第14話.「週末明けの朝」
朝、平日だけセットしているアラームの音で俺は目を覚ます。スマホの画面が表示するのは5時30分。布団から出ると若干の肌寒さを感じる。
ベッドから立ち上がり軽く伸びをする。部屋の位置が相まって朝日が部屋に差し込んでくれるのは目が覚めるからありがたい。
寝る前に準備を済ませてあったおかげで着替えをさっさと終わらせられ1階へと向かう。
「ふぁ〜あ」
睡眠時間はかなり取れたはずなんだけど昨日の朝みたいに頭がスッキリしていないのは変な夢を見たせか、もしくは雑念が混じったまま意識を飛ばしたからだろう。おかげでそこそこ大きい欠伸をしてしまった。
1階に着くと静かにリビングのドアを開けて入る。流石にまだ起きている人は居なかった。
(昨日、冬美さんが起きてきたのは偶然だったんだろうな)
とりあえず、炊飯器をセットしつつ朝食や弁当の中に入れるおかずを考える。とは言っても弁当の中身の大半は冷凍食品だから大した物は入れない。前日の残りを入れることもあるけど、初日から冬美さんや白糸の弁当に入れるのは気が引ける。
(しばらくして慣れた頃から入れ始めよう。……さてさて、そしたら何を入れようかな)
冷蔵庫の冷凍室からいくつか冷凍食品を取り出して解凍する。それと同時進行で弁当用の卵焼きと朝食の準備も進めて行く。卵焼きは4人分と言えど大して時間はかからないし、朝食だってそんなにガッツリ作るわけじゃないのですぐに出来上がる。
解凍した食品と卵焼き、あとは彩り目的の野菜を入れれば、残るは米を詰めるだけになる。炊飯器を確認するとまだ炊き上がりまですこし時間があるので珈琲を淹れて、飲みながらスマホを見ながら待つことに。
(鈴香からメッセージ来てる。22時12分ってことは……ああ、寝た後だな。昨日はいつもより寝たの早かったし気付かないのは仕方ないよな)
まだ朝早いから返信は後で良いかと、既読だけは付けてネットニュースを読みに行く。そうこうしていると米が炊き上がった合図が聞こえる。弁当用のご飯は冷ましてから蓋をしなきゃいけないので先に入れて、ついでに自分の朝食の分も装う。
自分の作った物を美味しいとか思わないけど、これを食べて冬美さんや白糸がどんな反応をするのか緊張する。何も今回が初めてってわけじゃないし、なんなら3回目なのに前2回がそれどころじゃなかったのが影響して今になってやっと味付けを心配できた。
(うん、大丈夫そう)
上手く作れたと安心して朝食を食べ進める。それが済み、皿を洗い終わると時計の針は6時40分を指していた。冬美さんは分からないが父さんならいつも起きてくる時間だ。でも、今日は起きてこない。そんな日もあるだろうと思っているとリビングのドアが開く。
「あーイテェー。あっ、裕翔おはよう」
起きてきたのは父さんだった。1歩出すと止まり、また1歩出すと止まる。そんな変な歩き方をしている。
「おはよう。もしかしなくても筋肉痛?」
「もしかなくてもの筋肉痛だ。言うても軽い方だと思うから心配には及ばないぞ」
「歩く度にイテェーイテェー言われても説得力無いって」
「ふははっ、確かにそうだ。あー、絶対に昨日のだよなー。まだまだいけると思ったんだけど俺も歳かぁ」
「あんまり無茶はしないでよ」
そう言いながら父さんに棚から取り出した湿布を渡す。今日は普通に仕事もあることだし、軽いなら貼っておけば幾分かマシになるだろう。
「おっ、ありがとな」
「良いってことよ」
昨日は少し気不味い思いをしたが普通に話せている。そこに安心を覚えるし、やっぱり俺の生活の中心にいるのは父さんなんだと改めて自覚する。
「しっかし月曜日の朝からよく早起きできるよな」
「習慣だからって言うのはあるかも。それにアラームを使ってるしね」
「それでスッと起きれるのが凄いって話だ。この歳になっても休みの日と月曜日は布団から出たくないもんな」
「俺も働き始めたらそう思うようになるかな?」
「いやーどうだろう。裕翔は責任感強いし、曜日関係なく決まった時間に起きて布団からも出れそうだ」
今の生活を続けるならそうだろうけど、独り立ちし始めたら意外とそうはならないと自分では思う。
父さんにコーヒーを渡すと、学校に行くことを伝える。
「もうか? いつもよりだいぶ早いな」
「早めに行ってやっておきたきことがあるから。じゃあ、行ってきます」
「おうっ、いってらっしゃい。今日もありがとうな」
本当のことを言えば、朝から白糸と顔を合わせなくて良いようにする為だ。同じクラスだしどうせ学校で会うことになるのだから早いか遅いかの違いだけど、それでも精神的負担は減らしておきたい。
(さーてと、行くかー)
家から学校まで自転車を使えば10分程の道だが、部活動をしない俺は運動目的で徒歩通学をしている。なので約30分近くかかけて登校している。運動量的に足りるかと聞かれたか足りない気もするが、毎日歩いているのだからまあ良しとしよう。
起きた時と同様で若干の肌寒さを感じさせる冷たい空気を肺に入れると学校に向けて歩き始める。
正確な話をすると土曜日から始まった新たな生活。でも、"日常"は今日から始まったと言っていい。だからだろう、慣れない4人分の弁当と朝食の準備をした後ということもあり俺の足取りはこれまでに比べて明らかに重かった。
○○○
学校に着き、教室まで行った俺はカバンを下ろすとそのまま机に伏して寝ることに。
宿題は当たり前に終わっているし、予習なんかはする必要がない。本を読もうにもここじゃ落ち着かないし、かと言って図書館に行くのも面倒だからだ。それに体力と脳の疲れを回復させておきたいのもある。
(ちょっとでも寝れれば良いや)
教室内には俺しかおらず、寝るには最適な静けさ。色々と考えたくなる頭をなんとか無にして意識を呼吸に傾けるとすぐに眠気は来てくれる。そして、すぐに俺の意識は眠りへと深く沈んだ。




