40話 歯車が再び動き出す(6)
修哉は蹴りを抑えた腕の痛みを我慢しながらもその腕を構え、片足を少し下げて戦闘の構えを取った。
ウィルは修哉とは真逆にラフな格好でフリースタイルを思わせるほどに軽々しく修哉を見下すように見つめていた。
「諦めろ日本人。身体のデキが違うんだよ。頭も筋肉の構造も反射神経も何もかもな」
ウィルは煽りとばかりに自身の頭を右手の人差し指で指し示しながら言葉を吐いた。
実際に修哉は格闘技の違いを身をもって理解しつつあった。
同じ程度の体型ではあるがほんの数段ウィルの方が速く、俊敏に感じる。
それは修哉以外に蹴りを受けた杏梨やその他のメンバーも感じ取っていた。
故に反論のしようが無かった。
それを良い事にウィルは意気揚々とさらに言葉を繋げていく。
「期待外れだな。金だけ頂いてここで殺しておくか?」
「ここはテメェの出身地みたく荒くれの街じゃねえんだぞ。警察に捕まりてえのか」
「はっ!警察なんて居て居ないようなもんだろ?『リバース』のメンバーが暴力事件を起こしても全然捕まらねえじゃん?この国の警察は銃を使わないからあっさり逃げられるんだろ?」
ウィルの言葉に修哉は小さくため息を吐いた後に集中力を高めながら反論の言葉を返した。
「銃なんてなくても本当はお前らを成敗できるんだよ。でも世間の目が最近はうるせえからな。お前ら犯罪者は舐められてんだろ」
「舐めた真似して負けるんなら世話ないな」
「そうだな。だからここからは舐めた真似なんかしないで本気だ」
「あ?」
どこからどう見ても修哉は警察官といった出立ちではなかった。
どちらかと言えば好青年を気取ったチンピラだし正義感に溢れている人間とはいえ戦闘のスイッチが入ったその目は獣以外の何者でも無かった。
そんな修哉からまるで自分が警察官の代わりとでも言うような言葉が吐かれた事にウィルは疑問の言葉を思わず呈してしまった。
「俺の弟が頼れる警察官でよ。お前らには手を焼いてんだ。だからこれから喰らわす一発はその発散だ」
「は?お前みたいな弱いやつが俺に一発喰らわす?何馬鹿な事────」
刹那。
ウィルの言葉を言い終わる前に修哉は左足を大きく踏み込み、右手は大きく振りかぶり殴る態勢に移行していた。
ウィルはすぐにその拳を避ける為に体を後ろ側に避けようとするが────ウィルの背後に四つの腕が絡まった。
「あ!?」
思わずウィルが後ろを向くとそこには津田と池尻の姿があり、ウィルの右腕と左腕を抑え込んでおりウィルがどこにも逃げられないように固定していた。
────マズッ!
すぐさまウィルは背後の二人に取られていた気を目の前の拳に戻したが時すでに遅しであった。
額をぶつけてダメージを最小に抑えようともしたが目を見開いた瞬間には修哉の拳は目の前まで迫っておりウィルに避ける術はもう残っていなかった。
ドンッ。という音と共にウィルの顔面、さらに詳しくいうならば鼻の骨を砕く勢いで修哉の渾身の拳が炸裂した。
衝撃のあまりウィルの身体が思いっきり後ろによろけるが後ろの二人がなんとかその勢いを殺していた。
「いいか?俺個人だとお前には勝てねえかもなぁ?」
修哉は殴り終えた右手の痛みを分散させるようにブンブンと空中に振りながら言葉を続ける。
「でもよ?ここには俺の仲間がいるんだぜ。知ってるか?」
「複数人の方が強えんだよ一匹狼」
× ×




