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僕らの愛しきユートピア  作者: モッツァレラ
第一章 玉将の王政編
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第十四話 獅子の如く

 それほど長い月日は流れていない。それほどまでに吸収が早いのか、仲山王の教え方が達者なのか、或いはどちらもか。どちらにしろ、仲山王に認めてもらえる程に上達したのだ。


「みんなここに来たよりもいい顔をしている」

「そうですかね、みんなに会えたのが嬉しいけだと思います!」

「いや、でもかなり腕は上がった方じゃない?」

「私は数週間病んでたけどね……」

「皆さん元気でいいですね‼祝杯でもあげましょうよ‼」

「いや、それよりも仲山王がここに呼んだ理由が気になる」


 彼らが居たのは森林に包まれた円形の石の広場の上。何もないような開けた土地で、屋敷からも随分遠くへと足を運んだ。と言うよりも天馬が運んだ。海はきれいな神琉王朝。その色は氷のように冷たく見え鳥肌が立つ。そんな海に囲まれた孤島に仲山王と僕たちは着陸した。


「ここは玲嵐島れいらんとう。一応私の支配が届く最西端だ。」


 雲行きも風で揺らぐ木々の動きも怪しく、風も海が近いのか強く感じる。


「承知かもしれないですが、半月で実力が身につくとは思えません。ですから、最後に私と決闘してもらおうと思います」


 皆が驚愕する。それは身についた物を確認するという事ではなく、仲山王が決闘できるという事が衝撃的だった。そんな表情を見て仲山王は呆れる。


「舐められたものだな。戦えなければ王にもなってないし、君たちに指導していなかったよ」


 逆にそう言われて啞然とする。だとしてもどうやって戦うのだろうか……。


「……まあ、相手がそう言うならいいんじゃないか?」


 赤城が無惨にもそう言い、仲山王も頷いて答える。その様子を見て莽薙達も渋々同意せざるを得なかった。


「じゃあ頑張ってね」


 仲山王が天馬に号令をかけると、天馬の羽が優しく仲山王を包み込む。青白いオーラと共に包み込まれた天馬と仲山王は、次第にひざまずいた人の形へと変貌していく。やがて勢いのある疾風が吹き荒れ、海風を押し返して木々を揺らす。やがて覆っていた青白いオーラは人影の後ろに集結し、神琉王朝の家紋をあしらって消えていく。


 やがて人影は晴れて、青白い衣装に青龍刀を持った男が現れた。冠とオーラはより偉大に、容姿と垂れた髪はより美しくなっている。


「じゃーん、神琉王朝の本気だよ」

「いや、だ、誰ですか」

「僕だ、仲山王。天馬の力を使ったのさ。守護神獣との融合。不死鳥と同じ原理さ」


 仲山王は刀を回転させながら肩へ運び、偉そうに左手で手招きをする。


「僕はいつでもいいよ、一発でも僕に入れられたら合格にしよう」


 やがて海風すら止み、固唾をのみむ。左足を引いて戦闘の準備を行う。一番に飛び出したのは赤城だった。いつもの怒涛の連撃を仲山王に浴びせる。修行の成果が出ているのか威力も普段見ている物とは段違い。お互い余裕の笑みを浮かべている


「じゃあ私も行ってきまーす!」


 千々波は仲山王に向かって行きながら、自身の溶礼術で突くことに特化した剣であるレイピアを生成。そのままの勢いで仲山王に刺突。しかし、赤城の攻撃と共に流される。


「やるね、跳躍力も上がっている。軽い君に合った武器だ。」

「えへへ」

「『えへへ』じゃないでしょ、戦闘中よ?」


 梔子姫がそう言いながら前に出る。


「私あの人には許せない事情があるから、申し訳ないけど——。」


 梔子姫は他人には見せない般若を見せて歩みを続ける。手のひらに持った炎を怒りに任せて握りつぶす。全身が炎に覆われ囂々《ごうごう》と燃える。炎が開いた所であの時のように大太刀を下げて漆黒の翼を広げた梔子姫が現れた。彼女が目を覚ますと飛翔して、重い大太刀を一気に振りかぶる。


「——あなたを殺すから」

「え、ふ、不死鳥!?」

夢幻不死煉獄むげんふしれんごく


 赤い業火を纏う斬撃が仲山王へと飛来する。赤城は避けて仲山王に命中。辺りは油に引火したように燃え広がって、消えていない赤い業火に包まれる。


「危ないな、やるなら俺にも一声かけろ」

「赤城ならわかると思ってね」


 どうやら不死鳥に理性を奪われている訳ではないらしい。これは梔子姫にとって大きな変化であっただろう。だが、これで終わらなかった。


「……生憎、空を飛べるのは君だけではない」


 仲山王は天馬の翼で攻撃を守っていた。そのまま翼を風に乗せて飛翔。梔子姫が気づかぬ間に上から青龍刀が振り落とされる。


「クソ野郎がッ‼」


 その梔子姫の声と共に地面に強く打ち付けられて砂埃が舞う。梔子姫は額の傷を抑えながら炎で治癒を施す。だが、息切れがなかなか止まない様子だった。仲山王は再び地上に降りた。


