55話 大暴れの幕開け(7)
篶成と修哉は同時にライムに向かって駆け出していた。
身体能力的に篶成の方が先にライムに辿り着き、駆け出した勢いのまま回し蹴りを喰らわせるが、ライムは身体を器用に勢いが身体に響くタイミングで自らその勢いの方向に身体を曲げ、篶成の攻撃を凌いだ。
そのまま流れる様にライムは器用に体をくねらせ、まるで篶成の蹴りの反動を利用するかのように回し蹴りを繰り出し、篶成を少し吹き飛ばして見せた。
立て続けに一足遅れた修哉が右手でストレートを放とうとするが、ライムは落ち着いてその拳が完全に軌道に乗る前にその拳を受け止め、完全に勢いを押し殺した。
修哉はすぐに右脚を振り上げるがライムはそれを左手で受け止めて修哉の攻撃を完全に無効化した。
そしてそのままライムは再び魔力を展開させる。
「光れ、暗石」
今度は黒い光がライムの手から放たれようとしており、修哉はすぐに抑えられた右手を振りほどこうとしたがライムはその手を離さ無い。
目の前で爆発すればライムの腕もダメージを負うのだが、不死者にとってその怪我は時間さえ立てば治癒してしまうので大した問題にはならない。
そのアドバンテージをライムは存分に使う自傷覚悟の攻撃で修哉の手を抑えていたのだった。
────コイツ……!
修哉はライムの狙いに気付くと、更に腕に力を込めて振り解こうとするが、ライムの腕から逃れることは出来なかった。
少し前にウィルと相対した時は単純なガタイの良さで修哉は少々圧倒された部分があった。
しかし目の前のライムはウィルよりも身体つきは良くなく、外見だけで見るとひ弱な部類に入るだろう。
それなのにライムの力はウィルの握力を遥かに凌ぎ、修哉に自由を与えなかった。
いよいよ魔術が弾けようとしたその瞬間────
「ダラァ!!!!」
横から間一髪で篶成が突っ込むと同時にライムの修哉を抑えていた腕を蹴り上げ、その拘束を解いた。
黒色の光は天井に直撃し、その天井は衝撃によって一部分が剥がれ落ち、剥がれ落ちた屋根は金属が叩きつけられる甲高い音と共に地面に落ちた。
その光景を見て修哉は冷や汗を背中に滴らせたが同時に頭の中にある疑問も浮かぶ。
────篶成はこんな攻撃食らってピンピンしてんのか!?
横で共に戦う篶成の化け物具合を再度認識しながら、修哉はすぐにライムに意識を戻す。
ライムは篶成の本気の蹴りを食らっても不死者という事もあり、特に大きなダメージにはなっておらず、蹴られた腕も全く問題なく動いている様に見えた。
「篶成、これじゃあ埒が開かねえぞ」
「全くだ。めんどくせえ」
修哉と篶成は再び隣に立ち会い言葉を交わした。
篶成は修哉の言葉を受けると目を細めながら何か打開策は無いかを模索している風に見えた。
「まあ、遅かれ早かれどうにかしなきゃ行けねえことだしな。何とかするさ」
篶成の意味ありげな言葉に修哉は質問をしようとしたが、今は悠長に話している暇はないと判断した為、吐き出しかけた言葉を飲み込んだ。
「再生速度が早すぎるからな。殴る蹴るじゃ倒せねえ」
「じゃあどうする?ナイフでも拾ってくるか?」
「探したらありそうだけどな!まあでも殴られた瞬間に回復する様な奴だ。首を切り終わる頃には切り始めの場所が回復してそうだ。一瞬でアイツの体を吹き飛ばすしかねえ」
篶成の案はめちゃくちゃな物だが、実際それ以外に目の前の怪物を倒す術は思い付かなかった。
さらには美鈴の言う魔術────獣人化のリミット午前0時まで時間も残り少ない。
無茶な事は承知で何とかするしかないと修哉も腹を括った。
「篶成。お前は隙をついて渾身の一撃をアイツに喰らわしてやれ。俺がアイツの隙を作ってやる」
修哉の案に篶成は何の迷いもなく答えた。
「任せたぜ」
「あぁ、任せられた」
篶成は修哉を信頼している。だからこそ篶成は修哉はこんな所でへばる男ではないと知っていた。
修哉が一歩前に進むと篶成はその後を追わず、ゆっくりと集中力を高めていく。
「ここからはサシだ。喜べよ。最初のご指名通りだぜ?」
「別に……お前と戦いたいわけでは無かったんだけどな。まあ、なんだ。どうせ隙を作るからお前はそれに備えてろ見たいな事を言ってたんだろ?」
ライムの察しの良さに思わず修哉は苦笑と冷や汗を露わにするが、それでも言葉は止めなかった。
「さあな」
「別に良いさ。隙なんて作らせない」




