51話 大暴れの幕開け(4)
「得体が知れないから気味が悪いな」
ライムは一旦美鈴との会話を止めて、再度周囲に目を向けた。
『リバース』のメンバーはほぼ半壊。
100人はアジトの中にいたと言うのに今立っているのは奇跡的に美鈴を見ていなかった30人程しか残っていない。
ライムやトーチカは魔術因子持ちと言う事も影響しているのか咄嗟に目を背けたら眠りに落ちる事は無かった。
しかしこの状況は些か不味いとライムは小さくため息を吐いた。
『リバース』のアジト内のメンバーを総動員させても傷一つ付けられないプラトや篶成、修哉の存在。
そして明らかに歳に見合わない魔術を展開する少女と何やら自身の過去の事を知っていると思われるハルネの存在────
「アジト外にいるチンピラや老人達をここに呼んでも大した戦力にはならないだろう」
「え?」
トーチカはライムが放った言葉に思わず疑問の言葉を漏らした。
ライムは今まで基本的に表面上ではどんなメンバーにも変わらず愛想良く接してきた。
しかし今この瞬間ライムはそんなメンバーを使い物にならないゴミ扱いしたのだ。
トーチカは表面上でライムが話している事には薄々気付いていたがここまであからさまに表面に出されると思わず疑問の声が漏れてしまうのも必然的であった。
「俺が出よう」
そんなトーチカを他所にライムは一歩ずつ前に進み、篶成や修哉達に近付いていく。
「トーチカ。君も戦いなよ。『リバース』の中だったら最高戦力なんだからさ」
「はっ、はい」
トーチカは言われるがまま立ち上がりライムの後ろに付いていった。
普段ならトーチカは少々生意気な態度を取っているのだが今のライムの前ではそんな態度を取る気にすらならなかった。
それ程までにライムの苛立ちが伝わってきていたのだ。
「何だ、もう大将のお出ましか?」
「油断すんなよ篶成」
篶成や修哉達は美鈴の魔術の種を知っていたので勿論倒れる事は無かった。
対する美鈴は地面に落ちた後少し頭を押さえながらよろけていた。
「大丈夫美鈴ちゃん?」
すぐにバンドメンバーの一人、池尻が美鈴の近くに行き、よろける身体を支えた。
「この魔術はお兄ちゃんの近くでやるとちょっとしんどくて……」
篶成が近くにいる事が何か関係あるのかと思ったが、特段池尻は質問する事なく「さあ、取り敢えず車の中へ」と言って美鈴を車の中へと避難させた。
「全く、使えない奴らだ。寄せ集めとは言えもう少し奮闘してくれれば良い物を」
ライムは容赦なく倒れ伏している『リバース』の面々を踏み付けながら前に進んでいく。
その姿にはもう『リバース』結成当初のライムの面影は全く感じられず、今は危険なマフィア組織の幹部を見ているような感覚だった。
「他の幹部もだ。ハバネはこんな時に片腕を落とされて治療中。ウィルは行方知らず。何の為に幹部に指定したのか……」
遂には幹部の事まで口にしたライムにいよいよ残りの幹部であるトーチカは緊張感を背中に走らせた。
「君だけは俺を失望させるなよトーチカ」
ライムの一言にトーチカは汗を全身に滴らせながら頷き、ライムの機嫌を損なわせない様に振る舞った。
するとライムはニコりと笑った後に「じゃあ片方は任せたよ」と言って篶成を指差した。
「俺は残りの男を片付ける」
修哉は遠回しにお前を片付けるという指名を受けたことにより目を細めて戦闘態勢を取った。
隣のトーチカも篶成の前に立ち、ハバネと同じ身体強化魔術を全身に巡らせ、戦闘態勢を整えた。
しかし篶成は特段トーチカには興味がないのかつまらなさそうな顔でトーチカを見つめていた。
「何だ、私じゃ役者不足か?」
「ん?あぁ、そうだな」
トーチカの問いに篶成は表情通りのつまらなさそうな返答をした。
「舐めてくれやがって……」
そこで完全にトーチカにも戦闘のスイッチが入り魔力を高めていく。
篶成は魔術師では無いが妹の美鈴が魔術師と言うことで、多少の魔力を感じる事ができた。
勿論それにより明らかに上昇していくトーチカの魔力も感じ取っていたのだが、篶成はそれでも尚、つまらない表情を変えなかった。
「あの人間大丈夫かよ?」
完全に蚊帳の外となっているプラトが横にいたハルネに尋ねた。
プラトは少しではあるがトーチカと拳を交えてる為、トーチカの実力は理解しているつもりであった。
それ故に篶成の表情を見て不安感を抱いていたのだ。
「あんな油断して勝てる相手かね?」
「まあ見てなよ」
プラトの心配する言葉とは裏腹にハルネは何処と無く場違いなニコニコとした表情のまま質問に答えた。
「沙羅家の呪い。見せて貰おうじゃ無いか」
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