第十四話 金の亡者
「秘密結社リコラッタの本拠地は言えませんが、真相に近づいたことですし、出血大サービスで全てを教えましょう。まぁ、後々貴方達が出血するのですが……」
「気に入らんな……こいつ…」
アルドナートは赤城の発言は気にも止めずに両手の指を弾き、広げた手をそのままに語り始める。
「リコラッタは世界各地に裏工作を仕掛けているのですが、その資金源はこのパラミダスだった訳です。まぁ、もう使い物にはならなくなってしまいましたがね……」
そのままアルドナートはマリー達に指をさす。
「ここで得た利益を確定させるため、イーサンド・ルイスやミゼルボートを利用させていただきました。中々にいい仕事でしたよ、『元女帝マリー』さん」
「VΛ/dΛ!」(クソが!)
今度はジェットの方に向かって指をさす。
「ちなみに古代魔術と人間技術が融合できた上に対魔法攻撃が可能になったのは、ランド王の技術提供のお陰です。貴方達が戦ってきたのはランド王の遺物な訳ですよ」
「……お前…!」
「ローシャング王国の技術、イーサンド・ルイスの魔法。これが合わさっていたら手が出せませんでしたが、いつまでたっても喧嘩しているのですもの。こちらが先に実践させていただきました。とても笑える話だと思いませんか、裏で暗躍されているのに喧嘩を続けているって……ップ、」
アルドナートは腹を抱えて笑い始める。堪忍袋の緒が切れたルイーゼとジェットは玉座に向かって攻撃しようと走り始める。
「ハハハハハ、ハハハハハハハハハハ、ちょ、ちょっとストップ……ッ、まだ話が…」
『クラージュ、アクセラシオン』
「燃え行く我が道!」
セクメルがルイーゼとジェットに左手を向けると、あれだけ勢いのあった二人が立ち止まってしまう。それを見て再びアルドナートは笑う。
「だから言ったのに!!」
動かないジェットにアルドナートは槍を突き刺して蹴り飛ばす。後ろにいたルイーゼも恐怖を覚えたが、マリーがテレポートをして何とか窮地を脱した。ジェットは千々波と梔子姫によって応急処置を受け始めた。
「あぁクソ、なんだありゃあ……」
ジェットは悶絶しながら混乱していた。ルイーゼも助けられたとは言え、恐怖を覚えてしまい足がすくんで立膝をついてしまった。特にあのアルドナートの不気味な笑みにトラウマを感じざるを得なかった。
「ルイーゼ、大丈夫だから!」
「ええ、貴方は勇敢よ!」
アスカリーとマリーが必至にルイーゼを鼓舞して心の傷を治療し始める。だが、一向にルイーゼの震えは止まる気配はなかった。それは同時に全員の緊張感を最大限に高める事態でもあった。
「人間どもよ、悪いことは言わぬ。平伏し、嘆願せよ。諸君らは私の支配の中に生きているのだ。持たざる者は所詮、持てる者には敵わないのだ。」
セクメルは玉座を降り、アルドナートの前へと歩いて行く。そのまま右手に黄金のステッキを呼び寄せ、左手を腰に当てる。
「我が野望は世界の支配。旧世界へ回帰し、万物の神となる。故に平伏する事が望ましい」
「誰がお前なんかに……」
「言葉を慎みたまえマリー。貴様の国も我が国がなければ財政難になる。現にその面影が出ているではないか。金に依存した国家の末路の代表例なのだぞ。」
「……ッ!」
「その他の国家も結局は我が国の黄金があってこそ成り立つ。君たちの勝機は無くなった。時間切れだ。」
全員が静まり返る。そんな中でヌビアがそのセクメルに近づく。そして目の前まで来てセクメルに問いただす。
「……お前、本当に人間か?」
「……どうだろうか、広義的には人間の中だろう。」
「お前からは人間の雰囲気が感じられない。狭義的には何に成る……?」
「そうだな、君たちの言う『神』とでもいうか。」
ヌビアは古代魔術を腰から取り出し、その古代魔術を指で挟みこむ。そして少しだけ詠唱して地面に叩きつける。
『トートジェニファ』!
