57話 一方その頃(1)
時は数分前に遡る────
「この腕じゃどうしようもないな」
「上の抗争にも参加できないですしね。さっさとあのお嬢さんを連れてあの当主さんに会いに行きましょうよ」
『リバース』アジトの地下。
地上から一つだけある階段を降ると五つの部屋が存在する。
元は物置のように使われていたようだが今は廃工場となっている為メンバーの休憩所のように使われていた。
最も湿気が高く、鉄の錆びた臭いが辺りに充満している為この部屋を好んで休憩所として使う者はほぼいないのだが……
そんな地下の入り口から二つ目部屋に『リバース』の幹部の一人────ハバネとこの付き添いな男が腰を下ろして休憩をしていた。
ハバネには右腕が存在せず、応急処置としてタオルを巻いているがそのタオルには血が染み出しかなり痛々しい風貌を纏わせていた。
タオルを強く巻く圧迫止血法を取っているのだが、腕が一本切れるとその血はなかなか止まることを知らずに中々止血が止まらない。
さらにその多大な出血量によりハバネは顔面を蒼白させており、見るからに貧血を発症させていた。
体が小刻み震えているようにも見え、事態は刻一刻と悪化しているのは明らかであった。
鉄分不足なども勿論合併症として発症しているように見え、今すぐ高次の医療機関に搬送が必要だろう。
しかしハバネは今や悪い噂が立つ「リバース』の幹部である。
『リバース』の証である青い鳥の刺青は右手と共に斬り落とされているが幹部のメンバーは顔が割れているので病院に行った所で最後は捕まるのがオチなのは目に見えてわかる。
よってハバネは隣の男が何と言ようと病人には行くことはしなかった。
男は『リバース』内に医療従事者がいればまだマシなものを思ったがないものねだりをしても今は仕方ないと苦虫を噛み潰した。
「とにかく、ハバネさんはここで休んでいて下さい。今動いたら不味いでしょ。俺が何とかしますから」
「悪いな……幹部失格だな」
ハバネは自嘲的な笑みを浮かべる。
男はそんなハバネを見て俺が何とかしなければと拳を強く握り締めた。
そして隣の部屋に放置している四肢を縛った堺家の令嬢の元へ足を向ける。
そしてそこで歯車は歪に絡まる。
男がドアを開けた瞬間そこには────
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