45話 邂逅(2)
薄暗い廃工場の中────
月明かりが唯一の明かりとなっているガラクタが積み上げられた廃工場の中には無数の人間が蠢いていた。
彼らは皆手に青い鳥の刺青を携えており、それが仲間の印となっている。
組織の名は『リバース』。
今最も急激に成長している犯罪組織であった。
薬などの噂はないが殺人未遂、暴力事件などが後を立たず、札幌の警察は日々手を焼いていた。
そんな組織のアジトに二人の男が足を踏み込んだ。
二人とも手に刺青などは入れておらず、どこからどう見ても一般人である。
特徴的な所を挙げるならば、二人とも日本人の顔つきではなく、その顔は外国人のものであった。
さらに一人はかなりの大男であり、プロレスラーを思わせるガタイの良さを持っていた。
そんな二人に周りの『リバース』のメンバーは自然と目線を向ける。
まるで自分達も『リバース』のメンバーだと言わんばかりに堂々と踏み込むその足取りに最初は新入りかと済ませるが、その腕を見るいかにその二人が恐れ知らずで無謀なのかとある意味驚かされた。
そして慌ててメンバーの数人が二人の進行方向に立ち、道を塞いだ。
「おいおいアンタ達何者?仲間じゃじゃないよね?」
二人の進行方向を遮った男の声は徐々に敵が侵入したという情報となって工場内に伝播していく。
すると二人の横には工業用のレンチやメリケンサックを嵌めたチンピラ達がワラワラと集まり始め警戒の色を強めていた。
「プラト。コイツら邪魔じゃないか?」
そんなワラワラと集まり出したチンピラ達を大柄なプラトと呼ばれた男の横に立っていた比較的体格は常人と言って差し支えない男が横目に呟いた。
「そうだな」
すると大柄な男の方がその言葉に相槌を打つと共に指の骨をゴリゴリと鳴らしながら一歩前に出た。
「おいおい木偶の坊?ここがどこだかわかってんの?死にたくないなら今すぐその腕に刺青を入れて俺たちの傘下に加────」
刹那、ペラペラと口を開いていた男が強い衝撃と共に地面に倒れ伏した。
一瞬何が起きたのか周りの人物達は理解できなかったが、その次に吐いたプラトと呼ばれていた大柄な男の言葉によって理解する羽目になる。
「話のなげえ男は嫌いだ」
地面に倒れている男は決してか弱い男ではない。
見た目も喧嘩慣れしていそうな柄の悪い男であるし、筋肉もそこそこに付いている風に見える。
そんな男がたったの一撃で白目を剥いて地面に倒れ伏している。
そんな事が可能なのか?と周りの『リバース』のメンバーは若干恐れ慄き足を一歩引いた。
しかしそんな中で工業用のレンチを持った若者が勢いよくそのレンチを振りかぶり、プラト目掛けて突撃して行った。
レンチはプラトの頭に直撃し、ガコンという頭の骨が折れていても疑問を抱かない歪な音が鳴り響いた。
しかしプラトは大して大袈裟な反応も示さずに視線を横に移動させると、同時に右手だけで相手の頭を鷲掴みにして持ち上げ始めた。
「ふぁ!?はぁ!?」
男は何が起きているのか理解ができていないのか、言葉になっていない言葉を吐きながら必死にレンチを振るがプラトの腕のリーチが思いのほか長く、体格に恵まれていない男のレンチはプラトに届くことは無かった。
「痛えじゃねえか」
次の瞬間には男は強い衝撃と共に地面に顔を埋められており、その地面にはヒビが入っていた。
周りの『リバース』のメンバーは一連の流れを見た後に再度そんな事が可能なのか?と思いさらに一歩足を引いた。
「うん、歩きやすくなったね」
人が若干疎らになった所でプラトともう一人の男────ハルネが堂々と歩き出した。
その後ろを追うように周りに強い衝撃を与えたプラトも歩き始めた為、思わず『リバース』のメンバーは道を開けてしまった。
「随分と乱暴なお客さんだね?」
そんな二人に気付いたのか、工場の一番奥から男の声が響いた。
男は月明かりに照らされた緑色の髪が特徴的な人物であり、歳は20代前半と思われる好青年に見えた。
そんな男────ライムが二人に向けて不気味な笑みを浮かべながら二人を歓迎する言葉を口にする。
「ようこそ『リバース』へ。何のよう?」
「君がライム・ノルウェーツか。会いたかったよ。不死者としてね」




