77話 市民Aは名を叫ぶ
「ライム!ノルウェーツ!!!!!!」
三春の叫び声に蒼矢とライムの手がピタリと止まった。
ライムが三春に目を向けると、最初は誰だあの男は?と言った表情を浮かべていたが、すぐさま記憶の奥底から三春の顔を思い出し、同時に忌まわし気な表情を浮かべる。
────あの時の……『リバース』じゃなかったのか!?
ライムは自分の知らないところでどんどん数が増えている『リバース』のメンバーを全員把握している訳では無い。
その為、抗争が始まった直後に話しかけられた三春をほとんど疑っていなかった。
しかしその甘さが────ライムに牙を剥く。
「誰だアイツ……?」
「俺見てたよ!さっきライムさんに話しかけてた下っ端だろ?」
「じゃあなんでライムさんの名前を叫んでんだ?」
まだ工場に残っている『リバース』の面子は三春に対して不思議な顔を浮かべているが、三春の右手を見て段々と不思議な顔を歪ませて三春にじわじわと近付き始める。
「アイツ、スパイだったんじゃないか?」
「ほらだってよ、右手に青い鳥のマークが入ってねえぜ?」
三春は抗争に来る前に青い鳥のマークを消していた。
三春が付けていた青い鳥は魔力によって作られたものなので、刺青とは違って簡単に取れるのだった。
よって三春は敵と見なされジリジリと『リバース』のメンバーに囲まれ始めるが、三春は怯えることは無かった。
寧ろ逆に────
「僕は堺家の協力者だ!地下に閉じ込めていた令嬢も全員解放した!もうこの場には居ない!つまり狙うなら……僕を狙え!」
最初に駅で交わした凛との言葉────『囮役……なら喜んで買えるよ』
この言葉を思い出し三春は内心で少しはにかんだが、すぐに気を戻しライムに視線を戻す。
「僕が────東堂 三春が相手をしてやる!」
「何だあのクソガキは……?」
ライムは三春の挑発に対してあからさまに機嫌を悪くすると、獲物を狩る獣に特有な呻き声と共にターゲットを三春に定める。
刹那────ライムは目の前の蒼矢を無視して一直線に三春に向かった。
「おい!やべえぞ!」
蒼矢がすぐさま三春に忠告をするが、三春の身体能力は当然それに反応出来ない。
一瞬三春は後退りをしようとしたところで────目の前に現れた黒い影を見てその足を止めた。
黒い影はライムが目の前まで迫ってきた瞬間、タイミングよく左足を振り上げる事でライムの顎下に強烈な蹴りを食らわせて見せた。
「篶成さん!」
沙羅 篶成が何とか力を踏ん張って立ち上がったのだった。
「何も出来ねえくせに調子乗りやがって。自分の身は自分で守れよ!」
「は、はい!」
すぐさま篶成はライムに追い討ちをかけにその場から駆け出す。
ライムは空中で意識が朦朧としていたが、すぐさま駆け寄って来た篶成の言葉で現実世界に呼び戻される。
「よお!最後のお楽しみといこうぜ!」
「死に損ないが!!!」




