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The Rampage 2021 - The Beginning of the Rampage!!!  作者: 冬野 立冬
4章 The beginning of the rampage!
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59話 歯車が混じり合う(1)


「あ」


「え」


「お前ら……!」


 三春は心底運の無さを感じ悲壮感に駆られた。

 凛がいなければ三春はその場で泣き出していただろう。

 その気持ちは凛も同様である。

 三春と違って泣くことは無いにしろ凛も大きなため息をついてその面倒臭さを嘆いていた。


「三春……」


「凛さん……」


 二人はこれまでの時間で決して距離が縮まった訳ではない。

 互いの気持ちを理解することなんて出来ることはないしこれからも喧嘩をする事がきっとあるだろう。

 しかし今この瞬間だけは二人の息は綺麗に重なった。

 言葉の調子や気持ち。

 全てが華麗にチューニングされたように────


「「逃げよう!!!」」


「待てコラ!」


 三春と凛は互いの顔を見るなり一目散に裏口に向けて駆け出した。

 しかしその後を追うようにすぐに『リバース』の男も駆け出していた。

 駆け出すタイミングが若干男の方が遅れたとはいえ持ち前の瞬発力と運動神経を活かしてグイグイと三春と凛に距離を詰めていく。


 三春は運動神経が良いとは言えない為、まず間違いなく男に追いつかれるだろう。

 凛は運動神経は良いのだが今着ている服が制服という事があり、走るたびに北海道特有の若干長めのスカートが脚に絡みつきかなり走りづらい事になっていた。


 よって駆け出してから僅か4秒程。

 男は二人に追いついた。


「早!?」


「クソッ!」


 三春が追いつかれた事に対して焦りの言葉を上げた瞬間、凛はすぐに対抗するために足を振り上げていた。

 堺家は当主が当主なだけあって武闘派の人間が多い。

 それは幼少期の頃に武闘の心得を叩き込まれるからである。

 よって凛は多少の武闘は(たしな)んでいた。

 堺家で捕まった時は手首を抑えつけられ、男の力に全く抵抗が出来なかったが今は違う。

 手足の自由が効く為、軽やかに凛は相手に攻撃を仕掛ける。


 横から張り上げた足は男の脇腹(わきばら)目掛けて進む。

 男は咄嗟(とっさ)の事に若干反応は遅れるがギリギリの所で脇腹と凛の足の間に腕を盾のように起きその攻撃を凌いだ。


「おいおいそんな足振り上げたらパンツ見えちゃうぜ?」


「キモ」


 男の余裕のある言葉に凛は明らかに不機嫌な態度を取りながら一旦足を下ろし距離を置こうとするが────


 男の戦闘センスが距離を置こうとする事を許さなかった。


 男はすぐに距離を詰めて凛の懐に入り込む。

 足を下ろしてすぐの凛はすぐに自由な身動きが取れず相手の行動に対応しきれなかった。


「うぁ……」


 凛は男の拳をみぞおちに食らい、思わず悶絶するような声を上げた。


「女を殴ったりするようなリョナ趣味はねえんだけどな。すまんすまん」


 凛はそのまま膝から崩れ落ち、しばらく地面で咳き込む事になってしまった。

 そんな凛を一先ず放置して男は三春に目を向ける。


「お前、結構痛めつけたつもりだけど無傷は無いだろ?ハバネさんと同じ魔術師と手でも組んだか?」


 三春にとって男の質問は正解の為思わず三春は答えずに黙り込んでしまった。


「まあいいや、男相手に容赦はしねえし。それにお前には一発良いの貰ってるからな」


 男はニヤニヤとしながら堺家での対立の際に殴られた顔の部位さすりながら三春に一歩、また一歩と近付いていく。


 三春はそんな近付いて来る男に対して大きく深呼吸をしながら気持ちを整えていく。

 自分が凛は任せてくれと啖呵(たんか)を切った以上逃げる訳にはいかない。

 勝算は限りなくゼロに近いが三春はそれでも相手と殴り合うつもりだった。


 ────僕がアイツに勝てるとしたら『運』だけだ。


 三春は一度目の前の男をダウンさせたシーンを思い出しながら集中力を高めていく。

 あの時はたまたま顎の部位に当たり、さらにたまたまその勢いが相手の軽い脳震盪(のうしんとう)に繋がっただけである。

 狙って出せるかと言われれば三春は二度と出せないだろう。

 だからこそ三春は運に賭ける他なかった。


 男が一歩近付くごとに歩みのスピードを早めていく。

 三春は焦らず、冷静に相手の行動を見ながら拳を硬く握り、相手の顎に向けてその拳を放つ準備をする。


 そして目の前まで男が迫った瞬間、三春は拳を振りかぶり相手の顎を目がけて殴りかかる。

 しかし────


「狙い過ぎ。バレバレなんだよ」


 三春の拳は糸も簡単に男に止められてしまった。


「ひ弱なお前が取るべき行動は一つだけだ。助けを呼ぶ。まあこの地下通路じゃ誰も来ないけどな」


 三春は冷や汗を掻きながら拳を振り解こうとするが男の握力がそれを許さない。

 さらには男の握力に負けて三春の腕が痛み始める始末であった。


「あぁあ!!!」


 三春は思わず苦悶の表情と共に濁り声を上げるが男が力を弱める事は無い。

 そして極め付けに男は空いているもう一つの手を振りかぶり────


 三春の顎へその拳を叩きつけた。


 当たり所がそこまで良くなかった為、脳震盪は起こさなかったが三春はあまりの痛みに目に涙を滲ませた。


「痛いだろ?全くたまたま当たった打撃なんかで調子に乗りやがって」


 男は三春の拳を放し、自由落下を始めた三春の身体に対して下から蹴りを入れて三春を地面に落とした。


「弱い奴は弱い奴なりに場を(わきま)えろ。もう一度拘束してお前ごと部屋に閉じ込めるか。お前に協力した魔術師も釣れるだろ」


 そういうと男は後ろに振り返り凛の元に足を向かわせる。

 その瞬間だった。


「オイ」


 地下通路に一つの声が木霊した。


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