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第23話.「義理の姉③」

第21話の最後、文としての意味は変わらないのですが表現を変えています。

すみません。

 でも言ってしまえば、『だから何だよ』って話ではある。


 元々、頭では分かっていたんだから何も困ることなんてない。それに身体が先に動いていたのなんて何回もあった。ある意味、防御反応なのは間違ってないし、それで助かってきたのだから今更気にしたところでどうという問題はない。


 ……とは言えない事態になった。


 今歩いている道は街灯が立っておらず、ほぼ真っ暗だ。だから、白糸はスマホのライトで足元を照らしながら歩いており、俺は公園を出た時と同じ距離感を保ったまま後ろを歩いていた。


「ねえねえ」


 その言葉と共に、不意に白糸が身体ごと振り返ってきた。ライトが俺を照らす。


「何やってるの?」


 ちょうど手に力を入れていた俺はすぐに首から手を離す。


 タイミング的には見られていたとしても不思議じゃないので念の為に誤魔化す。


「首が、ちょっと痒くて……」

「本当に?」

「……はい」

「ふーん。まぁ外だしね。公園にどれだけかいたら蚊に食われても仕方ないか」


 俺が言わないでも白糸は都合の良く解釈をしてくれる。おかげで助かった。でも、注意しないと。もし完全に見られたら何を言われるか分からない。


 再び前を向いて歩き出した白糸の背を見ながら首へと伸びそうになった手を抑える。


 少なくとも今だけは耐えないといけない。


 頭では分かっていても身体は別だ。だから、いつも無意識に手は伸びてたし、さっきもそう。


(……手首は手首で嫌だけど、全部後で発散するから)


 身体に言い聞かせてなんとか力を抜く。これで大丈夫だろう。


 あまり遅れると変に思われるのでほどほどに歩き出す。特に何を話すでもなく---。


 家まであと1ブロックまで来たところで白糸が話しかけてくる。


「お家にもう少しで着くね。その前にいくつか聞きたいことがあるの」


 足は止めるが振り向いては来ない。そのことに安堵したまま答える。


「……なんでしょうか」

「裕翔君って私の事をどう思ってるの? 嫌い?」

「えっ……」


 これまでの俺の振る舞いを考えればそう思われても仕方ない。実際のところ、俺は白糸をどう思っているか。


 そんなの決まっている。


(何も思っていない)

 

 ただ、それをそのまま伝えていいものかと悩む。こんなことになっている上に正直に話して白糸と拗れて父さんと冬美さんが……となったら、俺はもう耐えられる自信がない。かと言って、好意的と伝えるのも憚られる。


 だから、取れる選択は沈黙しかない。


「……そっか」


 しばらく黙っていると白糸がそう呟く。


 そして、次の質問をしてくる。


「じゃあ、ギャルは嫌い? そこまでギャルしてないと思うんだけど、私ってぱっと見て外見派手じゃん。だから他の人から見たらギャルだと思われても仕方ないんだよね。で、どう?」


 ギャルが嫌いかどうか……それも考えたことがない。そもそも、俺は他人の外見に興味がないし、対象が異性である以上、抱く感情はいつも変わらない。


 当然のことだが、それは言えない。だから、今回も沈黙する。


「……なるほどね」


 白糸はとうとう振り返って俺の顔を見てくる。


 表情は真顔……かと思ったけど、少しだけ微笑んでいるように見える。暗いからそう見えるだけ、或いは俺が見えると思いたいだけかもしれない。


 白糸は少しの間、静かにしていたかと思えば「最後の質問」と言って尋ねてくる。


「裕翔君は2人が、ううん、辰哉さんが私のお母さんと籍を入れたことを嬉しいって思える?」


 どんな質問かと思えば……だった。


 俺は今の質問に素直に"嬉しい"とは言えない。


 父さんが籍を入れたことで幸せを掴めているなら素直に嬉しいと思える。


 でも、再婚自体の話なら俺がこの家にいる内なら嬉しいとは言えない。年上の女性とは言えある程度の恐怖は感じるし、異性の連子がいるなら尚更だ。


 これも、白糸にそのままは伝えられない。だから、伝える言葉は当たり障りのない普通の答えになる。


「……嬉しいと思ってますよ」

「だよね。私も同じ」


 白糸は微笑みを笑顔に変えて言ってくる。


「ついでに言うと、私は裕翔君と家族になれたのを嬉しいと思ってるよ。たとえ裕翔君が私を嫌いでも、避けられてもこの気持ちは変わらない。どうしてか分かる?」


 白糸は自分から言ったのに困ったような表情を浮かべる。元々言うつもりがなかったのだろうか。まぁ、そんな事は俺には関係ない。


 白糸が嬉しいと思っている理由……?


 俺にそれが分かるわけがない。それに知りたくない、知る必要がない。


 これもだけど、言えない返事だ。白糸からの質問は答えられないものばかりで困る。


 そう思いながら黙っていると白糸は理由を言う。


「それは、裕翔君のことが好きだから」


 その言葉で俺は、全身が凍り付いた。

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