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「そうだ。その通りだ。で、ボトルの事だが」
そうだった。僕は人生相談しに来たんじゃないんだ。
自転車の籠から袋を取り出し、壊れた船を彼に渡す。ホームレスはそれを受け取り、頷いた。、
「こっぴどくやられたな。ボトルは?」
「砕けちゃったんだ。これを直せる人を知らない? っていうか、どこからこれを持ってきたの?」
「これか? こりゃあお前、俺が作ったんだよ」
「あんたが?」
僕は顎が地面に落っこちそうなくらい口をあんぐり開いた。彼はそんな僕に笑って見せ、船を返した。
「来いよ。俺の工房に案内してやる」
人生ってのはつくづく、何かが起こる時は一度に起こるもんなんだな。ボトルが割れ、母親を殴り、兄貴が来て引っ越しを持ちかけ、不良に絡まれ、そこを誰かに助けられ、普段なら決して出歩かない時間帯に町をうろうろして……
僕が現実的な性格の持ち主ならとっくに気が狂っていただろうが、そこはそれ、非現実の先端を行く日々を送っていたわけだから、受け入れに苦労はしなかった。何でもあるがまま、流されるままにその出来事を見てきたわけさ。
そして今また、僕は新たな世界へ踏み入ろうとしている。
彼に連れられて再び裏路地に入ると、ホームレスは自転車を物陰に置いて隠すよう僕に命じた。
「秘密の入り口でもあるの?」
「そんなとこだ」
あたりを見回した。繁華街はすぐそこだが、土日ってわけでもないから人通りはそれほどでもない。まれに近道をしようと千鳥足の酔っ払いが通りかかるだけだ。
僕は僕でこんな時間に未成年が、しかもホームレスと一緒に歩いていたんじゃ誰がどんな想像をするか見当もつかず、ただ不安だったり心配だったり、あるいはどこかでワクワクもしていた。こんな経験初めてだ。
人気が途絶えた瞬間、ホームレスは懐から奇妙な金具を取り出した。細い鉄の棒で、先端がL字型に曲がっている。彼はしゃがみ込むと、素早くマンホールの蓋に金具を差し込んだ。渾身を込めてその鉄の円盤を持ち上げ、横に除けると、中に体を滑り込ませた。
いやもう、何があってもビビる事はないと思っていたけれど、さすがにこれにはたじろいだ。




