49話 大暴れの幕開け(2)
「うわぁ、本当にあの少人数でこの数百人相手しちゃってるよ……」
時は修哉達一向が車で勢いよく突入した直後。
実はそれに紛れて三春もこっそりと侵入を果たしていた。
人の波を勢いよく逆走しているので俯瞰してみれば周りからかなり浮いている存在となっているが、この混乱では誰も気に留める事もなかった。
そして何より周りの人達が三春にツッコミを入れないのは三春が右手に青い鳥の刺青をしていたからであった。
突入前でのやり取りで凛を探すのなら『リバース』に紛れ込んでしまえばいいと美鈴が言い出し、美鈴の魔術によって簡易的な刺青を掘ったのだった。
勿論魔術なので魔術を解いてしまえばその刺青は綺麗さっぱり消えてしまう。
三春は最初こそ誰かに何故後退しているのだとツッコミを入れられるのではと怯えながら人の波を逆走していたが、誰も目にも止めないので次第にその怯えは無くなっていた。
そして何より凛を救うという目的が三春の心を大きく突き動かしていた。
────早く助けないと。
しかし闇雲に探しても凛は見つかる筈が無い。
実際に抗争相手の娘を簡単な場所に隠す程、相手も馬鹿では無いと三春もわかっていた。
だからこそ三春はある人物の元へと向かう。
────ライム・ノルウェーツに接触する!
ライムと三春の距離はおよそ10メートル程であり、上手く人の波を縫うように走ればすぐに到達できそうな位置に居た。
三春は時々ライムの場所を確認しながら迷いなく進んでいく。
着々と着々と……
そして、残り3メートル程まで近付いた時だった。
────あれは誰だ?
ライムの目の前で『リバース』の面子に襲われている二人組を見た。
一人はどこかテレビで見たことのある中世的な顔立ちをしている男と、もう一人は見た事は無いがガタイの良さだけで言えば篶成や修哉すら超える大男であった。
────あの人達は何者?
中世的な顔立ちの男は襲われているが、ほぼ相手に殴り返すなどはせず飄々とした表情で襲い来る拳を避けていた。
そしてその向かってきた『リバース』の面々をまとめて大男の方が殴り飛ばすといった戦い方をしていた。
それを見てライムは見るからに不服な顔をしており、三春は思わず後少しのところで足を止めてしまった。
その止めた歩は、もし怪しまれたら終わりなのではと三春の頭の中に不安を過らせる。
しかし三春は拳を強く握り締め、その足を大きく踏み出した。
────変わらなくちゃ。
三春は凛を救うためにこの抗争に参加した。
しかし大前提三春はこの街に自分を変えに来たのだ。
田舎暮らしの冴えない生活から抜け出す為、内気で弱気な自分を変える為にこの街に足を踏み込んだ。
気付けば三春の心から迷いは消えていた。
「ライムさん!堺家の娘さんを安全な所に避難した方がいいのでは!?」
三春は堂々と、しかし自然にライムの横に立ち提案を持ち掛けた。
ライムはチラリと三春の顔を見るとその次に腕にしてある青い鳥の刺青を確認してから言葉を紡いだ。
「任せる。俺はこの場所から動けない。アイツらを始末するからな。お前が安全だと思う場所に隠しておけ」
「はっ、ハイ!その……自分は今の隠し場所を知らなくて……」
ライムはその言葉にあからさまに訝しむような表情を三春に向けた。
三春は思わずライムから目を逸らし背中に冷や汗を流したが、ライムは再び視線を戻し言葉を紡ぎ出した。
「あの娘を隠したハバネは今居ないしな。地下倉庫の階段から三つ目の部屋だ。しくじるなよ」
「はい!任せてください!」
三春は一礼をした後にその場からつかさず駆け出した。
三春は多少の安堵を交えた溜息を吐くと、すぐに地下倉庫に繋がる階段を探し始めた。
それと同時にポケットから美鈴に預かっていた、ある道具を取り出した。
突入前に美鈴から預かったボタン式の機械。
押すと無線で美鈴の持っている機械に何かしらの合図が送られるらしく、美鈴は「凛さんの居場所がわかったら私達も突入します。初めから私達が入ったら、更に場は混乱しますからその合図を待って突入します」と言っていた。
そうして三春は予定通り居場所を突き止めた為、そのボタンを押した。
────頼みましたよ。街最強の二人組!
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