「どうやら不死鳥を自らの体力で抑えながら戦闘しているみたいだね。そのままじゃ僕に痛烈な一撃は無理そうだ」


 赤城は気配を消して背後から切りかかる。赤城は空気抵抗を極力なくすために刀を足に添わせ、刀身が相手から見えにくい下段脇構えで仲山王へ向かう。


『赤城流・龍驤りゅうじょう斬り《ぎり》』


 仲山王が振り返った時には間合いがあった刀身が、仲山王が刀を上げる頃には既に首元まで刀身が届いていた。


「速いが、まだだ」


 仲山王は翼でその攻撃を受け、カウンターの準備をする。赤城もそれに気が付いて急いで刀身を引き戻す。


天馬光斬てんまこうざん


 鋭く輝く斬撃が赤城へと向けられる。赤城は避けられない斬撃と会ってしまった。赤城は歯を食いしばり、急所を守る体制を整えてその衝撃に備えた。


『古石落し』


 菊水が介入して「天馬光斬」を打ち落とす。これによって仲山王の斬撃も外れる事になる。


『夢幻不死煉獄』


 背後から立ち上がった梔子姫が決死の覚悟で斬撃を浴びせる。菊水は赤城と共に仲山王の目の前から撤退し、仲山王は翼で梔子姫の攻撃を守り抜く。


『明鏡止水』


 翼が「夢幻不死煉獄」を守り抜いている間に千々波がレイピアの刺突を連続で入れる。それを刀で仲山王は避け続ける。仲山王はその場所に固定させられる形になる。


「隙だ、ここしかない…」


 莽薙は刀身を頭上に持ち上げて剣先を天に向ける高波の構えをし、左足で地面を強く蹴とばす。空気抵抗を受けながら進む姿は奇しくも守護神獣の姿を彷彿とさせる。


獅子奮迅ししふんじん


 刀に炎を宿し、上から勢いよく振り付ける。遠心力と風の影響で刀の炎は正に獅子の鬣のように際立ち、より大きくなっていく。だが足も腕もまだ体に追いついていない。


「負けてたまるかぁァァア‼」


 莽薙は気合で腹筋に力を入れて強引に腕を前に持っていく。その時、赤く輝いていた炎は何故か漆黒に輝く。漆黒の炎は刃を加速させていく。


「……それは、なんだ?」


仲山王は驚いたまま「夢幻不死煉獄」を受け止めた翼をその技の守りに回す。

 衝突。しかし、漆黒の炎は止まらない。刀はズルズルと下がって仲山王へ向かう。


「ナギ君、行って‼」


 菊水の声に応えるかのように莽薙は更に力を籠める。そして遂に仲山王の翼を半分切り落とす事に成功した。莽薙はそのまま刃を奥へ進めて本体への攻撃へと向かう。


「つ、翼を再生できない…!?」


 莽薙は地面に着地して再び地面を蹴って推進力を得る。しかし、少しタイミングを誤り、体制を崩してしまう。だが、逆にこの動きこそ相手も予想できない太刀筋になる。


獅子舞ししまいノ《の》うず


 莽薙はくるりと回り、炎の太刀筋が円を描く。右手を踏み込んでいよいよ仲山王に…


天馬翔郭てんましょうかく


 仲山王は刀を地面に突き刺し、地面を大きく揺らす。魔法陣が地面に発生し、地面から多くの岩が持ち上がり、宇宙区間のように空中で滞空する。莽薙はその岩に当たり、その岩と共に上空へ持ち上がる。


「もう少しで私の体だったな…」


 仲山王は莽薙に向けて振り上げた拳を強く握りこむ。それと同時に空中の岩が高速で莽薙の下へと集結し始める。莽薙の周りの岩が全て集結し、一つの大きな四角い岩が完成。まさに城郭と呼べるこの岩にむかって、仲山王が突き刺した刀を抜き取りその岩にゆっくりと向かう。


「させるかぁァァア‼」


 菊水が薙刀で仲山王へ仕掛けるが仲山王は簡単に刀で受け止める。勿論この力だけでは圧倒的に菊水が敗北。菊水が耐えられるのはほんの数秒であった。だが、その数秒で赤城が仲山王に追いつくことができた。


赤龍蹄せきりゅうてい


 両手で刀身を下に持って、仲山王を背後から勢い良く突き刺そうと振り下ろす。仲山王は攻撃を諦めて撤退。赤城の刀身は地面に突き刺さり、衝撃波を地面に巡らせる。狙った岩石に衝撃波をすべて流し込み、岩石の城郭を破壊する。


「ナギ君‼」


 菊水が莽薙を救出。そのまま後方へと引き下がった。莽薙は目を開いて生きていることを証明すると、菊水は安堵の表情を浮かべた。


「……やはや、翼を斬るなんてな……初めてだ」

 仲山王は地面に着地して天馬と分裂。疲労感によって地面に座り込む。

「君たちは僕の翼に一撃を入れた。君たちの勝利だ。」


 全員がその言葉で地面に座り込んだ。千々波は持参した甘乳を流し込んみ、梔子姫は地面を見つめながら息を整える。赤城は膝を立てて汗をたらしながら無言を貫く。


「みんなの成長、特に莽薙君の成長には驚かされた。元々戦闘技術が少し身についていたとは言え、半月でここまでこれたのは素直に称賛したい。ようこそ《《こちら》》側へ」

「あの……最後のはやりすぎでは…?」


 菊水にもたれかかる莽薙が仲山王に向けて言う。仲山王は君主としては不躾な大笑いを見せた。


「確かにな、あれをしなかったら攻撃は当たっていただろう。私もちょっと楽しくなってしまってな、あんなに追い詰められたのは初めてだから——。

「だからといってしていい事と悪い事はあるでしょ…」


 菊水のいう事が図星で、仲山王は反論ができずに笑顔をそのまま続けた。


「……そんじゃ、今日はみんな疲れただろし帰ろうか」

「え、『お疲れ会』みたいなの無いの!?」

「みんな疲れてるから難しいね、それにその会は尚志王を倒してからしようね」

「わーーい‼」

『単純だな…』


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