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僕らの愛しきユートピア  作者: モッツァレラ
ロメリアスチーム編
32/40

第三十二話 この世界の真理

「さてと、正直説明するのが長くて面倒くさいけども、始めますか。この世界の分かっている事実、全てを使って不死鳥について求めていこう」

 髪の毛をクルクルしながら頭の中で自身の考えとこれまでの研究を纏めている。

「えっと、記述が少ない不死鳥についてと、守護神獣の暴走かぁ…」

 何もない場所から出した資料とは別に違う資料を出現させる。

「……貴方、この世界に生を受けてから最古の記憶は?」

「高天河原の洞窟の中かな。」

「この中で覚えている風景は?」

 ロメリアは田園風景や雪原などの写真を梔子姫に見せる。

「……ないわ」

「そう——ありがとう」

 ロメリアは椅子に座ってペンを走らせて、筆記体のような文字を白紙の設計図に連ねる。資料を取り出し、見ては資料を消してペンを走らせる。あっという間に表面を文字と記号で埋め尽くす。そのまま二枚目の途中に差し掛かった所で

「……体の痛みはあるのよね?」

「ええ、ソフィアを復活させたときに——」

「え、復活させたの!?」

 ロメリアはペンを放り投げて梔子姫へ近づく。そして梔子姫の手を取ってまじまじと瞳孔を見つめた。ロメリアの目はかなり輝いている。

「どうやって、やったの?その時の様子は?どうやって?ソフィアも身体検査さえて頂戴、そもそもその情報はどこで手に入れたの!?まじで奇跡じゃ…」

ゴツン

「まずは不死鳥についてでしょ、それは後で」

「……ハィ…」

 ロメリアは頭を押さえながら席に戻って行く。

「(※以下ロメリアの独り言)えーっと、本人は記憶が最近の物で終わっている。自分の母親も父親も知らない。子供姿も自分で確認していない。五百年前に伝説があったとは言え、記憶を持っていないのは謎。過去の出現地の景色も見覚えがない。この情報だけだとただの不死鳥を自称する記憶喪失の変人。だけどソフィアを復活させ、莽薙君達がその能力を認める程の事象が彼女には起きている。不死鳥かは定かではないが、それに類する能力である事。そもそも傷口がすぐに塞がるって言うのは近代医療であっても難しい。ロドメチルかやはり守護神獣の類が関与しているのかもしれない。そもそも彼女がこの世界に生まれた根拠は?そう言えばこれに類するような考え方があったような——」

 ロメリアは紙の束を出現させ、それをペラペラと捲る。そして一つのページを凝視しはじめた途端にロメリアは一つの結論に行きつく。

「……あなた達、『世界五分前仮説』って知ってる?」

 勿論莽薙達は知りえない仮説。だが、ここにはもう一人叡智の頭脳を持つものが居る。

「世界が実際には五分前に、現在の状態のまま突然創造されたって言う仮説よね。『今』を観察、実証できないから論理的に反論ができない。科学を持っても証明できないから『科学は過去に依存している』とも言えるわね」

「さすがソフィア、そこも履修してるのね‼」

 ロメリアはペンと紙を消して、シルクハットを整える。

「以下は私の仮説なんだけど——」

「……」


「貴方は人間という生物ではない」


「…どうゆう事です?」

「記憶を持っていないのに、各地で不死鳥の伝説がある。そして異次元の再生力と蘇生術。言うなれば『守護神獣の人間化』とも呼べるかも」

「私そのものが……不死鳥…?」

「そう、貴方は不死鳥の卵、不死鳥が復活する時だけ肉体の操作権を変換するって感じ」

 意味が分からない。いや、意味は分かるが「飲み込めない」の方が正しいだろうか。ロメリアは咳払いをして話を続ける。

「……もう一つの仮説もある。これは完全に『世界五分前仮説』と同じような物」

「……」

「梔子姫と不死鳥という存在は元々この世界に存在しなかったという仮説」

「そんなことないでしょ、一体全体どうやって」

 ロメリアは本を取り出す。多数の付箋を貼ったページの中で該当する場所を開け、中身を一読する。そのまま考えを纏める為に目を瞑り、そのまま口を動かす。

「私達の世代は知らないかもしれないけど、私達の親や祖父母の代には『守護神獣』なんて存在しなかった。現れた事も極めて最近の事なの。さっきも言ったようにロドメチルとも関係があるならそれは確か。だってロドメチルを発見したのも私だし。この不死鳥の存在を証明する歴史もロドメチルによる虚偽の産物ってこともあり得る。」

