第十六話 すべての終わり
『クラージュ、アクセラシオン』!
ルイーゼが再び旗を勢い良く振り、第二回目の攻撃が始まる。ジェットとセイビアが前線に立ち、武田とアスカリーが援護。赤城と花蓮が入れ替わりで前線と援護を担当。梔子姫と千々波、糀谷はマリーを守り、ルイーゼが旗を振り、ヌビアが指示を出す。マリー達は詠唱をしていた。
「半蔵、後ろ……!」
「なっ…!?」
武田は後ろから右足を貫かれる。勿論その槍の持ち主はアルドナートだった。赤城が援護に加わり武田を退避させる。
「お前、なんでセクメルなんかの肩を持つ」
「それは、血が出ない相手と戦ってもつまらないですからねぇ……」
「花蓮と梔子姫が赤城の援護に……」
「いらねえ、こいつは俺が斬る」
ヌビアの助言はその言動に圧倒された。ルイーゼが旗を振る速度が鈍く、息が荒くなったのに感づいて、マリーと同じ古代魔術を背中に貼り付けた。
「みんな、あともう少しの辛抱だ!」
ルイーゼはその言葉と共に再び活気を取り戻す。そして赤城も本腰を入れる。
「……数々の言動、そして何よりも莽薙の借り、返させてもらう」
「いいねぇ!血気盛んなのは好きだよ!」
赤城は右手を構える。少し姿勢を落とす。そのまま目を瞑り五感を研ぎ澄ませる。
「……さっきの血気盛んな態度は何だったんだよ」
刀を斜めにして鯉口を切る。ここまでは誰でもできる動作。問題はここから。
「目を瞑ってるなら、変な方向から貫けばいいよね」
そう言ってアルドナートは赤城の周りをゆっくり周回し始める。それでも赤城は微動だにしない。
グゥッ!
力を入れた音が横から響く。赤城は後方に向かって跳躍し、攻撃を回避してアルドナートの背後に回る。
『抜刀・昇龍』
そのまま勢い良くアルドナートの背中を斬り上げる。赤城の刃を妨げるものは全く存在しない。
「イッタァァああああああ」
赤城は血を払い落として納刀する。しかし、相手は背中の為傷は浅い。アルドナートは怒りに任せて振り返って攻撃してくる。
『魚群の乱舞』!
アルドナートの無数の突き攻撃が来るが、赤城は一定の間合いを堅持しながら後退する。奈落にぶつかった所で、赤城も刀を引き抜いて応戦することにした。
『龍王争覇』!
互いの槍と刀がぶつかり合うが、赤城は笑顔見せる余裕がある程に力を抜いていた。アルドナートはそれを見て激昂したが、状況は変わらない。
「弟のほうが良くできていたな。お前じゃ取るに足らない。」
「なにくそぉ……!」
『游雲驚龍』!
アルドナートは仕方なく引き下がり、呼吸を整える。赤城は再び納刀し、抜刀術の構えをする。アルドナートは憎く悔しい状況に冷静になれなかった。
「あかぎいいいいい」
『抜刀・画竜点睛』!
アルドナートの腹部を横一文字に斬る。アルドナートは流石に倒れるかと思われたが、正気を亡くし、白目を剝いただけで立ち続けていた。
赤城は次にアルドナートを斬り下げ、アルドナートは地面に倒れ込んだ。
そのまま肩を入れて突き倒し、アルドナートの倒れる背中へ周り、そこから再び一太刀を入れる。赤城は刀の血を払い落として納刀した。
「良かったな、大好きな血液に塗れて」
アルドナートの胸ポケットから鍵が見えた。それが檻の鍵だと気づいた赤城は莽薙の檻に向かって走り始める。
「させるか」!
