66話 Rebirth(3)
「アレ……本当に人間か?」
「人間の範疇をギリギリ保っている怪物って所かな」
ライムと篶成のタイマンを見て、プラトもまた驚きの表情を隠せずにいた。
プラト自身も、人の中では生身の人間を軽々と投げ飛ばしたり、その他諸々人間離れしている事をしているのだが、篶成に及ぶかと言われれば何とも言えなかった。
それ程までに今の篶成は常軌を逸していた。
「獣人化って禁忌魔術だろ?それに対してあそこまで戦えるって人間の範疇を保ってるって言えるのかよ」
「禁忌の対処は魔術協会が主力メンバーを躊躇わず出してくる程だからね。そう思うのも仕方ないか」
魔術協会。
イギリスに本拠点を置いている神秘を追い求める組織。
現代では魔術師の人口も減少し、人々の間では魔術なんてものは神話の戯言などと思われているが、確かに魔術はこの世に存在する。
魔術協会はその魔術を監視するための組織である。
基本的に現代では魔術は秘匿、そして管理がされている。
1900年代の後半、第二次世界大戦以降に秘匿事例は決定された。
秘密裏に使用されていた魔術による戦争の戦力操作。
当時の魔術協会会長は魔術を戦争に用いる事を酷く嫌っていた。
本来魔術とは秘匿されるべきものであり、魔術を知らない一般人にその存在を公言する事は古くからの暗黙の了解のようなもので決まっていた。
しかし戦争は人を狂わす────
生き残る為なら人は手段を選ばない。
その為、魔術や呪力などが秘匿され補完されてきたイギリスやアメリカは戦力兵器として数少ない自国の魔術師達を戦争に駆り出した。
その結果魔術師達の人口は一気に減る事となり、人類史の『裏』側にも戦争の爪跡は大きく残る事となった。
それ以降に就任した今現在の協会の長は争いの道具に魔術を用いる事を基本的に禁じ、これまで同様秘匿とし、神秘と崇められるように魔術の管理を徹底した。そしてその管理の一つが禁忌魔術の封印であった。
このルールには色々と裏があるという噂もあるが、真偽は定かではない。
ライムはもちろん魔術をむやみやたらに使えば協会から目を付けられる事を承知していたが、ライムのように協会を敵に回す事を大前提として生きている者もいる。
彼らは協会から派遣された『巡礼者』と呼ばれる組織によって掃除される。
ライムは1800年代の頃から魔術絡みの事件を数多く起こしているので協会とは悪い意味で顔見知りだった。
殺そうとしてもライムは不死者なので殺せず、手錠に繋いでも手首を自身で千切って逃げ出す。
他にも様々な事件を起こしているのだが、それはまた別の話である。
ハルネはどちらかといえば協会に今はなるべく目をつけられない為、特に魔術絡みの事件は起こさないようにしている。
過去に一度だけ協会絡みの事件に巻き込まれたが、その時の協会の主力メンバーを見て手を出すべきではないと考えていたのであった。
「ライムって奴は協会すらも敵に回す気なのか」
「まあそうだろうね。今は不完全とはいえあの獣人化が完成すれば協会もさぞ手を焼くだろう。いやはや楽しみだ」
ハルネは今後の情勢を考えて狐的な笑みを浮かべながら呟く。
そんなハルネを見てプラトは頭を抱えながらツッコミを入れる。
「こんな奴が新市長でいいのか……」
「ハハッ、大衆の前では面を被るさ」
「……まあライムの今後の動きが楽しみなのは俺も同じだけどよ」
「もう一人、注目しておいた方がいい人がいるよ」
ハルネの突然の言葉にプラトはどう言う事だ?と言わんばかりに首を傾げて質問をする。
「篶成って奴か?」
「いや違うな────」
ハルネは狐的な笑みをまるで何か案を練る策士のような小悪魔的な笑みに変えてその真意を呟く。
「その妹かな」
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