第二十七話 再会
あれから約一週間毎日頻繫に部屋に入っては確認する日々が続いた。雨の時も晴れの時も様子を見て部屋を掃除、頃合いを見て女性陣がソフィアの体を拭く。千々波は朝昼晩の三回「溶礼道秘伝千々波特製回復薬」を飲ませる。そろそろこの飲み物にも名前を付けたくなった。
ある日ふと感じた。脈拍がある。生きてはいる。だが脳は機能しているのだろうか。叡知の結晶である彼女の脳が二度と動かないというほど惨い話は無い。永遠に起きない事があれば、僕たちはどうするべきなのだろうか。梔子姫も初めての体験だった訳だし、その形が失敗であっても当然であるし咎められない。いや、どうするべきかは決まっている。できるだけ長く寄り添ってあげれば良いだけだ。
「……私の手のひらを枕に寝るなんて……いい趣味ね」
ここ最近ソフィアが夢にまで出てくる。呪いか何かだろう。だが、どのソフィアも勤勉で冷静で淑やか。自分の努力を隠して平静を装ってじっと見定める。まるでフクロウだ。
「……自分でもそう自負しているよ」
半目で笑顔を向ける彼女はその内に秘めた猛々しさこそ外に出ないが、いつもと変わらぬ振る舞いをする。
「……ほんと、貴方は『優しさ』っていう、いい趣味を持っているわ」
「…それは君もそうだろう?」
静寂と共に二人だけの部屋にお互いの笑顔が咲く。
「おはよう、ソフィア」
「…ええ、おはよう」
扉が開いて出てきたのは同じく白髪の幼女。
「ナギ君、お昼の支度できましたよー、この『溶礼道秘伝千々波特製……』」
千々波が一時停止し、乳瓢を床に落とす。
「起きてるじゃないですかああああぁぁぁ‼」
怪物を見たかのように千々波はドアを叩き開け、階段を駆け下りる。一瞬で全員が部屋へとなだれ込む。
「い、生きてる……ソフィアが生きてる…」
「……そりゃ生きているわよ、反応もわかるけど…」
「…失敗したかと思ったぁ……良かったぁ…」
梔子姫は膝から崩れ落ちる。
「かなりボロボロだったと思うけど、よくできたわね。感謝しているわ」
ソフィアに笑顔で対応する。そこに赤城が睨みを利かせて言う。
「…あんまり思い出したくないだろうが、お前を襲った奴はどんな奴なんだ?」
ソフィアは額を抑えて思い出そうとする。
「…初めて見る人だった。恐らくレアンダムの人物でしょうね、私の身に着けていた『ロマの剣』を盗まれた」
「え、それって本物…?」
「…相手の攻撃を避けられるから、私が持っていた方が楽かなって…。まさか自宅で奇襲に会うとはね……。私の配慮不足だわ…」
「『油断は命取り』…だな」
「全くその通り…自分で言っておきながらその術中にはまるとは、合わせる顔もないわね。」
結局ソフィアの意向で襲撃犯は探さない方針になった。勿論それに多くの時間を割かないと言う意味であって、彼を許したというわけではない。それよりも重要な事があるからだ。




