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放課後の買い物

「水白さんが梓の親友?確かに梓もそんなこと言ってたかも。」

水白の発言に最初こそ驚きつつも雪は冷静に梓の過去の発言を振り返る。確かに梓はとても可愛くて面白い幼馴染がいると言っていたがまさかそれが水白とは。

確かに雪ほどの身長しかなく一つ一つの発言が何かと面白い水白は梓の言っていた通りかもしれない。

「ふふっ、その通り。私こそが梓の幼馴染で親友なのよ。って何でそんなに興味なさそうなのよ!」

やはり水白と雪には明らかにテンションに差があり、雪は今すぐこの場を去りたくて仕方なかった。そもそも水白が梓の親友だとしてここに呼ばれた理由が分からない。

「いや、だってそんなこと言われても私関係ないし。それを言うためだけに私を呼んだの?」

「まあ、待ちなさいよ。話はまだおわってないんだから!」

雪が帰ろうとしたその時突然水白が雪の腕を掴みながら叫びだした。そんな水白を見て雪はギョッとする。

「さっきからどうして私に構うの?何か言いたいことがあるなら早く言ってよ。」

「そ、それもそうね。こうしているのも時間の無駄だし単刀直入に言うわ。お願いだから梓と別れて欲しいの!」

顔を真っ赤にしながら必死にお願いをする水白の衝撃の発言に雪の頭は真っ白になる。もはや宇宙だ。宇宙を通り越してビックバンかもしれない。

あまりにも意味不明な勘違いに雪は一瞬取り乱したがすぐにいつも通りの様子で水白に事情を説明することにした。

「いや、別れるも何も梓とは別に付き合ってないけど。梓とはずっと仲のいい友達ってだけだし。」

「う、嘘よ。この前二人が手を繋いでいたのを見たんだから!それに二人は何だか距離が近いじゃない!」

確かに水白の言う通り梓と距離が近いかもしれないがそれも友達の範囲内のはずだ。実際青葉や日向とも同じくらいの距離感だった。

それに梓は青葉のファンであり雪など興味もないはずだ。そもそもクラスの人気者で天使のような梓とクラスの底辺である雪が付き合っている訳がない。

雪はそんな風に自分の中で色々と考えながら水白を見た。よく考えるとここまで過剰に反応するということは水白は梓のことが好きなのかもしれない。

「別に梓とは友達なんだからこの距離感は普通でしょ。私と梓は付き合ってないからもう帰ってもいいよね?」

「ちょっと待ってよ!まだこの話は終わってないわ。」

「えぇ、これ以上は私も待てないよ。時間がないんだってば。」

雪は困ったように駄々をこねる水白を見た。これ以上ここにいると疲れてしまう。

何より今の所水白に嫌悪感はないが後藤の時のように何かされる可能性もあった。だから出来るだけ勘違いされないように平和にこの場を収めないといけない。

そんな風に雪が一人で誓っていると水白は突然ポロポロと涙を溢しながら泣き始めた。

「うぅ、少しは私の話を聞いてよ。どっか行かないでぇ。」

「ちょっ、急に泣かないでよ。分かったから。ちゃんと話聞くからさ!」

雪は地べたで泣く水白の目をハンカチで拭く。雪は諦めたようにため息を吐きながら目を瞑った。

水白は木下や青葉と違う方面で面倒くさい。こういう時に梓がいてくれたら助かるというのに。

「そ、それで何で私をここに呼んだの?梓と私は付き合ってないんだってば。」

「本当に?二人が付き合ってるから梓は私の相手をしてくれないんじゃないの?」

「いや、違うから。そんなに気になるなら本人に聞いてよ。私と梓は本当にただの友達だから。」

涙ぐんで雪を見つめる水白に困惑しながらも雪は首を横に振りながら否定した。

そもそも雪は彼氏も彼女も作る気はない。雪はいつだって一人でいる時間が大好きな人種だった。

「それじゃあ、梓に付き合っている人はいないってこと?」

「だからさっきからずっとそう言ってるじゃん。って何でまた泣くの?」

「うぅ、だって梓に付き合ってる人がいないって分かったんだもん。私にもまだチャンスがあるってことよね?」

水白はあまりにも涙脆すぎる気がするが無事に解決したことに一安心する。てっきりもっと面倒くさいことになると思っていたものだからこの程度で済んで雪は心の中で大歓喜していた。

