34話 騒乱後(2)
どことなく慌しく床を蹴る音を布団の毛布越しに感じ取り少年────東堂 三春は目を覚ました。
目を覚ますと同時に後頭部にバットで殴られた様な激しい痛みが響き渡り、その痛みによって顔を顰めると、今度は堺家を襲撃した男によって殴られた顔の傷がズキズキと痛んだ。
その傷を確かめる様に手を顔に置くと皮膚の感触はなく、代わりにガーゼテープのザラザラとした触り心地が指に伝わり、三春は誰かに治療をしてもらったのだと気付いた。
三春は痛みに悶えながらもあの時を思い出しながら部屋を出て、堺家の中を歩き始める。
────凛さんはどうなったんだ……?
堺 凛。
先程まで三春と共に行動していた女子高生であり、現在は『リバース』との抗争に巻き込まれ、色々と大変な思いをしている少女。
三春は先程までそんな凛と行動を共にしていたのだが堺家を襲撃した『リバース』のメンバーの男と相対し、本気の殴りで一度は男をノックダウンさせたのだが────
────あの後急に意識を失ったんだけど、何が起きたんだ……
三春は鍵を漁っていた事までは覚えているのだが、その後の記憶が全くと言って良い程無かった。
それもその筈であり、三春はノックダウンさせた筈の男に不意打ちという形で後ろからペンチで殴られたのである。
あまりの衝撃と打ちどころの悪さにたちまち三春は気を失い、そのまま地面に倒れ伏してしまっていたのだった。
三春は凛がどうなったのかを確認する為に家を歩き回り基仁を探した。
本当は家を走り回っている男達に話せば良いのだろうが、何処か慌ただしい事と単純に強面で話しかけにくいという理由で三春は話し掛ける事が出来なかった。
────にしてもデカい家だなあ……
三春は痛みに耐えながら壁を這いずり、一先ず最初に案内された客間に歩みを進めていた。
だだっ広い廊下は今の三春の身体には億劫そのものであり、三春はため息を吐きながらゆっくりと足を動かしていた。
────にしても、こんな家を買えちゃう基仁さんってお金持ちなんだなぁ……
寺と言われても特に違和感がない程にデカい屋敷を持っている基仁は何者なのか。
忠誠を誓っている男達も数多く存在しているし著名人なのではないか?
そんな事を歩いている途中に三春は思っていたが、気付けば目の前には見覚えのある襖が視界に映った。
三春は「失礼します」と言いながらゆっくりと扉を開けるとそこには三人の男女が座っていた。
一人は基仁なのだが残り二人は三春には見覚えのない人物であった。
一人は黒を基調とした服を着ている堅いの良い男。
もう一人の人物もまた、黒を基調とし、所々に青い線やリボンが見えるゴスロリ調の服を着た少女だった。
────……あれ?
そんな二人を見て三春の頭に久志の言葉がフォードバックした。
『特徴として常に小さい女の子を連れてるんだ。その子に手を出そうもんなら問答無用で殺される』
────もしかして……?
目の前の二人が久志の言っていた街最強の何でも屋なのだろうか?
元々三春は二人を遅かれ早かれ『リバース』抗争のキーマンとして呼ぶ予定だったので話は良い方向には進んでいるのだが、そんな二人を見て三春は喜ぶ事はしなかった。
寧ろ出来なかったと言って良いかもしれない。
修哉とはまた違う、篶成が放つ独特な威圧感に思わず三春は言葉を飲み込んでしまっていたのであった。
「なんだよ?ジロジロ見てねえで座れよ」
扉の前で棒の様になっていた三春を見るなり篶成は客間に座る事を腕で促した。
三春は恐る恐る基仁の横であり篶成の真正面に位置する場所に座布団が敷いてある部分に向かい、その腰を下ろした。
三春が座った後に数秒間の沈黙が部屋に訪れたが、その気まずい雰囲気を破る様に明るい声で一際異彩を放つ少女────美鈴が声を上げた。
「あの……三春さん?基仁さんから聞いたんですけど、どうやって私達を利用する気なんですか??」
「え……?」
× ×




