61話 堺 蒼矢
堺 蒼矢によって明かされた衝撃のカミングアウトに男は困惑の色を隠せなかった。
「堺家?は!?堺家の人間に弥生会の奴が居るのか!?」
「弥生会は今はそんな関係ねえよ。俺はあくまで堺家の人間────堺 蒼矢としてムカつくが来てやってんだからな」
蒼矢はそう言いながら肩を回しつつ男に再度一歩、また一歩と近付き始めた。
「まああれだ。可愛い妹を殴った代償はデカいぞ?」
「シスコンかよ。痛々しいから勘弁してほしいね」
「ハハッ。すぐにその口開かねえようにしてやる」
蒼矢は空笑いを浮かべながら大きく踏み込み────
再び人間離れしたスピードと共に一気に男の懐に飛び込んだ。
男は再び焦るような表情共にギリギリの所で相手の攻撃を見切ろうとするが蒼矢はその一枚上を行っていた。
拳は男の腑へ目掛けて向かっていく。
男はそれをギリギリでは捉えていた。
しかし蒼矢はすぐに見切られていることを察してその拳を解いたのだ。
解かれた指はその拳をガードするために置かれていた男の腕を掴み取り完全に相手の腕の動きを封じてしまった。
────マズ!?
男はすぐにその行為がいかに危険なのかを感じ取りすぐに引き剥がそうとするが蒼矢の握力がそれを許さない。
二人の動きはさながら先程の三春と『リバース』の男のように見えるが一つ違うとすればその時は優位に立っていた『リバース』の男が不利になっているという点である。
そんな男に対して蒼矢は何の哀れみも感じさせない非常な蹴りを身動きの取れない男に対して食らわせた。
蹴りは横腹に綺麗に入り、思わず男は吐き気を催した。
蒼矢は相手の崩れた姿勢に尽かさず留めと言わんばかりの飛び膝蹴りを顔面に食らわせその意識に幕を下ろした。
「凄……」
自身が苦戦した相手をあっさりと倒してしまった事により三春は思わず呆気に取られた声を上げた。
その声によって三春の存在に気付いたのか蒼矢は三春に目線を向け、その後ゆっくりと三春に近付き始めた。
「お前が三春か。全く……」
蒼矢は三春の目の前に立つと床に腰を下ろしている三春の襟を掴み取り無理矢理三春を立たせて言葉を続けた。
「守るって決めたんなら力を付けろ。弱いまんまだと何も出来ねえぞ。特にこの街じゃな」
蒼矢の相手を内面から殺すかのような独特な雰囲気に三春は完全に抑え込まれ返す言葉が何も思い浮かばなかった。
最も蒼矢の言っている事は事実であり三春自身は何も出来なかったのでどれだけ言葉を考えようと何も浮かばないのは必然的であったのだが……
「クソ親父の言葉が無ければお前を一発殴ってる所だ。アイツに感謝しておくんだな」
そういうと蒼矢は三春の襟を離し三春に対して踵を返した。
三春はそのまま再び地面に倒れ込み軽く咳をしながらも息を整えた。
────確かに……僕なんかじゃ出来ない事だったな……
自身から啖呵を切ったくせにこの有様。
三春は凛の事を見ることが出来なかった。
────あぁ、僕ってダサいなあ。
三春は自身の手を見つめながらそんな事を思った。
どうしようもないやるせなさをため息に乗せながら────
× ×