 一同誰も言葉を発さず、複数の歯車の音が室内に響き渡る。

「とにかく、彼女は普通ではない。この世界も普通じゃない。今私たちが居るこの世界は偶然できた環境で特異な物。原因はわからないけど、そう考えた方が無難よ」

「……そっかぁ~…私、やっぱり普通じゃないんだ…」

「ナッシー……」

「……ちょっと外の空気を吸ってくる」

 そう言って梔子姫は俯きながら外へと駆け足で向かった。追いかけようと莽薙が動いたが、赤城が首を振って制止する。

「酷な話よね。私も命の恩人として彼女には同情するけど、彼女は今一人になりたいと思うわ。そっとしてあげなさい。」

「……あ、あくまで仮説だし、未来を変えるのは彼女次第だから…。それに認知症のだけかもしれない。それはそれで傷は再生できるのに、何故記憶の再生ができないのかは謎だから可能性は低いかも。原因も、守護神獣が人間を乗っ取る能力も、何にしろ彼女自身についても分からない。今はまだ答を出せる段階ではないという事。」

 ロメリアはソフィアと共にその考察を審議して新たな紙に書き始めた。その間に莽薙達は研究所内を探索することができた。あまり不用意には触るなと言われていたので、見学だけする事にした。

 今いる研究所の奥にもう一つ部屋が存在する。その部屋の中には発明した数々の製品が並んでいる。

「ハイパースコープ、空中歩行機、自立型運搬機、アクション・アーマー、噴射型蒸気殺菌機…。名前だけでも使用用途が意外と分かりやすいな。」

「ナギ君、この石さ……」

「ん…?」

 そこにはオパールのような虹色の勾玉が置いてある。その輝きがこの石から発せられているのは言うまでもない。ほのかに周囲が白く見え、内に秘めた虹色が視界に入ってくる。

「……これさ、尚志王のお母さんが付けてなかった?」

 確かに尚志王が母親から奪っていたものと似ている。そう言えば、あの石を持っていた尚志王の母は非能力者の割にはとても強力な技を出し、身体能力も見かけよりも随分と高かった。これが起因しているのだろうか……?

「それはさっき言った『ロドメチル』に関係してるよ‼」

「うわっ、びっくりした…」

「この勾玉はね、ロドメチルを放出しててさぁ、『創造力』『強い感情』が無くても大きなエネルギーを生み出すことができる不思議な石なんだよねぇ~。不思議でしょ?」

 落ち着きがなく、そわそわしながらロメリアは話しかけてきている。このままこの石の詳細を聞いたら自分は飢死か情報過多による脳のオーバーヒートで倒れることは容易に想像できた。なので話題を逸らす事にした。

「……ソフィアとの話は終わったの?」

「まあ纏めながらソフィアの見解を聞くだけだったからすぐ終わったよ!でね、これは…」

 ロメリアは軌道修正を惜しまない。ここまで来て「聞きたくない」なんて言えない。

「……あ、赤城は何処に…?」

「ああ、赤城君は梔子姫を探しに外に出たけど——」

「じゃ、じゃあ僕も探して——」

コンコン

「すみません、陛下、少しお話が」

「入っていいわよ」

 開いた扉と共に入って来たのは、ロドメリア騎士団団長のジェットと、騎士団の参謀であるネクサ。二人はロメリアと莽薙、そしてソフィアを視界に納めて驚いた。だが、何も言わずにロメリアに報告する。

「……再びロドメリアで暗殺事件が発生しました。やはり犯人はまだ見つかっておらず、騎士団として面目がありません」

「そう……、あなた達でも犯人が見つけられないなら仕方ないわよね」

「引き続き調査は続けますが、危険なのは変わりません。陛下並びに国賓の皆様には申し訳ないのですが、今日、明日の外出を慎んで頂きたいのですが——」

「まぁ、しょうがないわよねぇ…、みんな申し訳ないけどそれでいい?」

「騎士団としても皆様の安全を考えた決断であります。どうかご理解を。」

 騎士団は全員の様子を伺う。折角来た時にこうなってしまうのはとても残念だが、自分の命には代えられない。全員承諾した。騎士団はお礼を述べると、足早に外へと引き返して行った。

「…じゃあ、王宮に戻って……何かしましょ!」

 そこでみんなで梔子姫と赤城を探しに出ることにした。しかし、二人が中々見つからない。

その日、梔子姫と赤城は帰ってくることは無かった。


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