65話 Rebirth(2)
「あれが獣人化って奴!?」
「すげえアニメみたいだ!」
「感心してる暇ないだろ!とりあえず修哉さんを回収して早く病院連れて行かねえと!」
ライムの獣人化によって辺りは再び喧騒に包まれた。
まるで時が動き出したように周りの人間が忙しなく動き出す。
修哉の仲間であるバンドメンバー達は銃で撃たれ地面に寝そべっている修哉を回収する為にバン車に乗り込む。
『リバース』のメンバーであるチンピラ達はライムの新しい姿を見て思わず息を飲み、恐怖のあまり立ち竦む者も居る。
また打って変わってもうやってられないと言わんばかりにその場から逃げ出す者も居た。
ハルネとプラトは相変わらずライムを取り巻く構想を呑気に眺めているだけである。
そして篶成は────
「何だ何だ犬っコロに変身しちまったのかよ」
「────」
篶成の言葉にライムは狼のような呻き声を発して明確な殺意を飛ばす。
しかし篶成は怖じける事など無くライムに近寄りながら煽り言葉を口にしていく。
「言葉も喋れなくなったとか滑稽だなぁおい!?これから痛みに対する悲鳴も犬らしく情けない声で鳴くのか!?楽しみだなぁおい!?」
篶成は完全にギアが外れかけていた。
膝に鉛玉を打ち込まれた痛みよりも今は怒りが勝つ────そんな篶成はライムに狂気的な笑みを浮かべながら一歩、また一歩と近づいて行く。
「人語も喋れるぞ。変わったのは外見と────」
篶成の煽り言葉にライムが言葉を返すと同時に床を小さく蹴り出す。
次の瞬間────篶成の目の前にライムの爪が迫っていた。
「身体能力だけだ」
「────!?」
篶成は間一髪の所で身体を横に捻る事でライムの獣人化によって与えられたギフトである鋭い爪を躱した。
────クソッ、気抜いたらやれるな。
篶成は気は熱くなりながらもライムの動きを冷静に読み取りどう対処しようかを考える。
スピードではまずライムに軍配が上がってしまう事が明らかな為、距離を置くのはまず危険だと篶成は考えた。
ただでさえ早い攻撃に助走を付けられては最早手が付けられなくなる。
それならば篶成はライムから近距離を保ちながら戦おうと考えたのであった。
となれば篶成は横を通り過ぎようとしているライムをみすみす見逃す訳には行かない。
篶成はライムの身体に生えている腰の毛をギリギリの所で掴むと銃で膝を撃たれていると言うのに思いっ切り足を踏ん張る事でライムの重心を殺し、篶成の目の前に留めた。
「仲良くしようぜ?」
「お前本当に人間か?」
篶成の人とは思えない脚力と握力に驚きながらもライムは冷静に対処を行う。
今度は足の爪を篶成に食らわす為にライムは蹴りを食らわそうとするが────
篶成は即座にライムの毛を離し、瞬時に床に寝そべるような形で背を低くした。
────コイツ……
篶成の反応速度にライムは驚きと同時に初めて舌打ちをする。
自身の奥の手に対して生身で対応している事にライムは少なからず苛立ちを感じていた。
篶成はそんなライムの気持ちなど考えもせず背を低くした状態から腕を支柱とする形で足を同時に上空に伸ばした。
両足は見事にライムの胸部にヒットし、ライムは身体を思わず身体を後ろに後退させる。
さながらブレイクダンスのような体勢になっている篶成だが、それでも追撃をやめない。
ブリッジのような体勢を挟んだ後に何ら苦悶の表情を浮かべずに上半身を起こして元の体勢に戻るとそのまま足を踏み込みライムに追い討ちをかける。
今度は肘をライムの胸部に入れ、その後は即座にライムの顎にアッパーを入れてみせた。
息をする間も与えない攻撃スピードには辺りの人間達も驚きを隠さずにいた。
「常人離れしてるとは思ってたけどあそこまで離れてると思わなんだ!」
「流石俺達の篶成さん!」
知らぬ間に修哉の元に駆け付けていた杏梨と津田は各々篶成に対して勝手な事を言うが今の篶成には勿論聞こえていない。
しかしそんな二人の言葉を聞いて笑う男が一人────
────頼んだぞ、篶成。
修哉は朦朧とする意識の中、篶成を霞む視界の中に捉え心の中で想いを託す。
歯車が収束を始めていく────
× ×




