78話 協力(2)
「なあ、俺達でもあの餓鬼くらいなら捕らえられそうじゃないか?」
三春にジリジリと近寄っていく『リバース』のメンバーの一人がふと呟いた。
確かに先程までいた修哉率いる変人軍団や篶成に比べたら何十倍も三春は弱そうに見える。
実際三春に戦闘能力は皆無であるし三春はこれ以上出しゃばって殴られたら逆に足手纏いとなるため何とか逃げながらライムの近くに再び自分から行って気を引こうと考えていたのだが────
三春のそんな考えを吹き飛ばすように、一人の男が宙を舞った。
宙を待っている男は何が起きているのかわかっていないなか呆けた顔をしながら地面を見る。
「あれ?何で俺浮いてんだ?」
夢か────そう思ったのも束の間。
男の身体は自由落下を始め地面にぐしゃりという音と共に着地した。
一体何が起きたのか……
三春を囲んでいる『リバース』のメンバーは三春から目を離し、思わずその音がした方に首を向ける。
すると不思議なことに今度は二人の男が宙を待った。
そしてまたバタリ、ぐしゃりと地面に落ちる。
舞う、落ちる、舞う、落ちる、舞う、落ちる────
数十人が犠牲になった所でようやく『リバース』の面子は背中に恐怖を覚えた。
自分達は今、攻撃を受けているのだと。
「その調子で『リバース』の奴らは片付けてくれ。あの少年を守るよ。プラト」
「何で急に?あの少年の事知ってんのか?」
ハルネの指示に従いながら『リバース』を薙ぎ払うプラトが首を傾げて質問をした。
するとハルネはいつも通りの小悪魔的な笑みを浮かべて言葉を返す。
「いや、知らない。でも────何か、面白そうな雰囲気がしないかい?」
「はぁ……お前ほんとに……」
プラトは頭を抱えながらも軽々と『リバース』の男達を粉砕していく。
その姿はまさに巨神のように思えた。
そしてある程度プラトによって『リバース』の面子が減ったところでハルネは颯爽と自身の興味の対象────三春に駆け寄り言葉をかける。
「やあ。君、面白そうな子だね」
「あぁ……ええと?」
突然現れた日本語を話す外国人の男に三春は困惑の色を露わにするがハルネは愛想のいい笑みを浮かべながら言葉を返す。
「大丈夫。味方だよ。僕もあの怪物を倒したくて様子を見てたんだ。せっかくだし組まないかい?」
明らかに怪しい。
それがハルネに対して三春が最初に感じた印象だった。
しかしハルネがよろしくと言わんばかりに差し出した右手には『リバース』特有の青い鳥の刺青も見えないし、今はまた違う敵を作るわけにもいかないのでとりあえず三春はハルネの手を取った。
「よろしくお願いします……って、なにこれ?」
ハルネの手を取った三春は右手に冷たい鉄のような感触を覚えた。
ハルネが右手を三春から離すとその物体が露わになり、三春は思わず声を上げてその物体から手を話す。
その物体は銃であった。
三春の手には少し大きいサイズのハンドガン。しかし撃とうと思えば別に撃てなくもない程よいサイズの銃。
ハルネは三春が手放したハンドガンを空中で華麗に回転させながらキャッチして見せるとそれを再び三春に差し出した。
「あの怪物を倒すにはコレが必須だよ」
「でも……使い方がわからないし!しかもこんなの使ったら人が死にますよ!」
「アイツは死なないよ。安心して引き金を引くといい」
「そういう問題じゃ!」
冷静沈着なハルネとは裏腹に三春の息はどんどん上がっていく。
初めて実物で見た銃は玩具の銃なんかよりもゴツゴツとしていて重量感がある。
初めて持ったことによって三春は確かにこの武器は人を殺せてしまう品物だと理解できた。
さらに言えばサラッとハルネが発言したライムが不死者という発言。
何を言っているのだろうと三春の頭には理解が追いついていなかった。
だからこそ三春は頑なにハンドガンを拒んでいるのだが────
「使い方か……じゃあ、おいでよ」
ハルネは三春の心境を知ってか知らずか三春の右手を握ると工場の隅へと移動を始めた。
「チャンスは一回。アイツの意識の外から狙い撃つよ。撃つ際は僕が補助をするから任せて」
「はい!?」
三春は何故自分に撃たせたがるのか疑問に思いながらもハルネに着いて行く。
三春は心のどこかで目の前のハルネにある事を感じていたのだ。
この人と今何かをすれば────変われる気がすると。
× ×




