21話 歯車が狂い出す(1)
────三春が堺家に入った数十分前。
「おうおう、綺麗な程に『リバース』の奴らだけだな」
すすきのに点在する高層ビルの屋上に、二人の男と女がいた。
男は黒いTシャツに黒いズボンと夜に溶け込むような服装をした高身長で割とガタイがいい男であった。
それに比べて女は少女と呼んで良いほどに幼く、男との身長差は歴然であった。
全身を黒い服で纏っている男とは少し違い黒いゴシック調のドレスを着ているがそのドレスの合間合間には青色の線が入っており清楚感を醸し出させていた。
男の名は街最強の男の一人────沙羅 篶成。
少女の名は沙羅 美鈴。最強の男の妹。
そんな二人は何故かビルの上から街を闊歩する『リバース』の面々を見ていた。
ビルの上には篶成の足の跳躍力のみで登ったのだが、それを言っても殆どの人は信じはしないだろう。
しかし一部の人間はそれを疑わない。
例えば妹がそうである。
美鈴はいつも篶成の人の領分を超えた身体能力を目の当たりにしている為、今更疑うなんて事は絶対にしない。
現に今も篶成に抱き抱えられてビルの上に足を下ろしたのだから。
そんな事を今更疑問にして聞く事などせず、二人は会話を続ける。
「青い鳥の刺青がシンボルマークって聞いてたけどほぼ全員が付けてるとなると相当の人数がいるね?」
「蹴散らす事は別にできるが時間がかかるな。修哉が連絡してきたのにも頷ける」
篶成は言葉を言い終えると同時に目を凝らし青い鳥が蔓延る街を見渡した。
「取り敢えず修哉を見つけて今後の方針を決めねえと。下手に暴れてもこの数は面倒なことになるだけだ」
「修哉さんの依頼はとにかく暴れてくれだったけど?」
「合流してからで問題ねえだろ。それに俺の勘が何となく慎重に動けって言ってる気がしてな」
篶成はいつもなら横暴でとにかく力であらゆる事象を捩じ伏せるタイプなのだが今日は珍しく状況を冷静に見ている。
そんな篶成を美鈴は驚きつつも笑いながら茶化した。
「らしくないね」
「うるせえ」
篶成は再び美鈴を抱えてビルを飛び降りた。
風の抵抗に服と髪の毛が舞い上がるが、恐怖心などは微塵も存在せず美鈴は涼しい顔をしている。
篶成は先程の会話の途中で修哉を見つけたのか途中でビルを蹴り、進行方向に向けて勢いをつけて夜の街をまるで夜鴉のように飛んだ。
地面に着地したと思えばすぐさまありえない跳躍力で50階はあると思わしきビルの半分程の高さまで飛び直し、再び勢いをつけるために周りのビルを蹴ってスピードを上げていく。
そんな光景はもちろん目立ち、とある『リバース』のメンバーに見られていた。
× ×
「んだあれ?」
『リバース』の上に位置する親衛隊の一人────ウィルはその光景を不幸にも見てしまった。
その光景は彼を今後、不幸のどん底に落としてしまう引き金になることは誰も知る由は無い。
「面白そうだな。ちょっとつけてみるか」
ほんの少しの興味が湧いた。
ライムや他の親衛隊と同じ魔術使いなのかと思ったのだ。
そうしてこの行動が彼の運命を大きく変える。
勿論、悪い方向へ────
× ×




