第27話.「2週目、土曜の朝」
目が覚めると案の定朝になっていた。とは言ってもまだほんのり明るくなり始めたくらいだ。
手元に転がっていたスマホで時間を確認しようとするが電源が入らない。アラームを鳴らし続けられたスマホもそのうちに充電がなくなり眠りについたようだ。
本当ならもう少し休ませておいあげたいが使えないと困るので充電器に差し込んで強制的に目を覚まさせることに。その間に俺はシャワーを済ませに1階へと降りていく。途中、干してある洗濯物が目に入る。たぶん白糸が干してくれたんだろ。
(起きて顔を合わせたら礼を伝えないとな)
どういう風に伝えるか悩みながら脱衣所へ入り、シャワーをしていく。
もう何回目かになるのに我が家の風呂場に女性物のシャンプーやリンスがあるが不思議でならない。今日で1週間経つっていうのに俺の体はちっとも慣れてくれず、ビクッと身体が反応する。
ついで掃除をして服を着る頃には窓から朝日が差し込んでくるようになる。
(あー、今日も始まるんだなぁ)
ドライヤーで髪を乾かしながら1日の流れを確認する。
そういえば鈴香との約束が何時からなのか確認していなかったことを思い出す。鈴香なら向こうで決めて送ってくれていそうだ。それをするにはスマホが必要なわけでそのスマホは今、部屋で充電中だから戻らないといけない。
なんて考えていると熱風を当てていた髪が乾く。そして、次に冷風を当てる。気付けば白糸に教えてもらった乾かし方で髪を乾かしていた。
せっかく教えてもらったのだからとやってきたことがもう癖になっている。それを嬉しいとは思わないけど、いいことを教えてくれた白糸には重ねて感謝だ。
大した充電はできていないだろうが、少なからず充電でき目を覚ましたスマホを取りに行こうと部屋に戻る。そして、事件は起きる。階段を登り切ったタイミングで白糸の部屋が開く。
「んん-ねむぅ」
そう言いながら目を擦っている。
俺は洗濯物が干してあるところへと身を隠す。理由なんてない。身体が反射的に動いた。
隠れてしまった以上、息を殺して白糸が去るのを待つ。トイレの為か、はたまた水を飲むためか分からないがゆっくりとした足取りで階段を降りていくのを見送ると俺はすぐに自室へと入る。
白糸に多少の耐性ができたのか、それとも会話をしたわけじゃないからかいつもみたいなストレスはかかっていない。けど、心臓がドキドキしているのは隠れたことをやましいと思っている証拠だ。ま、そんなことを言っても仕方がない。
1度落ち着こうと伸びのついでに深呼吸をする。すると朝の少し冷えた空気が肺に入っていくのを感じる。もうじき6月になるのに朝はまだまだ冷えるみたいだ。
(……いや、冷えているの俺の肝の方か……)
ほどなくして階段を上ってくる音が聞こえてくる。白糸が戻ってきた。なるべく音を立てないようにジッと止まる。そして聞こえるドアを開ける音---。
白糸が開けたのは俺の部屋のドアだった。頭がそのことを理解すると全身から汗が噴き出る。
「んー? 私のへや、こんなんだったっけ……? いっか」
そう言って部屋の中に入ってくる。間違いなく白糸は寝ぼけている。
(何も良くない。何も良くない……!!)
声を掛ければいいだけなんだけど、俺にそんなことはできない。なので、ただ呼吸を殺して自分の存在感を消す。それが俺のできる精一杯だ。
白糸は欠伸をしながら着々とベッドに近付く。
「ねむぅ」
そう呟くと顔からベッドに倒れ込む。
「えっ……」
たまらず声が漏れてしまい、急いで口を塞ぐ。
「すぅーすぅー」
白糸は2度目の睡眠に入る。
その様子を見て起こしていないと安堵しつつも、とても困った状況になったのも事実で、、どうしよう。
色々と考えが巡るが、結局はどうすることもできず静かに部屋を出る。仕方がないのでリビングへ行くために再び階段を降りる。
そして、ソファに座ったところで気が付く。
(あ……スマホ……)
また部屋に取りに行くなんて精神的にできないので、諦めるしかない。仕方ないので俺は、朝食の準備のために立ち上がるのだった。




