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The Rampage 2021 - The Beginning of the Rampage!!!  作者: 冬野 立冬
一章 beginning
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15話 何でも屋(1)


 札幌に最強と呼ばれる人間は二人いる。


 一人は放浪者。何をしているのか全く情報が掴めず、ふとした時に暇つぶしでもするかの様に厄介事を運んでくる。

 多額の金を払えば基本的になんでも仕事を熟してくれるという噂もあるが、真偽は定かではない。

 ある上級国民によると彼は金さえあれば殺しすらも(いと)わないと証言されているが、それも結局は不明である。


 もう一人は街で何でも屋を営み生計を立てている者。

 もう一人の最強とは相反してほぼ街に住む人間は顔を覚えている。


 何でも屋絡みで襲われた者の中には一方的な恨みを持っている人間もいるが、彼らは決して復讐という理由で()()に手を出す事は無かった。

 何故なら彼らに挑んだ所で十中八九返り討ちにされて終わりだからである。


 沙羅(さら) 篶成(すずなり)

 彼の名前が出るだけで一度殴られた者はその身を硬らせる。

 圧倒的な力を前にしては何も出来ないのだと本能に刻み込まれるのだ。

 彼は間違いなく最強だと街の誰もが口を揃えて言う。

 しかし本人はそんな噂に大して興味は無いのだ。



 ────修哉からの電話を切った後



「久々に修哉に会えるし、久々に大暴れ出来そうな案件が回ってきたなあ!おい!」


 篶成は大手ジャンクフード店でハンバーガーを貪りながら高らかと自身の気持ちを語った。

 それを見て同じ席に座っている通話で美鈴と呼ばれていた少女がニコニコと笑っていた。


「修哉さん、帰ってきてたんですね。バンドが売れ始めてから札幌にいることが少なくなってきていたので嬉しいですね!」


「そうだな〜俺は昔あいつにバンドの手伝いをするって言われた時マジでやめとけって言ったのによ。一度決めたらアイツは揺るがねえからな。まあ、楽しんでやってんなら本人にそれ以上口出しはしねえけど?アイツがいねえとこの街が退屈で仕方ねえ」


「浦河さんは?あの人と殴り合ってる時のお兄ちゃん活き活きしてて見てて面白いのになあ」


 美鈴の口から放たれた言葉を聞くと、篶成はあからさまに気分を落として言葉を放った。


「美鈴……アイツの名前を出すんじゃねえって。アイツの顔を思い出すだけで俺は腹が煮え繰り返る感じになるんだよ……」


 篶成の忠告も美鈴はニコニコと笑顔を崩さず、まるで人形のように聞いていた。

 実際美鈴は黒を中心とした合間合間に青い線が入り、清楚感や大人な子という印象を与えるドレスを纏っており、周りの客達はそのあまりに整った容姿と長いが綺麗に整えられた長髪、そして華麗な服装に人形なのか?と素で疑う者もいた。

 しかし少女に目をやるとその前に座っている殺気を垂れ流している恐怖を体現したかの様な男の凄まじい眼光に襲われるので、少女が話しかけられる事はまず無かった。

 話しかけにいった自称アイドルプロデューサーとやらもいるにはいたのだが男側に殴られる始末であった。

 そんな二人は淡々と会話を続けていく。


「浦河さんが乱入してくれた方が私的には面白いんだけどな〜」


「やめろやめろ。アイツが関わるとロクな事にならねえ。アイツは人の邪魔をする事を生き甲斐にしてる正真正銘のろくでなしだからな」


「この街で名を馳せてるお兄ちゃんも大分ろくでなしだから似た者同士だね!」


 篶成の浦河という人物に対しての罵倒とは相反して美鈴は相変わらずニコニコとした顔を崩さずに、篶成を弄るように言葉で遊んでいる。

 いつもの篶成なら浦河という人物の名前が出た時点でキレ散らかし名前を出した人物の顔面を性別関係なく華麗に殴り飛ばす所なのだが、美鈴相手となると篶成は反抗の素振りも見せずに美鈴の言葉をなんとか流している雰囲気であった。

 そうして再び篶成は嫌々しい雰囲気を纏いながら美鈴の言葉を流した。


「俺のろくでなしはまだ救いようがあるだろ?それに俺には()()があるからろくでなしを演じてるわけだ」


「『演じてる』ね〜?」


 美鈴が目を細め、篶成の言い訳を再び弄る様に言葉を返すが、篶成は椅子に腰を深く預け、片手を空中に上げてぶらぶらと遊ばせながらそんな美鈴の言葉を一旦頭の隅に覆いやって言葉を続けた。


「俺がこの街に来た理由は一つ。美鈴もそのつもりで俺について来てるわけだよな?」


「まあ……否定はしないよ?」


 美鈴は右手の人差し指を頬に当て、何かを考える素振りを見せながら言葉を返す。

 そんな美鈴に篶成はさらに言葉を付け足していく。


「話を戻してだな……俺はさっきも言った通りまだ救いようのあるろくでなしなんだ。でもあのクソ野郎は救いようの無いろくでなしって訳だ。適当に人にちょっかいをかけては面倒事を押し付ける。そしてそれを楽しむ。救いようが無さすぎてムカついてくる」


 篶成は怒りを押し殺す様に余ったハンバーガーを口に詰め込み一口でハンバーガーを飲み干した。


「まあ、会ったらブチのめす。けど今日は親友との再会を記念する日だ。アイツに会ってる暇はねえ」


「えぇ〜私は面白いと思うのにな〜」


 美鈴は脚をぶらぶらと遊ばせながら言葉を呟くが、篶成がその言葉を聞いた瞬間立ち上がり会計へと向かい始めた。


「あんな奴との殺し合いが面白い訳あるか」


「喧嘩するほどなんとやらだよ?」


 美鈴は篶成の後を追う様に席から立ち上がり、長髪を棚引かせながら歩みを進めた。

 会計を終えた後、美鈴は篶成の手を握り言葉を紡ぐ。


「少し雑談しすぎたね。急がなきゃ」


 そんな美鈴の手を篶成は握り返すと同時に少し腰を下ろし空いた手で美鈴の腰に手を回し、いわゆるお姫様抱っこをした。

 道行く人達は何をしているのかと不思議そうな目で二人を見つめていたが、その次の瞬間にさらに不可解な現象────というより物理的にあり得るのか?という現象を目の当たりにし、その不思議そうな目線は驚きへと変貌する。


「そうだな。振り落とされんなよ」 


「女の子に言うセリフ?そこは『俺が支えてやるから風景でも楽しんだけど』とかじゃない?」


「黙って捕まってろ」


 そうして美鈴を抱えた篶成は力強く地面を蹴り、そして────跳躍力のみで空を飛んだ。


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