第十三話 ゼリテーヌの戦い
中腹で斬られた四角錐。その頂上に敵の城が建設されている。ピラミッドを城の土台の石垣に使い、その上に城塞が建っているような様相である——。
「総員、戦闘開始!!」
城を護る兵は数も装備も質も劣っている。城は容易に攻略できると考えられた。ローシャング王国はイーサンド・ルイスに、イーサンド・ルイスはローシャング王国に遅れを取らぬように先頭を走り抜けていく。おかげでゼリテーヌ市民や蜂起軍には損害が出なかった。
「うわ、あれは!」
ロドメリア騎士団が探し求めていた飛行船が四隻、爆弾を降らせるために空中に展開した。ロドメリア騎士団、栄光ある自由の守護者達は一気に退避を余儀なくされた。爆発が大地で巻き起こる中で、その爆発をかいくぐってアスカリーがルイーゼの下に現れる。
「ルイーゼさん、お願いしても」
「アスカリー……オッケー!」
『クラージュ、アクセラシオン』
ヴァアン!!
アスカリーが撃った弾丸は飛行船のガス袋に当たり引火。そのまま一隻が地面へと降下し、激突と共に大爆発を起こした。残る飛行船三隻は旋回して散開して爆撃を再開した。
「団長、飛行船攻撃していいんです?」
「ま、まぁ、この際しょうがないか……、始末書書くのめんどくさいけど…」
騎士団のセイビアとジェットの感想を気にも止めず、アスカリーは再び一隻を撃墜する。それを見てロドメリア騎士団は啞然としながらため息をついていた。
しかし、他の二隻はアスカリーの射程圏外に入った上にゼリテーヌの町へと進んでいた。
「ダメだ、ここだと射程圏外なのかも!?」
「それはまずいわね、皆の衆前へ出るぞ!」
「ま、待って、もう一隻……!」
アスカリーが指した飛行船は大きくパラコ派の旗をはためかせてその二隻を追従している。見た感じ敵ではないのはよく分かった。花蓮達はそれが何かは一瞬で見分けがついた。
「船長、莽薙達が手を振ってくれてますよ!」
「ハッハハ、船長キャラの中で一番の活躍をしてやるぜ!」
「船長、メタ発言はマズいっすよッ!」
「とーりかーじ、野郎ども、奴らをゼリテーヌの市街地に入れてやるなよ!」
その飛行船は爆弾を抱える飛行船の背後に回り、機銃で撃墜することに成功した。もう一隻の飛行船は進路を変えて城の方面と戻って行く。それを追いに行ったため、爆撃は完全に止むことになった。
『総員前へ!』
再びロドメリア騎士団と栄光ある自由の守護者達、蜂起軍とミッシュ隊が進撃を開始する。ゼリテーヌの市街地の隣町程の距離を歩み、敵の最後の防衛線に到着した。堅牢な砦が行く手を阻み、大砲の砲撃の雨によって中々攻略が進まなかった。
『ティア・ボン、デファーンス』!
「銃撃戦では勝ってるはずなのに、敵が中からうようよと……」
「アスカリーは十分頑張ってる、こっちの火力が足りないけど、防護の支援魔法じゃないと被害者が増えてしまうし……」
「おい、守ってばっかだなんて本気出してんのかよ」
「うっさいわね、どうせ剣技しかできないロドメリア騎士団がほざくな!」
「は?こっちも銃撃して加勢してあげてるんだが?」
「はいはい、お二人さん喧嘩はやめて頂戴」
マリーが二人の肩を叩き、その間を縫ってマリーとエリゼが前面に出ていく。その光景は四部隊の攻撃する手を止め、敵の集中砲火をマリー達が引き受けている光景だった。しかし、エリゼの防護魔法によって銃弾も爆発も弾かれている。
「流石エリゼ、大分上達したじゃない」
「えへへ、おかげさまです」
「じゃあ、邪魔な障害は消してしまいましょう」
『エテルネル・ソレイユ』
その大爆発によって一瞬にして防衛線に大きな穴が開く。全員が啞然としてマリーの様子を伺っていた。マリーはそんな視線をお構いなしに歩いて行く。抵抗が無い事から四部隊が一気にその崩壊した前線に突撃を開始する。
『クラージュ、アクセラシオン』!
