表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
62/63

#59 再会

 オーリリア城跡地の内部を、地図の通りに進んでいる。

 あれから30分ほど歩いたと思うが、いまだにルーンストーンがあると言われる図書室にはたどり着けずにいた。


 スライムの大軍に遭った以外では、脅威となる魔物との遭遇はない。

 せいぜいスライムが単独で襲い掛かってくるくらいのものだ。

 逆に、地図から外れた道は探知魔法ミドルサーチで複数体の反応があったり、突き当たりの壁からちらりと鎌のようなものが見えたりもした。

 さらに、足を踏み入れたくないと思わせる威圧感さえ感じる場所もある。


 危険な場所は、探知魔法ミドルサーチが示す限り全てその通りだ。

 あまりの正確さに、素直に感心した。



 * ――――――



 階段を昇ったところで、改めて地図を確認する。

 俺の方向感覚が正しければ、今は5階にいるはずだ。

 図書室は右側にあるようだ。だが、どういうわけか地図上は左に行くように促されている。


 ――何か理由があるに違いない。


 俺は迷うことなく、遠回りとなる左へと足を向けた。




 迂回した先を歩き続ける。

 安全な道だからと遠回りを選んだものの、階段の昇降を伴っている。


 ――きっついな。


 ずっと気を張り詰めていたのもあって、身体に疲れが溜まってきた。

 階段を行き来するたび、身体に汗が伝い、呼吸が乱れるのを感じる。


 ほんの少しだけ休みたい。


 俺は階段に腰を下ろし、呼吸を整えた。


 採取依頼とはいえ、一人で依頼を受けるのは大変だな。

 今までは調べるにせよ戦うにせよ皆で協力していたが、それらを全て一人でしなくてはならない。

 いつ敵に襲われるかわからない状況で、気を張り詰めながら進んでいくことが、どれだけ怖いことか。


 探知魔法ミドルサーチを使うにも、魔力がいる。

 魔力は無限じゃないのだ。使い続ければ、いずれ底をつく。


 ――帰りの分もあるんだ。魔法を使うのは、緊急時だけにしておこう。


 俺は地図に頼り、魔力を温存することに決めた。



 * ――――――



 少し休んで疲労を和らげた俺は、階段に腰をかけたまま懐から地図を取り出す。


「突き当りを右に曲がったところにある扉から小部屋に入り、そこを抜けた先が図書室――ルーンストーンがある場所か」


 そいつを3つ回収して、帰るだけ。

 自然と気合が入る。

 俺は階段から立ち上がり、先へと進んだ。




 少し歩き、地図に示された通りに扉へとたどり着く。


 ――待て、音が聞こえる。


 魔力を温存すると決めたつもりだが、これは緊急だ。

 魔物がいるなら、祝詞を乗せて不意打ちしたい。

 魔法陣を展開し、探知魔法ミドルサーチを唱えた。


「扉から少し離れたところに反応が3つほどあるな。調べておいてよかった」


 俺は小さく息をつく。


 地図に示されたルートだから大丈夫だとは思うが、先にどんな魔物なのかを確認したい。

 俺の探知魔法ミドルサーチでは、何かがいることしかわからない。それが、魔物なのか人なのかも。

 フィリアなら魔物か人かまでわかるらしいが、俺にはそこまで判別できない。


 ――となると、この目で確認するしかないな。


 俺はゆっくりと扉に手をかけ、音を立てないようにゆっくりと引いた。

 そして、隙間から扉の先を覗く。


「……!」


 扉の先にいたのはゴブリンだった。錆びた剣を背中に背負い、3体で仲良く肉のようなものを頬張っている。

 チャンスだ。これなら祝詞だって乗せられそうだ。

 俺は魔法が当てられるくらいに扉を開けてから、持っていた杖を握り、魔法陣を展開する。



 冷酷なる氷の精霊よ、か弱き我に力を――


 氷よ来たれ。氷葬ひょうそうの弾丸――


 1体のゴブリンが俺に気付き、声を上げる。

 すると、他のゴブリンとともに一斉に剣を構え、向かってきた。


 だが、もう遅い!


