52話 沙羅家の呪い
物心ついた頃から周りとは常に違った。
自分の身体が異常って事はすぐにわかった。
そして何より、この家自体が狂ってるって事も。
生まれた頃から俺の身体は異常だった。
うちの人間がコソコソと話してる所を盗み聞きしたんだが、俺は赤ん坊の時点で大人を蹴り飛ばしてたらしい。
だから俺がまだ意識すら無かった時────胎盤で暴れ回った結果、出血過多で母親は死んだ。
まあ、当然だよな?
初めてその話を聞いた時は怒りとやりきれない思いで我を失いそうになったさ。
でもその頃は美鈴もいたしな。勝手に暴走して美鈴を一人ぼっちにする訳には行かなかったんだ。
美鈴もこのクソみたいな家の被害者だ。
クソ当主は美鈴の事を悲願やらどうとやら言ってたがあまり良い扱いは受けてなかったな。
クソみたいな家でクソみたいな扱いを受ける者同士、俺達はこの家で唯一気が休まる関係として信頼し合った。
俺達はそんな家で育ったんだ。
学校なんてもんには行かせてもらえない。
家でひたすらに俺は隔離。美鈴は魔術とかいうもんを身体が壊れるまで覚えさせられてた。そして終わったら俺と同じ隔離室へ。
夜になると眠くなるまで俺と美鈴は語り合ってたな。
その頃から外の世界に憧れてたんだ。
俺は何で隔離されてたかって?
簡単だよ。俺は強いからな。それに尽きる。
俺は少しでも暴れたら家の物を軽々と壊しちまってたからな。自分でも制御が効かなかったから隔離される他無かったんだよ。
ある日痺れを切らして隔離室の鎖を壁ごとぶっ壊して家の中で暴れ回ってやった時があるんだけどよ。
その時は家の主力メンバーって奴が総出で止めに来たぜ。
最後はクソ当主に殴られて気絶した。
完全に気絶する前、意識が朦朧としてた時にクソ当主に言われた事を今でも覚えてる。
「少し呪いを溜めすぎたか」
あぁ、美鈴然りこの身体の原因もお前かよって爆発しそうになったね。
まあその後すぐに寝込むんだけどよ。
目が覚めたら横で美鈴が俺の顔見て笑ってやがった。
俺は何で笑ってんだ?って聞いたんだ。美鈴は今まで泣きそうな顔ばっかしてたからよ。
そしたらあいつ────
「私は今日からいつかくる本当に笑える日の為に笑う練習をする事にしたんだ。それに笑ってる方がお兄ちゃんも私と話してて楽しいでしょ?」
これがまだ小さい女の子の言うセリフかよって思ったね。
だから俺はこの時決心したんだ。
「なあ美鈴。外の世界には馬鹿みたいに笑えることがきっと沢山あるぜ」
美鈴は不思議そうな顔で俺を見ていたが俺はさらに言葉を続けた。
「俺の傷が完治したらこの屋敷を抜け出そう。とりあえずこの屋敷から離れねえと。俺はもう17歳だ。何とかしていける筈だからよ」
「バレたら危ないよ」
「ここにいる方が何倍も危ねえ。俺が美鈴を守ってやる。絶対にだ」
「ふふっ、じゃあ私はお兄ちゃんを守ってあげる」
「はあ!?それじゃあ格好つかねえだろ!余計なお世話だ」
その時、美鈴は確かに笑っていた。
ニコニコと。作り笑いなんかじゃ無い、本当の笑みを溢していた。
俺はその時、今後もずっとこの笑顔を絶やさせないようにしてやろうと決意した。
もう二度も美鈴が泣かないように。笑って行けるように。
俺が美鈴を守るって決めた訳だ。
だから────そこら辺の奴相手に手を焼いてる暇はねえんだ。
× ×




