

「さっき裕翔の家の玄関先から白糸さんが歩いてくるのが見えたからいちおう見に来たけど、またなんだね」


 いつの間にか玄関の中に鈴香がいた。本当ならこんな情けない姿は知っている仲といってもみられたくないものだ。だけど、もう今更遅い。


「おじさんは……居たらこんな事してないね」


 鈴香は丸まった俺の背に手を添えるとゆっくりさすりだす。


「……ずか……めん」

「いいよ。とりあえず僕の事は気にせず全部吐き出しちゃいな」


 それから俺はみっともなく泣きじゃくった。



 鈴香に背中をさすられること数分、俺はようやく落ち着きを取り戻す。身体を起こすと鈴香が濡れタオルを持って来てくれた。


「せっかくの顔がぐちゃぐちゃなままなのは僕が嫌なだけだから」


 ついた砂を払い、上りかまちかまちに腰をかけた俺は鈴香からもらった濡れタオルで顔を拭く。


「ありがとう。おかげで助かった」

「良いってことよ。それで、今回はどうしてこんなになっちゃったの?」


 鈴香は俺の隣に座ると尋ねて来る。さっきまでの状態を見られた以上、説明する責任がある。それに頼み事をする過程でどっちにしろ話さなきゃいけない。


 俺は顔を上げれず下を向いたまま鈴香に全て話す。


「父さんが再婚することになった」

「へぇー、えっ……?」

「その人の連れ子が同じクラスの白糸で、来週引っ越して来るから家を見にきたらしい」

「ちょ、ちょっと待っ」

「そんな訳で鈴香には偽装彼女をやって欲しい」


 直後、ゴンと鈍い音が響く。顔を上げて音のした方を見ると、鈴香は尻餅をついて後頭部を押さえながら目に涙を浮かべている。


「大丈夫か?」


 心配になり、鈴香に尋ねる。しかし、返って来た言葉は想像したものとは違かった。

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