その古代魔術に周囲のエネルギーが吸い込まれる。そしてヌビアはセクメルに向き直る。
「悪いが人間は諦めが悪い。悪神なら逆らわせていただく!」
「貴様、何を……!」
「なに、ちょっとした悪霊退散のおまじないさ」
ヌビアはそのまま帰っていく。そして千々波は周囲の負のエネルギーが消えて行くのを理解しているだろう。
「さあ君たち、彼らへの恨みを存分に晴らしてくれ。私も支援を惜しまない。」
ヌビアがそう言って全員が武器を構える。ジェットもルイーゼも落ち着きを取り戻す。最終決戦の火蓋はこうして開かれることになる——。
『クラージュ、アクセラシオン』……!
ルイーゼが立ち上がり、旗を靡かせた事が攻撃の合図となった。
『パラディーペル』
『ユヴィリテ・グロビューズ』
マリーが近接攻撃に向かい、その援護をエリゼに任せる。エリゼの青い魔法の光線で援護射撃をくぐりながら、襲い掛かるマリーへアルドナートが向かい打つ。
『テレポート』
マリーは背後にテレポートをして右ストレートをアルドナートに叩き込む。しかし、アルドナートは槍の柄で背後のマリーの喉を押し出す。その後ろにセクメルが迫る。
……『チェンジ』
マリーは何とか喉を鳴らし、武田と居場所を変わる。武田は既に武器を手にしてセクメルをにらみつけている。
『鎖・神威太刀』!!
武田は広範囲に刀を振り回す。セクメルはステッキで防御し、アルドナートは前へと回避した。そのまま武田は笑いながらセクメルのステッキに鎖を絡ませる。対して、アルドナートには赤城が接近する。
『龍驤斬り』!
『一本斬りぃ』!
アルドナートは自身の槍で受け止め、セクメルは隙を見て武田の顔に剛腕を食らわす。武田に追従して、セイビアが聖剣を突き出す。
『穢れなき永遠の剣』!!
その斬り上げをステッキで捉えようとするも、未だに鎖が繋がれており武田がそれをさせなかった。セクメルはそのまま斬り上げを食らってしまう。一方でアルドナートと赤城の競り合いの中で、ジェットが間を縫って復讐の一撃を浴びせる。
「さっきのお返しだ!」
『燃え行く我が道!』
アルドナートは逃げる場所が横にしかなかったので、槍を置いて横へと転がり込む。しかし、目の前には花蓮がおり、既に薙刀を振り下ろしていた。その斬撃を避けようとするも、右腕を掠めてしまう。更には槍を拾おうとした左手に、アスカリーの弾丸が命中してしまった。
「……あぁ、多勢に無勢ですか…」
「私はそんな言葉は嫌いだ」
セクメルは既に傷口の修復を終えて新たなステッキを出現させた。セイビア達は一度定位置に戻った。
「逆にこんだけやっても死なないわけ!?」
「大丈夫だ、このまま行けば……」
ドンドン!
セクメルはステッキを二回地面に当てる。その衝撃波が円形状の舞台に響き渡ると、彼らの心臓が萎縮して苦しくなる。千々波は依代なので効果は無く、梔子姫も効果が無かった。それを利用して千々波は回復薬をみんなに飲ませる。
『悪霊退散』!
お凛しか動ける者がいない中で、お凛はセクメルと一対一で戦う事となった。大太刀を翻し、ステッキと何度も火花を散らしては、古代魔術をふんだんに使うが、相手の傷は瞬時に癒えてしまう——。
「——なんと屈強な事か…」
「お前も、この世の者ではないか……。」
「何をぬかす!」
「では、証明してみせよう。」
『楽園の終焉と冥界への誘い』
セクメルのステッキが勢い良く掲げられた時、そこを中心に大きな衝撃波が発生する。その衝撃波が全員を貫通し、壁からの反射で再び貫通する。これに人間と呼ばれる生物は生命活動の根源が消滅した。それは味方であったはずのアルドナートも同じであった。
「……結局の所、人間とは支配されている事に気づかない下等生物。それも『自らが生み出した存在によって』だ。全く、愚かな生き物よ」
「なっ、ここれは、なにゆえ……!?」
お凛と千々波以外の人間は全員が倒れる。命が絶えて、呼吸の音すら聞こえない。聞こえるのはお凛と千々波の衣擦れ。お凛は振り返り、千々波とお互いを見つめ合った。