セクメルがステッキを投げつける。それを花蓮が白い炎を纏った薙刀で叩き切った。大きな破片が赤城の元へ向かうが、それはアスカリーの銃弾が除去した。赤城は玉座から檻の上部に乗り、鍵を開けて莽薙を救出する。
「大丈夫か、莽薙」
「……」
莽薙は反応がなかった。とにかく急いで赤城は梔子姫の元へ持って行く事にした。赤城は堂々とセクメルの横を突っ切る——。
「良い餌だな!」
赤城は仲間を信じて走り続けた。
『燃え行く我が道』!
『輝く栄光の一角』!
セイビアとジェットが介入し、セクメルの体に剣を刺して押し返そうとする。だが、刺した直後にステッキによって薙ぎ払われる。そのまま赤城の背後を捉え、ステッキの先端を尖らせて攻撃の準備をする。
『一本斬り』!
武田がそのステッキに鎖を絡めて、鎖に引っ張られるような形でセクメルの元へ移動。刀でセクメルの首を斬りつける。しかし、首の皮一枚にしてもセクメルは止まらない。
「二枚抜きしてやるよ‼」
「……クソッ」
「赤城、こっち!!」
赤城は莽薙を花蓮に投げ、自身は抜刀して反撃の態勢を取る。
『抜刀・下龍』!
赤城はステッキの半分を斬る事しかできなかった。そのままセクメルはステッキを花蓮に向かって投げつけた。
「ええっぇ、ちょっと!」
花蓮は不安定な態勢で受け取ってしまったので、駆け寄ってきた糀谷に莽薙を渡す。
「花蓮さんしゃがんで、ルイーゼさんお願いします!」
『クラージュ、インパクト』!
ヴァンッ!
花蓮の髪の毛の間を分けてセクメルが放ったステッキに銃弾がぶつかる。ステッキは銃弾と正面からぶつかった事で分裂四散した。
無事莽薙は糀谷によって梔子姫の元へと連れていくことに成功した。梔子姫と千々波は急いで回復に専念する。セクメルはその間に頭部をつなげて、戦闘の意志を見せつける。
「詠唱完了、いつでも行ける!」
マリーの右手には大きなボール程の黒い球体が浮かんでいた。その球体の黒の中には無数の色に輝く微小な球体が動いている。まるで宇宙を出現させたような球体だった。
ヌビアは初めて見た事と、現実で再現できるとは思っていなかった事から啞然としていた。
「よし、みんな、撤退だ!」
そういいながらヌビアは全速力で地面につけた古代魔術を拾いに行く。それを赤城とセイビアが護衛。セクメルは最後まで抵抗を続けるが、結果的に全員が入口の位置に戻る。それを確認してマリーは魔法を発動した。
『全てを導く暗黒の運命』!
黒い球体はその声と共に細長い触手のような物でセクメルを拘束する。そして球体はブラックホールのように渦を巻いてセクメルのすべてを吸込み始める。
「なっ、何を、何をするッ!」
「……っ」
マリーの腕は使い続けた動線のように熱くなり、筋肉細胞の一つ一つが超新星爆発を起こしたかのように激痛が走る。その痛みを前に涙を流すが、魔法の発動を継続する。
「わたしは……わたしは、消えんぞおおお!」
「く……ぐぁッ…!」
マリーから聞いたことないような嗚咽に、梔子姫は莽薙を千々波に任せてマリーの援護に入る。梔子姫の柔らかな炎がマリーを包み込む。激痛は腕のみならず首元まで襲ってくる。
「マリーさん、頑張って!」
「えっ……ええ……っ!!」
苦し紛れの返答をしてマリーは腕を構え続ける。しかし、マリーも辛うじて目を開けられる程には限界だった。そこで千々波の溶礼道秘伝千々波特製回復薬を飲ませる。
「よし、あと、もう少し……!」
ヴァアアアアアアッ……ヴァッ…ヴァ……バ…
セクメルの悶絶が聞こえなくなった事で、マリーは魔法を終えて右腕を落とす。息をするのも束の間、マリーは魔力切れで倒れてしまった。しかし、これで戦いはすべて終わった。




