第二話 黄金の坑道
↑作戦図
「……金鉱には着いたけどさ、どういう口実で中に入るわけ?」
「異邦人じゃ門前払いだもんな……」
「ほな正面バーッと」
「あんたは黙ってて!」
ガッハ!!
花蓮は正面に走って向かおうとする武田に痛烈なラリアットを首に食らわす。この状況を見た赤城も流石に肝が冷えた。武田は首を抑えながら倒れている。
「どうやって侵入しよう、強制労働とは言え兵士達でしょ…」
「俺にあまり作戦を求めない方がいいぞ。武芸の事しか考えられないからな」
「……普段どんな頭の使い方しているのよ」
「シミュレーション。どんな戦闘でも、どんな状況でも、どんな武器でも戦えるようにいつもイメージトレーニングをしているんだ。負けることもあるし、勝つこともある。」
「私今始めて貴方を軽蔑したわ……」
「好きにしてくれ、俺でも普通ではないと思っている。」
そこでじっくりと花蓮は考えることにした。武田は花蓮を恐れて何も言わず、赤城はずっと遠くの景色を眺めていた。そしてついに花蓮がある提案を思いつく。
「提案なんだけどさ……」
「ひぃ、あんた恐ろしゅうてたまらんにゃぁ…」
「俺は別に構わん」
「赤城が良いなら大丈夫ね」
「わしはぁ!?」
花蓮達は堂々と正面に現れる。花蓮は労働者を監視する監視員の制服を身にまとい、半裸の赤城と半蔵を連れている。
「どういうご用件だ」
「こいつらゼリテーヌで暴れやがった異邦人だ。ここで労働させるように言われた」
「……誰の命令だ?」
奪った監視員の制服に入っていた手帳に監査員の長の名前が書いていた。確かいろいろな役職を兼任していたよな。名前は——。
「セトリムさんですね」
「直々の命令か。では監視員手帳の提出を。」
花蓮は恐る恐る手帳を提出する。しかし、相手の監視員は驚愕する。その手帳の一番重要な身分証明の上半分が破り捨てられているからだ。下半分はほとんどが全員同じような情報ばかりで、とても個人が特定できそうになかった。
「な、なんだこの手帳はぁ…!?」
「……こいつらを捕縛する時に抵抗にあいまして。上は戦時中の為、そう早く代替が作れないとの事でしてね。破れ方も自然だと思いますが——」
「……そうか、だが身分を確認できない以上、中に入れる事はできない。」
「私の信頼と昇進がかかっているのです、そこをどうにかできませんか!?」
「では、その異邦人は我々がお預かりします。氏名を教えていただければ、セトリム様にもちゃんと報告いたします」
「異邦人の扱いを完全に委任されている。それこそセトリム様の機嫌を損ねます…!」
監視員はため息をつく。周りの監視員も少し騒ぎになってしまったため、こちらに痛々しい視線を向けている。早くしなければならないのは必至だろう。花蓮は意を決した。
「失礼ながら……あなたのお名前は?」
「……監視員門番、ムアーウィヤだ。」
花蓮は妖艶な目つきをしながら、口の横に大きく手を広げる。ムアーウィヤは一歩後退するが、花蓮はもっと詰めていく。
「ムアーウィヤさん……、よく見たら…カッコイイですねぇ…」
「…いや、私は任務を遂行しているだけでして……」
「私、悪い事しませんよぉ~。逆に、私と後で『イイコト』、しませんかぁ~?」
「そ、そんな、そんな手には乗らないぞ…‼」
花蓮はもっと詰め寄る。ムアーウィヤは汗をかいてもう下がる事は敵わない。
「ヒヒヒッ、でもぉ…期待してるんでしょぉ~?このエロ男めっ」
「…ッ!?」
「私はセトリム様の役に立てるし、貴方は『イイコト』できるじゃないですかぁ~。いい取引じゃないですかぁ~?」
結局ムアーウィヤは折れてしまった。しかし、折れたら折れたで上機嫌に自分の勤務時間と勤務箇所を伝え、その場で強引に約束を取り付けるという用意周到ぶりを見せた。画して花蓮達は金鉱に入る事に成功した。
「……お前、いつからあんな色仕掛けを覚えたんだ?」
「ローシャングでネクサさんに情報を引き出す手段で教えてもらった~。『男で相手に敵意がないときにしか使えないけど強力だよ~』って」
「まさかお前……!?」
「色仕掛けをしたのは初めてよ!私だってあんな男にやりたくないっての……」
それにしても花蓮の隠れた側面を多く見て赤城は混乱する一方だった。まさかここまで色々と上手になっているとは、いいのか悪いのか——。
「あいつには内緒にしてやるから……もうやらないでくれ」
「言われなくてもやらないわよ、私には意中に決めた相手がいるんだから…」
「え?」
「…ぎゃ、ぎょえぇぇぇぇぇええええ!?!?」
グッホ…!!
花蓮は何故か武田の腹に右ストレートをぶちかます。武田は膝から崩れ落ち、地面を見つめている。花蓮はその拳を赤城に向ける。
「い、今の忘れて!」
「お、え、ああ、うん、勿論だ」
「な、なぜわしがぁ……!」
そのまま坑道内の交通手段であるトロッコに乗り込む。そこから数分経つといよいよ日光が届かない地下空間に到着した。日光の代わりに光源が照らす閉鎖的な空間は、呼吸のやり辛さに拍車をかけている。
「ここで監査員をもう二人襲いたかったが、二人は難しそうだな。」
「……ええ、そうね」
見た感じでは監視員は互いに監視できるようにしながら、労働を監視できる立ち位置を固定していた。一つ一つの坑道にも一定の距離間で配置されている。花蓮のように変装することは不可能なのだろう。
「……これは一回強制労働してもらう事になるかも」
「俺は構わない。だが、お前が一人になってしまうな」
「この状況で私が何とかしないとだめでしょ、絶対助けるから待ってて!」
「わしらがここで仲間を作れっちゅう話やろ?」
「名案ね、武田にしてはいい案じゃない」
「シッシッシィ…せやろ」
「ひとまずあなた達を部屋にぶち込んで、私は監視員の内情を探りつつ、あなた達を救い出す裏ルートも探し出す。貴方達は坑道内の兵士を反政府という事で一致団結させる。そう言う方針にしましょう」
そう言って花蓮は空いている部屋、少しでも良質な部屋を探して坑道内を探す。結局セトリム様の免罪符と異邦人と言う特殊な立場を駆使して豪華な部屋を要求することに成功した。赤城と武田の処遇はその最中に三ヶ月と勝手に決められた。
「では、大人しくしておくように」
「ああ、」
結局このまま二人は部屋に入れられ、内側では勝手に開かないような仕組みになっている。豪華な部屋と言うからどのような部屋かと思えば、ベッドが二つとトイレが一つ。外が望める鉄格子が窓代わりに設置されているだけで、豪華とは当然言えない代物だった
「明日からどうしようか……」
「嘆いても変わらんき、ゆっくり明日を待ちよーや」
「それもそうか。そういえばお前、武器どうした?」
「……取り上げられたが?」
赤城は額を抑える。赤城は出現術を使用して刀を取り出す。それを武田に見せると驚愕する。
「……おんし、そりゃあ…」
「まさか、忘れてて、素直に渡したのか!?」
武田は絶望してそのままベッドに潜り込んだ。赤城もそれを見て何もできない現状を客観視してため息をついた。