ルイーゼの旗を先頭に全員がそれに続く。もはやミダル派の軍隊では手に負えない進撃であった。敵の軍隊は所々で解散、殲滅、逃亡し、ようやく巨大な城を包囲することに成功した。
「ロドメリア騎士団は西から、栄光ある自由の守護者達は東から、ミッシュ隊と蜂起軍は南から。我々は北から攻略を開始しよう。散開!」
ヌビアの命令によって攻城戦が開始された。堅牢な城は魔法攻撃の殆どを無効化し、鹵獲した大砲をもってしても被害を与えることは難しかった。千々波は一人嫌な予感を隠せずにその城を睨みつけていた。
「千々波、どうしたの……そんなに汗をかいて……」
「……中に居るのは、とんでもない怪物ですよ……」
「どうゆう事だ?」
「梔子姫さんが不死鳥になる時、負のエネルギーの話はしましたよね……」
「あー、してた気がするようなァ……」
「あの時の何百倍ですよ……、中に居るのは…、不死鳥以上の……」
「え……?」
すると花蓮達の目の前に大きな門が現れる。音もなく扉が開き、その扉は鏡のように花蓮達の姿を映し出している。だが、普通の鏡と違うのは鏡に映った彼らの肌は投射されていないという点。鏡には風景と服、武器しか映っていなかった。
「こ、これは……」
「多分城の中に繋がっています、この先に強いエネルギーが……」
「そんじゃ行くか」
「え、軽すぎない……?」
「なんだ、行かないのか?」
「そうじゃないけどさ……」
「行くしかないがやき、行くぞぉ!」
そう言って武田は赤城を掴んでその扉の中に入っていった。花蓮と梔子姫は啞然として顔を見わせる。その隙にマリー達が入っていく。
「じゃ、先に行ってるわね」
「みんな軽いなぁ……」
「僕も行きますから、一緒に入りましょう」
糀谷が全員の背中を支えながらその門をくぐる。ヌビアも意を決して入る。全員が入ったところで足を入れて潜入した。
彼らの目の前に広がった空間は長い橋の先にある大きな円形状の闘技場のような空間。円形状の舞台の周りは奈落が続き、城の石垣が壁として存在していた。
柱のないこの空間に一同は困惑した。その円形状の舞台に全員が登ったと同時に目の前の玉座に仮面を被り、全身が黄金に身を包んだ人間が座り込んだ事を視認する。
「———よく来たな諸君。我が名はセクメル。この国の大王であり、黄金の化身である」
「……セクメル」
セクメルは右手を横に伸ばすと四角い大きな檻と、そこには腰を掛ける人間を同時に出現させる。もちろん檻の中には莽薙が転がっている。
「ナギ君!?」
「ええ、莽薙君は昨日まで会話できていたのですが、今日はもう衰弱しきっていますね。無理もないです。本来なら死んでいるのですからね……」
「アルドナート……」
「彼が……!?」
アルドナートは檻の上に立ち、全員に向かって浅く会釈する。そして笑顔で胸に手を当てて誇らしげに自己紹介をする。
「秘密結社リコラッタ。その幹部が一人、トーノ・アルドナートと申します。新教王朝、ローシャング、イーサンド・ルイスでは弊社がお世話になりました。」
「リコラッタ……!!」
後ろからジェットとセイビア、ルイーゼ、アスカリーが登場する。ジェットとセイビアは愕然としながら、ルイーゼは怒りの表情で見ている。
「いや~、私も人気者ですね。数々の国の裏側に潜入していたおかげですかね……?」
アルドナートは啞然とした感情が渦巻いて誕生した静寂の中で、檻の上からセクメルの横に飛び降りて話を続ける。




