第四十五話 順風満帆
思ったよりも長く滞在して、途中で業務を持ってこさせてしまったソフィアはここでお別れとなった。ソフィアは帰国までの時間はベランダで空を眺めながら紅茶を嗜んでいた。
「……ローシャングの紅茶も中々行けるわね」
「ソフィア、準備できたよ!」
「オッケー、これ吞み終わったら行くわ~」
ソフィアは今まで起きたことに思いを馳せながら残った紅茶の中を覗き込む。
「あの子達ともお別れか……。もうすっかり馴染んでしまったわね。」
まさか棺桶の蓋を開けるというの一つの行動が歯車を伝って、ここまで大きな運命をもたらすとは誰も思わなかった。不思議な物だ。そのすべてを飲み込み、席を立つ。
「もう、行かなきゃ…」
ソフィアはその足取りで乗ってきた飛行船へと向かう。そこにはロメリアはもちろん、莽薙達も居た。
「……ソフィア、じゃあね」
「ええ、今度は貴方の所に行くわね。私ったら旅と言う物に味を占めてしまったわ。これ、いい趣味ね。」
「…そうだね、ソフィアの旅の幸運を願うよ」
「ありがとうね、ほんと」
「私もソフィアと一緒に莽薙の所に行く‼」
「え、別に貴方呼んでないけど…」
「そんなぁ、薄情なぁ…」
「噓よ」
「やったぁー‼」
三人は微笑みが終始絶えなかった。風の勢いがさらに増し、いよいよ飛行船が飛び立つ。
「……ロメリア」
「ん?」
「……大丈夫だとは思うけど、しっかりね」
「オッケーだよ、まっかせて‼」
ソフィアは安心したように飛行船に乗り込み、飛行船は空高くへと上昇した。飛行船が背景と化すまで飛行船に向かって手を振り続けた。
「……で、次はあなた達の番だけど、いつ、どこに行くかは決まってるの?」
「……いや、全く。逆にどこがいいと思う?」
「不死鳥関連で東に向かうのかぁ…、難しいなぁ……」
「あの、私の事忘れてません?」
そのロメリアと莽薙の間に千々波が割り込んでくる。ひょこっと覗かせた白いベレー帽が視界の下に映る。
「あ、ごめん。元気だからてっきり…」
「病気か不明な物も直すとなると……パラミダスかな、いや、あそこは危ないよなぁ。でもあのルートを使えば‼」
「…???」
そう言ってロメリアは部屋に戻って行った。莽薙達もそれに続くと、ロメリアは自分の執務室で大きく地図を広げた。そして堂々と指をさす。
「ここがパラミダス。今は内戦状態なんだけど、このゼリテーヌ地方では戦闘は起きてなくて安全だし、頭がいい人もいるから力になると思うな。」
「げ、また戦地かよ」
「まぁ、赤城がいれば何とかなるでしょ」
「そうですね、いざとなれば身代わりとして——」
「お前たちを斬ってやろうか……?」
「いいですよ、ハナミとナギ君以外はノーダメです」
「いや、私も痛いのは嫌なんだけど…」
「じゃあ憑依物にも痛みがあるか、じっくり検証してみるか…」
「ひぃ、こ、怖い人は嫌いですぅ、べ~」
全員が和やかな雰囲気になる。千々波のいるムードがこんなにも楽しいとは、数日居なくなっただけで少し懐かしい。それに今千々波が花蓮の所へ逃げているように、花蓮の妹のような性質のある千々波によって、花蓮の積極性がセーブされるのも、まぁ、うん、嬉しいかも。
「じゃあ、決まりね。こっちで手配しておく」
「ありがとう。じゃあそれまでゆっくりしておこうか」
と言ってもそこまでゆっくりできたわけではない。翌日にはロメリアは飛行船を手配してくれ、ゼリテーヌへの風も順風満帆。何不自由なく行けると言う事だった。
ただ、花蓮が寝坊した上に、向こうに到着するのが深夜になりそうだったので、ロドメリアを夜に出ることにした。
夜は騎士団のみんなと晩餐会を催した。以外にもソーレンは酒に弱いらしく、終始酒には手を付けなった。
「いやーそれにしても君たちは若いのによくやるよね」
「いえいえ、そんなことないですよ」
「いやだって、俺が君ぐらいの時は親を泣かせてばっかだったよ」
「まぁ、捉え方によっては、立派な親孝行じゃないですか?」
「ったく、高貴な存在ってちげーな。器の広さもポジティブ思考も素晴らしい」
ジェットは酒を飲みながら、莽薙をそうやって褒め称える。アクセルはそれを聞いて頷いている。団長は大分酒臭くなって、完全に完成している。
「……あそこで女子会してるじゃん、なんか女子の世界ってのも気になるよな。セイジとかどうなんだ?」
「え、僕ですか?」
「ああ、騎士団の中で男女ペアなのはお前の所の隊だけだからな」
「うーん、そうですねぇ…」
男の視線が一極集中する中で、セイジはずっと悩んでいた。
「あれが女子の世界なら、あんまり男性と変わらないかもしれませんね。社会構造が違うだけで」
「その社会構造が知りたいんだよ、どうなんだ?」
「ん…、いつも的確な命令を出してくれますし、ほんと理想の上司だと思います」
ジェットはセイジに聞いたことを後悔した。彼はバカ真面目すぎる。なので今度は莽薙に視線を移す。
「じゃあ次は莽薙君に聞いてみたいな」
「ぼへぅ!?」
「花蓮ちゃんとか、梔子姫ちゃんとか、どうなのさ……」
「えっ…えぇ……」
莽薙は視界を広げて助けを呼べる人物を探す。赤城はソーレンとしっぽり吞んでいる。女性陣は女性陣で楽しんでいる。助け船が来ない。
「まぁ、信頼できる親友って感じですよ。そう言うジェットさんは、騎士団の中に好きな相手とかいないんですか?」
「うぇ、おれぇ……」
見るからにというか、これまでの言動を見るに完全にこのジェット……酔っている。いや、話をするたびに酔いが回ってないか?