「コールドバルカン」


 白い冷気が漏れ出る魔法陣から、大量の氷の弾丸がゴブリンに襲いかかる。

 剣で身を守ろうとするも、祝詞を乗せた俺の魔法を前に、奴らは成す術がない。


 氷の弾丸はその名の通り弾丸となり、ゴブリンたちの身体を容易たやすく貫いた。


「前より強くなってる気がする」


 倒れたゴブリンを見て、思わず言葉を漏らす。


 普段から魔物を倒すために強力な魔法を連発しているせいか、皮肉にも魔法が生活の中心だったアルカディアにいた頃よりも上達したとすら思う。


 だが、魔法は使えても――


「こいつを解体することはできないんだよな」


 俺は自嘲気味に笑った。


 こんなことなら、ティアナに解体を習っておけばよかったな。

 売ったらそれなりのお金になるだろう。


 カノンの日記が目前に迫る中、なんて勿体ないことをしてしまったんだ……。


 俺は無念のままゴブリンの死骸を通り過ぎた。何とも言えない臭いが鼻を刺激する。


 ――習ったところで、解体はできないかもしれないな。


 手袋をするとはいえ、こいつの身体をバラバラにして使えそうな部位を取り出す。

 そんなことを平然とやっていたティアナに、改めて尊敬の念を抱いた。




 死骸を通り過ぎ、小部屋の一番奥に見える扉で足を止めた。


 この先の廊下を抜けたら、ついに、ルーンストーンがある図書室にたどり着ける。

 鼓動が次第に早くなるのを実感する。


 これで、カノンの日記が手に入るんだ……!

 俺は、ゆっくりと扉に手をかけた。



 * ――――――



 扉の先の図書室は、想像している以上に広かった。

 地図で構造を見てはいたが、平面しか書けない地図と実際に視界に広がる光景は、全然違って見える。


 まず、俺の身長よりもずっと高い本棚が何列も並んでいて、本棚の間は人が数人並んで歩けるほどの通路が設けられている。


 ――ルーンストーンがあるんだ。この場所に。


 俺は慎重に、中心へと進んでいった。




 本棚で囲まれた外側とはうって変わって、中心は机と椅子が並んだ比較的広々とした空間だった。

 入ってきた場所と比べて、やけに明るい。


 顔を上げると、吹き抜けになった2階部分にも本棚が並んでいた。回廊のような通路が壁に沿って設けられていて、空間の隅にある階段から上へ行けるようになっている。

 2階の本棚の上に窓がいくつかあり、ここが光源になっているみたいだ。


 変な構造だな。2階から本が落ちてきたら危ないだろう……。


 ともあれ、何とか図書室にたどり着けた。

 ここに来てやることはルーンストーン探し。

 俺は移動しながら周辺に視線を走らせた。




 ルーンストーンはすぐに見つかった。

 だが、思ったよりも大きい。

 小さな欠片のようなものを想像していたが、そこにあったのは拳大くらいの大きさをしている。


 依頼主は一体何に使うんだろうな。


 ほんの少しだけ疑問を浮かべつつも、俺はそれに手を伸ばす。


「――重っ!」


 持ち上げられない程ではないが、見た目以上にずっしりしていた。拳大くらいの大きさなのに、それよりずっと大きい俺の杖より重い。

 これを3つもとなると、持ち運びに体力を使ってしまうだろう。


「こんな時こそ、収納魔法ストレージだな」


 その場に空間を作り出し、物を出し入れすることができる便利な魔法だ。

 収納するものの大きさや量に制限はあるが、とても気に入っている。


 フィリア曰く、使える人は聞いたことが無い――俺専用の魔法。


「ストレージ」


 杖の先に小さな亜空間を作り出し、そこにルーンストーンを収納した。


 よし、残り2つだ。


 視線を泳がせた先に、あちこちに散らばっている。


「たくさんあるし、回収自体は難しくないな。それに、重さだって俺には関係ないし」


 一息ついてから、近くにあるルーンストーンをまとめて収納魔法ストレージでしまいこんだ。


 そして、最後のルーンストーンを回収したその時――


「どうして、ここに……!」


 聞き慣れた声に、思わずその方向を向く。

 視線の先にいた見覚えのある姿に、息を呑んだ。


「――嘘だろ」




 そこにいたのは、俺がずっと探していた幼馴染――カノンだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