63話 Rebirth - 急展
時を同じくして廃工場内。
『リバース』のリーダーであるライムが修哉と篶成との勝負に負け、壁と地面に身を預けてから約二十秒が経とうとしていた。
辺りの『リバース』に所属しているチンピラ達は自分達の不死者という最強のギフトを有しているリーダーが倒されたことに衝撃が隠せず、各々言葉を失っていた。
それと同時に自身の化け物じみたリーダーを倒す奴らなど、どう倒せばいいのかわからずに戦意も同時に喪失していた。
そんな腑抜けたメンバー達を他所に修哉と篶成は会話を進める。
「取り敢えず警察に連絡をした。不死者だか何だか知らんが回復しちまうんなら縛り上げるしかねえだろ。どっかに程々のロープとかあったりしないか?」
「ねえな……サツが来たら手錠で拘束されるんだろ?それまで永遠に半殺しにしとけばいいんじゃねえか?」
篶成の物騒極まりない提案に対して修哉は小さく笑い、首を横に振りながら答える。
「警察が来る前に色々と不死について聞きたいことがあるんだよ。それはお前もだろ?」
「ん〜まぁ、聞けるんならって感じだな……じゃあ取り敢えず何かしらの道具で身動きだけ封じておくか」
そう言った篶成はライムに対して踵を返し、何か縛れるものは無いかと辺りを探し始めた瞬間だった。
「彼を相手にするなら紐なんて探す時間無いんじゃないかい?」
静まり返った工場内に響く忠告の声。
声の主は工場の中心にいる男であり、彼はニコニコとしながら篶成と修哉を見つめている。
まるでこの状況になることを理解していたかのように────
忠告したハルネの声に対して篶成が疑問を呈する────前にその忠告は即座に形となって襲い掛かる。
声が終わった瞬間だった。篶成と修哉の背後────即ちライムがいる筈の場所から『カチャリ』という男が聞こえた。
先にその音の存在に気付いたのは修哉であった。
身内に警察関係者がいる事によってその音は何度か聞いた事がある。
それは紛れもなくマガジンが装填される際に聞こえる音であった。
慌てて修哉が振り返るとそこには座りながらも片腕だけで銃をこちら側に構えるライムの姿があった。
────嘘だろ!?
あれ程の怪我が一分も経たない内に完治するなど最早手の施しようが無いのではないかと思わせる絶望感を修哉は今の一瞬だけで味わった。
これならば篶成の言う通り常に半殺しを維持しておけば良かったと。
最もこの異常な回復スピードはライムの特権なのだが、修哉と篶成はそれに気づく筈はない。彼らは世界に両手で数えられる程しかいない不死者との戦闘に慣れている訳がないのだから。
「コイツ!」
篶成はすぐさまライムの銃を蹴り飛ばす為に大きく踏み出した。
しかし────ライムはニヤリと笑いながら声がした方へ銃の先を向けた。
「そこか」
篶成は相手の意図に気付いたのか急いで横に身体をズラそうとするがコンマ数秒の世界ではいかに篶成と言えど躱すのは不可能であった。
一瞬にして急展を迎えた場面では誰もライムの動きに反応が出来なかった。
ある一人を除いては────
「クッソ!」
修哉は篶成に銃が向けられた瞬間に即座に篶成に飛び掛かっていた。
今ここで自身と篶成。どちらが撃たれた方が不利になるか。
そんなものは修哉にとって愚問であった。
修哉は迷わず篶成に飛びつき、身体の進行方向を無理矢理ズラした。
そして修哉が篶成に覆いかぶさった瞬間────
無慈悲にもライムの拳銃から轟音と共に鉛玉が放たれた。