「俺はぁ……仕事場に、恋人は作らねぇ…」
「強いて言えばですよ」
ジェットに追撃する。酔っ払いの接待料とさっきのお返しだ。絶対にそれだけは吐かせて帰る。
「ん……言うなよぉ…」
「ええ、言いません」
「俺はねぇ……やっぱりネクサかなぁ…。付き合いも長いし、いっつも支えてくれる。何かきっかけがあれば恋人になりてぇな」
「へぇ…そうなんですね…」
しっかり思ってんじゃねえか。何が「仕事場に恋人を作らない」だ。さっさと幸せになりやがれ。
そう思っていると、アクセルが席を立った。その事にも気づかずにジェットは話を続ける。
「やっぱ容姿も端麗だよねぇ、あんなに綺麗だとね、あれをしたくなってくるよね」
ジェットはそのまま機関車のようなジェスチャーをする。
「ジェットだけにジェットピストンでバンバンってよぉ、へへへ」
「……あのぉ、後ろ」
「え?」
ジェットが後ろを見ると、そこにはアクセルとネクサが立っていた。ネクサは今にも泣きだしそうなくらいに恥ずかしさを堪えている。
「団長が『きっかけが欲しい』と言ってたので連れてきましたぁ」
アクセル、それはアクセルの踏みすぎだ。ひき逃げもいい所。オーバーランかつオーバーキルだよ。
「……あ、あはっ、こ、このネタは女子ウケには悪くてなぁ……」
「…団長、来てください。話があります」
無事に団長は回収されていった。ジェットが居なくなった席は流石に静まり返っていた。
「いや、莽薙さんが困ってらしたので、旅に悪影響があるといけないので…」
「え、あ、ありがとう」
この人、できる部下だ。これはありがたい。流石にタイミングは最悪だったが。まあ、千々波がよく言う『天誅』だな。
ようやく出立の準備が整い、夜もすがらお別れの時間がやってきた。ジェットは少し顔の様子がおかしいが、賑わう騎士団とロメリアがお迎えに来てくれた。
「遠くに行っても、うまくやるんだよ」
「そっちも、これからも大変だろうから頑張って」
「死ぬよりマシな現実をぶっ壊すわ、あなた達のためにもね」
梔子姫と花蓮は大きく微笑んで感謝を述べた。
「そうだね、君達が生きていて楽しいと思えるようなユートピアを目指すよ」
この莽薙の決意表明にも大きく頷いて感謝を述べた。
「私たちがタービンとして歯車を回し続ければきっと来るはずよ。だってユートピアは必ずこの先にあるんから!」
「うん、僕もそう思う。なんたってね、」
『ロメリアの技術力は世界一なんだから‼』
夢を実現する道具と材料はきっとここにある。今は無くてもそれを実現できる未来はきっと来る。諦めず自分の意志で運命の針を回せば必ず。それを一番に感じた都市だった。
「じゃあ、少し先の近未来で待ってるからね」
「ああ、すぐに追いつくよ」
そう言って星が降る夜に出立する。ロドメリアの明かりも遠きくなるにつれて星のように輝く。それを反射する海もまた美しい。
「さて、新しく入った梔子姫ちゃんの特異体質を元に、新しい技術でも作りますかー。ランドもそれを望んでるなら尚更ねー、どれどれ……」
ロメリアは見送った後、宮殿に戻りながら梔子姫と不死鳥の研究資料を出現させ、それを眺めていた。しかし、見覚えのない付箋が貼られている。そこには——。
『私達にとても似ているわね』
ロメリアはそれを見て、梔子姫の結論を塗り替えるに至った。断定には早いが、彼女に伝えるには遅かった。
「なーんだ、なら彼女は普通の人間ね。」
莽薙達とロメリアは、遠くに鳴るロドメリア時計塔の鐘が逞しく鳴るのを最後に、ロドメリアを見るのをやめた。次の旅への希望と思い出で、すでに胸の中がいっぱいだからだ。
決して誰も振り向いたりはしない。ユートピアは後ろにはないから——。
ロメリア・スチーム編 終
※ロメリアスチーム編 ロメリア イラスト(納得いかない出来。写真も良くない。ごめんなさい。)
読んでいただきありがとうございます‼
いかがでしたか、世界の一歩先を行く未来のロメリアスチーム編!
もしよかったら、YouTubeの方でローシャング王国のオーケストラなどの音楽も出てますので、ぜひそちらを聞いてみてもいいかもしれません‼
正直この話は雰囲気はサイコーなんですよね、マジで雰囲気だけで酔える‼ジェットピスt…(※魔導妨害確認。現在表示できません。)
※ロメリアさんよりコメント
「夢は思ってるだけじゃ叶わない。やっぱり形にしてやっと未来にできる。そしてローシャング王国の未来は次の話の国とは違って明るい(ブラックジョーク)!ロメリアの技術力は世界一なんだから!」
では、次の(※魔導妨害確認。現在表示できません。)会いましょう!




