23話 歯車が狂い出す(3)
────とあるビルにて。
「三春のやつ散々連絡してきたくせにいざこっちから電話かけたら出ないとはどういう了見だ?」
街の情報がリアルタイムで錯綜する巨大なモニターの前でそんなモニターに比べると実に小さい電子機器の画面に向かって久志は愚痴を溢していた。
数十分前、久志は三春と駅で逸れてしまったのだが、その際に久志は三春が逸れた後にとある女性に連れ回されている事を知り、久志は大きくなって帰って来いという意味のわからない理由で助けを求める三春のピンスタの通知をオフにしていた。
そして今しがたその時に手を差し伸べなかった自分が原因で三春が危険な事に巻き込まれるかもしれない事を知った久志は、助言程度はしてやろうと思い三春のピンスタのDM画面を開いていた。
画面には三春の助けを求めるメッセージが連投されており、違う連絡アプリのIINEでは数回の電話着信履歴が残っており、見るに耐えない事になっていた。
そして今現在。ようやく返信を始めた久志だったが、三春は一切の反応を示さなかった。
久志は三春の性格上携帯は一分に一回は見るという失礼極まりない偏見を持っていたのだが、勘が外れて久志は少し不満な顔を抱いていた。
しかし三春が今連絡に全く反応しないのは堺家が使用している車の中に携帯を置き忘れたからであったのだが、久志が情報屋であれどそこまで詳しいことは知る事は出来なかった。
そしてさらに言うならば、久志の偏見はあながち間違いではなく三春は事あるごとに携帯を触っている為、連絡が来れば怒涛の速さで返信をするタイプであった。
「ん〜何してんのかねえ?これじゃあ助け舟を出せないな」
久志は頭を掻きながらモニターの画面に目を移動させた。
同時に明らかに犯罪紛いとしか思えないような電話帳一覧が載っている独自の情報まとめツールを展開させる。
画面には名前と相手の住所、そして電話番号が書かれており、その数は軽く数万は超えていた。
順番は五十音順に並べられており、あまりに膨大な数が登録されてるのでワンクリックで指定した行に飛べるようになっていた。
久志はサ行を選択し、後はひたすらにマウスのローラーを下にスライドさせていく。
そして『堺』という名前でそのスライドを止めた。
堺という名前を持つ人間は複数人いるのだが久志はその中から迷う事なく上から四つめの電話番号を選択した。
────確かあの当主の名前は堺 基仁だったな。
久志は常人離れした記憶力をここぞとばかりに発揮させて当主の名前を思い出した。
本来何万人といる市民の中でフルネームを覚える事などほぼないのだが、堺家の当主は数年前に沙羅 篶成関連でとある事件を起こしていた為、久志の頭にはその名前がしっかりと刻み込まれていた。
「めんどくさいけど家に電話するか」
そうして久志は気怠げな声を引きつらせて電話番号を携帯に入力して電話をかける。
ワンコール、ツーコール、スリーコール。
そして電話に出た相手は────
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