33話 騒乱後(1)
「一歩遅かったみてえだな」
「みたいだね」
ハバネ達が堺家を後にして約三分後、篶成と美鈴が修哉からの情報を当てに堺家に到着した。
篶成と美鈴は屋敷を囲む塀の上に登り、状況を伺っていたがどうにも一悶着が終わった後の様だった。
堺家の外には怪我を負ったからか、これから病院に運ばれるであろう男達が、呻き声を上げながら車に乗せられている姿が見えた。
他にも屋敷の玄関前の扉は派手に壊されており、扉付近にも大柄な男が寝転がっていた。
篶成はそんな状況を見つめる中、ある一人の人物を見るなり目を細めながら塀の上から屋敷の敷地内に降り、その人物に向かって歩き始めた。
美鈴は篶成がすぐに誰に向かって歩き始めたのかを察すると、特に何も言わずに自分も塀を降りてその人物の場所に向かい始める。
「よぉ〜クソジジイ。まだご存命か」
「なんだ、篶成か」
篶成に話しかけられた人物────基仁は篶成に話しかけられるなり首を篶成の方に向けた。
同時に篶成の横にいる美鈴の姿も目に映ったのか基仁は先程の戦いの時からは人格が入れ替わったのではと思わせる程の優しい笑みを浮かべ、腰を下ろしながら「美鈴ちゃんも久しいな」と挨拶をした。
「お久しぶりです。基仁さん」
美鈴もまた、篶成とは打って変わって常識的な挨拶を返した。
「篶成、少し美鈴ちゃんを見習った方がいいんじゃないのか?」
「うるせえよ」
基仁が篶成を揶揄う様な言葉をニヤニヤとしながら投げると篶成はダル絡みを適当にあしらって本題に入った。
「ここに『リバース』って組織のやつが来なかったか?」
「来たな。部屋の何処かに斬り落とした右手が転がっている。青い鳥の刺青がしっかり入っていたよ」
基仁の口からさりげなく放たれた現代離れした発言に篶成は眉を顰めながら愚痴を溢した。
「まだまだ現役って訳かよ」
「若人にはまだまだ負けられんからな」
「薄気味悪いジジイだぜ全く」
最後にもう一度本人に愚痴を溢すと篶成は踵を返して屋敷を後にしようとした。
「行くぞ美鈴。目的の奴らがいねえならこんなボロ屋に居る意味がねえよ」
美鈴は篶成の言葉を聞くなり軽く頭を下げて「失礼します」と言った後に篶成の方向に走り出そうとしたが────
「まあ少し待て。お前に依頼を頼みたくてな」
基仁の言葉に篶成が足をピタッと止めた。
依頼────
この言葉に篶成は素早く反応すると同時に基仁を訝しげに見つめた。
かつて篶成は基仁に振り回された経歴があった。
まだ篶成がこの街に来た当初、荒くれ者であった篶成を基仁は面白がり、多額の金を使用して依頼という形で篶成をこの街の裏の部分に引き込んだ事があった。
それ以来篶成は堺家の一部のメンバーに苦手意識を持っているのだが────
そんな苦手意識を持たれている基仁がその事件以来初めて依頼を頼んできた。
篶成は思わず過去の事がフラッシュバックし基仁を睨んだのであった。
「あぁ?お前ぇの依頼は二度と受けねえってあの事件の時言ったよなぁ!?」
「敵の本拠地に置き去りにした事は今でも悪いと思っているぞ」
「悪いと思ってんならその皺だらけの顔を少しでも申し訳なさそうな顔に変えろや……」
「まあ、そう怒るな。後、今回に限っては俺の依頼じゃない」
「あ?」
基仁の言葉に篶成が疑問を呈する様な表情と共に言葉を投げると、基仁は親指を自身の背中側に向けて家に入る様に促した。
「中で依頼人が待っている」
× ×