「大丈夫、梓は誰とも付き合ってないし水白さんならチャンスあるよ。だから頑張って!」

雪はこの場を納めるために適当なことを言って水白を慰める。梓は普段雪達と一緒にいて誰かと付き合っている気配はないし幼馴染の水白であれば可能性はあるはずだ。

それにしても男女問わずモテモテな梓は流石だ。本当に雪といるのが勿体無い。

「渡瀬雪、私は貴方のことを勘違いしていたみたいだわ。どうやら貴方はとてもいい人みたいね!」

「ど、どうも。無事に解決してみたいで良かったよ。」

まるで嵐のような出来事にポカンとしつつも雪はゆっくりと椅子から立ち上がって背を伸ばした。

水白は騒がしくはあるものの悪い人ではないようだ。梓の親友ということだしこのまま仲を深めていきたい。

「ありがとう渡瀬雪。貴方とはこれからも仲良くしたいわ。どうぞよろしく。」

「こ、こちらこそ。」

水白の差し出した手を雪はゆっくりと手を取りながら自然に笑った。やはり水白に悪意は感じられずさっぱりとしている。

とりあえず無事に終わったことで雪は心の中で洪水のように涙を流した。今回は珍しく無事に終わったようだ。

「ふふっ、また今度どこかでゆっくり話しましょう。それじゃあ私は教室に戻るから。」

「うん、それじゃあ気をつけて。」

雪と水白はお互いに手を振りながら自分の教室へと向かって行った。

今の雪は水白のおかげもあって爽やかな気持ちになっていた。その分体力ゲージは半分になってしまったが。

「よーし、無事に終わったし早く教室に戻って日向達と話そう。」

雪はそんな風に急いで教室に向かったが当然間に合う訳もなくこの後十分ほど先生に叱られるのだった。

雪の苦痛の学校生活はまだまだ続く。














『キーンコーン、カーンコーン』

いつものように学校の終わりを知らせるチャイムが鳴り雪は学校という名の牢獄からついに解放される。

今日は部活も他の予定もない為、直行で家まで帰ることができる。とそう思った時に雪はハッと朝のことを思い出す。

「そう言えば梓の用事って何なの?放課後なら空いてるけど。」

雪は隣で帰りの準備をしている梓に話しかける。危うく忘れかけるところだった。

「えっと、それは何というか・・・私とお出かけして欲しいの!ダメかな?」

梓はもじもじとしながらも雪の目をじっと見つめる。その梓のお願いに雪は少しの間迷いながらも静かに頭を縦に振った。

「それくらいなら大丈夫だよ。そう言うことなら久しぶりに三人でお出かけしよっか。」

「あ、僕はパスで。今日は色々とやりたいことがあるから二人で楽しんで来なよ。」

「日向ってばそんなに急いでどうしたの?って話くらいは聞いてよ!」

雪の誘いに全く興味がないような素振りで日向は鞄に物を詰めながらそそくさと教室を出て行った。そのあまりにも早い動作に雪と梓はお互いに顔を見合わせた。

「むっ、日向ってば最近私に冷たくない?別にそう言うことなら梓と二人きりで楽しむけどさ。」

雪は少し腹を立たせながらも嬉しそうに帰りの準備をする梓に目を向ける。梓と二人で帰ったりすることはあれど二人きりでどこかに出かけることはほとんどなかった。

特に理由もなくただ家の方向が違ったりそもそも雪が外に出ないというだけなのだが。だから今回二人でお出かけするのは少し嬉しくもあった。

「ふふっ、それじゃあ今日は渡瀬さんと二人でお出かけだね。私ずっと渡瀬さんと二人きりでお出かけしたかったんだ。」

「私もだよ。体力が持つか不安ではあるけど・・・。それで最初はどこに行くの?」

「えっと、今日は少し遠くのショッピングモールに行こうかなと思って。ほら、渡瀬さんの大好きなゲームショップもあるし。」

雪はその発言にキラキラと目を輝かせる。流石だ、梓は雪の好みをばっちり理解している。

梓の言っているショッピングモールは元々話題になっていた場所であり雪も行きたいと思いつつも遠くて躊躇っていた場所だった。

「行きたい、絶対行きたい!そう言うことなら時間もないし早く行こうよ。」

「ふふっ、渡瀬さんってば嬉しそうだね。私も渡瀬さんと一緒にいれて嬉しいな。」

雪はさっきまでの疲れが全てなくなり体が軽くなっていくような感覚に陥る。

雪と梓は手を繋ぎながら早速話題のショッピングモールにいくために駅へと向かうことにした。今日は午前だけの授業だった為、思いっきり遊ぶことができる。

何より今から行くショッピングモールであれば同級生も居ないはずだ。これなら人気者の梓と二人でいても騒がれることはない。

「それにしても何で日向は急に帰ったんだろう?大体部活がない時は一緒に遊んでくれるのに。」

「さ、さあ?やっぱり垣根さんだって忙しい時はあるんじゃないかな。」

「ふーん、日向ってばドライなんだから。明日学校で自慢してやるもんね。」

雪はスマホを開いて日向に煽りのスタンプを連射した。ノリの悪い日向にはこれがお似合いだ。

そして他のラインを見ると流星から牛乳と漫画の新刊を買ってこいとメッセージが送られており、青葉からは二十件ほどの長文が送られていた。雪は二つとも見なかったふりをしてスマホをしまい、恥ずかしそうにしている梓に向き合う。

「梓ってば顔赤いけど大丈夫?今日は暑いから水分はとった方がいいよ。」

「そうだね。渡瀬さんの言うとおり気をつけるよ。って何してるの?」

心配になった雪は梓の額に手を当てて熱を測った。すると梓の体温はみるみると熱くなっていきもはやインフルエンザの領域まで達していた。

「わっ、梓ってばものすごく熱いけどどうしたの?ショッピングモールなんて行かずに病院に行った方がいいよ。」

「ち、違うよ。これは何というか少しテンションが上がっちゃっただけで別に熱がある訳じゃないから!だからそこまで心配しなくてもいいから!」

梓は必死に早口で叫びながら雪の手をブンブンと振った。あまりの梓の必死さに雪は少しだけ引いていた。

「そ、そっか。梓が大丈夫なら構いはしないけども。」

「ほら、そんなことより早くしないと遅れちゃうよ。時間もないし急ごっか。」

「わっ、梓ってば早いよ!ぜえはあ、ちょっとは止まってよ!」

耳から手まで真っ赤にしてまるで雪から逃げるように走る梓を体力のない雪は必死に全力で追いかけた。

雪の楽しいお出かけは既に雲行きが怪しかった。

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