69話 邂逅(4)
「アレは俺への当てつけでもあるのか?」
「はて?何のことやら」
ハバネと別れた後、蒼矢が基仁に対して苛々とした感情を声色に含みながら話しかけた。
「アレは────俺への忠告でもあった」
「その自覚を待っているのならなぜあの男に忠誠を誓い続ける?」
あの男────
基仁が指している人物は蒼矢が所属している組織『弥生会』という近年急激に勢いを増している指定暴力団のリーダーの事だった。
噂によれば凄まじいカリスマ性を持っており、実力も勿論備わっている。
年齢は二十代半ばと言われているがあまりの若さに本当にその歳だと信じている者は多くない。
蒼矢はその実情を把握しているが組織に関する情報を流す事は基本禁止されているので父の基仁にすら話した事はない。
そんな自身のリーダーを棚に上がられた蒼矢はあからさまに不機嫌な表情を顔に貼り付けながら言葉を返す。
「別に誰の下に付こうが俺の勝手だろ。それに、弥生会に入ってるのは俺なりの考えがあっての事だからな」
「ほう?その考えとやら、是非とも聞きたいな」
「教えるわけねえだろ。俺はもう凛が独り立ちしたら堺家の人間って肩書きは完全に捨てるつもりなんだ。今回の抗争も凛が関与してたから参加してやっただけだ。だから今から少しずつアンタらとの関係を切っていくんだよ」
「その独り立ちを邪魔しているのは誰なのやら」
「……」
基仁の相変わらずの他人の心に不快感をサラリと与えてくる言葉に蒼矢は怒りを通り越して呆れ、遂には黙ってしまった。
そんな蒼矢を見るなり基仁は再度弥生会の男の話を切り出す。
「まあ、何はともあれだ。深く潜りすぎるなよ」
「わかってるっつの……」
何処と無く気まずい雰囲気が漂う会話はここで一旦終わりを迎える。
何故なら目の前には────
「さあ、行こう」
工場内に続くドアがあるのだから。
ドアの向こうでは絶賛ライムと篶成が交戦中である。
基仁と蒼矢がその間に入り込めばいよいよ決着は付くだろう。
堺家と『リバース』の抗争。
その真打がようやく戦場に姿を表す。
基仁はゆっくりと扉を開けると腰の刀に手を据える。
そうして工場の中心にいる人狼を切る為にその刀を抜き一歩、また一歩近付いて行く。
周りのライムと篶成の交戦に目を奪われている『リバース』のメンバーが誰だあのジイさん?などと基仁に気付くなり口にするが基仁にそんなモブ達の言葉は届いていない。
ただただ目の前の標的に狙いを定め────
抗争の火種となった二つの組織の長が邂逅を果たす。
× ×




